今日も皆さんと一緒に発達障害等に関する学びや情報交換の場所となることを願って投稿させて頂きます。
今日のトピックスは「適職」についてです。
「発達障害だけど適職ってあるのかな?」これから就職する人も、転職する人も思うことですよね。
発達障害がある人は、仕事をする上で困難感を抱くこともあります。ですが、自分にとっての適職に就くことができれば困難感を抱くことが少なくなるでしょう。
この記事を読まなければ、就職に対して心配なままかもしれませんが、読むことで適職をみつけることができるかもしれませんので、よかったら参考にしてみてくださいね。
目次
仕事をする上での発達障害の特徴
発達障害には様々な特徴がありますね。この記事では、そんな特徴が仕事にどう関わってくるか紹介させていただきます。
また、最初にお断りさせていただきますが、ここでの特徴はあくまでもそれぞれの発達障害における特徴となりますので、当てはまらない方もいらっしゃると思います。
自分を知るという意味でも、当てはまる特徴も、当てはまらない別の特徴も紙に書き出すなどして、自分はどんなことが向いているかなどを考えてみるのもいいですね。
自閉症スペクトラム(ASD)
発達障害のなかでも、特に社会生活に困難感を抱きやすい自閉症スペクトラムですが、もちろん得意なこともあります。
苦手なこと
自閉症スペクトラムの方は、他人との関係を築いたり、コミュニケーションを図ること、他人の気持ちを考えることが苦手です。他にも感覚過敏や、二次障害(睡眠障害・適応障害・摂食障害など)があったりします。その例をあげますと、
- 空気を読むことが苦手
- 周囲の状況が分からず、どう対応したらいいかがわからない
- 冗談を冗談と受け取れない
- あいまいな表現がわからない
- 相手の感情がわからない
- 人と目を合わせるのが苦手
- 上下関係や相手をたてるといったことが苦手
- 質問の意図がわからない
- 相手の言葉をオウム返しする
- 自分ルールを優先してしまう
- 決まった順序にこだわる
- 予定外のことでパニックになりやすい
- 報告・相談・連絡が苦手
- 特定の音が苦手
などがあげられます。人との関わりが大事になってくる仕事は厳しそうですね。
二次障害に関しては、仕事に支障をきたすものは心理療法や薬物療法などを行い、軽減できるようにしていく必要があります。その場合は、専門機関に相談してみましょう。
得意なこと
自閉症スペクトラムの人は、集中力が高く、几帳面な方が多いです。また、視覚情報に強いなどの得意なことがあります。例をあげますと、
- 関心があることに対して高い集中力を発揮できる
- 記憶力に長けている分野がある
- 文字情報の処理が得意
- 規則を守ることができる
- 論理的に物事を考えることができる
- 単純作業の繰り返しが得意
- 整理整頓ができる
などがあげられます。文字に強い方は校閲などで活躍できたりと得意分野を活かすことができそうですね。
自閉症スペクトラムに関してこちらの記事を参考にしてみてくださいね↓
注意欠陥多動性障害(ADHD)
ケアレスミスが多いなどの作業をする上で困難感を抱きやすいADHDの方ですが、もちろん得意なことはあります。
苦手なこと
ADHDの方は、不注意・多動性・衝動性という特徴を持っています。その例をあげますと、
- ケアレスミスが多い
- 気が散りやすい
- 集中力が続かない
- じっとしていられない
- 忘れ物をよくする
- 物をよくなくす
- 優先順位を考えて計画を立てるのが苦手(その通りにできない)
- スケジュール管理が苦手
- 臨機応変に対応できない
- マルチタスクが苦手(同時並行に物事をすすめられない)
- 思ったことを口にしてしまう
- 人の話を聞かずに行動してしまうことがある(話を聞いていない)
などがあげられます。ミスが多かったりすると、信用を失いそうですね。
得意なこと
衝動性は裏を返せば、行動力があったり、判断が早いという強みにもなります。また、ADHDの方は発想力があります。例をあげますと、
- すぐに行動できる(行動力がある)
- ものごとの判断が早い(決断力がある)
- 関心のあることに没頭できる
- 発想力・想像力がある(アイディアをだせる)
- 好奇心旺盛(チャレンジ精神がある)
- 感覚に優れている
- 愛嬌がある
などがあげられます。他の人が尻込みしてしまうような場面でもチャレンジできるなどは会社の発展の一助になりそうですね。
ADHDに関してはこちらの記事を参考にしてみてくださいね↓
特異的発達障害(学習障害)
読み・書き・計算など特定の分野が苦手な学習障害ですが、現代は書かなくてもパソコンやタブレット操作で業務が行うことができる仕事も多いです。
学習障害は、能力の偏りの差があるため、得意・不得意も人によって全く違ってきてしまいます。
苦手なこと
一概にこれが得意・不得意をあげにくいですが、例をあげますと、
- 読み書き障害では、文字通り読んだり、書いたりすることが苦手(正確性に欠ける)
- 読み書き障害では、文章を読むのに時間がかかる
- 読み書き障害では、文字を書くのに時間がかかる
- 算数障害では、計算が苦手
- 算数障害では、算数の問題が解けない
などがあげられます。仕事のなかには文章を読んだり、書いたりする場面や、金額を計算するなどの場面があります。そんな場面では苦労しそうですね。
得意なこと
学習障害は、ある特定の分野が苦手なのが特徴となりますが、裏を返せば、それ以外ならできることも多いということにもなります。(他の発達障害や二次障害がなければ)
発達障害でない人も得意・不得意があるように、学習障害の人にも自分の得意・不得意があります。
ですので、自分の苦手分野をしなくて済む仕事や、それをカバーできるツールを使って仕事をするなど工夫次第で、自分の向いている仕事をみつけられそうですね。
学習障害に関してはこちらの記事を参考にしてみてくださいね↓
発達障害の方が向いている仕事・向いていない仕事
先ほど、それぞれの発達障害の仕事をするうえでの特徴を紹介させていただきましたが、それを踏まえて向いている仕事・向いていない仕事の例を紹介させていただきますね。
自閉症スペクトラム(ASD)の方に向いている仕事
自閉症スペクトラムの方は、一人でもくもくと行える仕事や、ルールやマニュアルがあるような仕事に向いています。他には、文字情報に強いなら校閲のような仕事もいいかもしれません。例をあげますと、
- ライター
- 翻訳
- イラストレーター
- 清掃員
- 工場でのライン作業
- プログラマー
- ウェブデザイナー
- ゲームデザイナー
- アニメーター
- 設備整備
- エンジニア
- カメラマン
- ジャーナリスト
- 楽器調律師
- 研究者
- 建築士
- 新聞配達員
などがあげられます。このように、ひととの関わりが少ない仕事、決められたことをもくもくと行う仕事などは意外と多いですね。
自閉症スペクトラム(ASD)の方に向いていない仕事
自閉症スペクトラムの方は人との関わりが苦手である場合が多いです。ですので、それが必須になってくる仕事は厳しいかもしれません。例をあげますと、
- 営業
- 窓口業務(銀行など)
- 接客業
- コールセンター
- 自営業
- レジ打ち
などがあげられます。人との関わりが必要なうえ柔軟な対応が必要な営業や接客業などは難しいかもしれませんね。
他に、自営業は自分のリズムで行えるかもと思ってしまうかもしれませんが、人とのやりとりが必要となってきますし、自分で解決しなければならない場合が多いです。
レジ打ちも業務は一度覚えてしまえばできそうですが、どうしてもお客様の対応をする必要があります。ですが、すぐに他の人に対応を替われるならできるかもしれません。
ここであげた向いていない仕事も、職場でフォローしてもらえるならできるかもしれませんが、自分の強みを活かせる仕事の方がいいかもしれませんね。
注意欠陥多動性障害(ADHD)の方に向いている仕事
ADHDは、発想力が豊かで、チャレンジ精神旺盛などの強みがあります。向いている仕事は、
- カメラマン
- ジャーナリスト
- 編集者
- ライター
- クリエイター
- アニメーター
- イラストレーター
- インテリアデザイナー
- プログラマー
- エンジニア
- 作家
- 俳優・女優
- スタイリスト
- 建築家
- 調理師
- 整備士
- 警察官(公安関係)
- スポーツ選手
- インストラクター
- 営業
- 販売
- 教員
などがあげられます。自分の興味関心がある分野の発信ができるメディア関係や、ものづくり、クリエイティブさを活かせる仕事、行動力があるため、営業なども向いている方もいらっしゃるでしょう。
注意欠陥多動性障害(ADHD)の方に向いていない仕事
ADHDは、ケアレスミスが多い、マルチタスクが苦手などといった特性があります。向いていない仕事は
- トラックなどの運転手
- 医師・看護師
- 保育士
- 銀行員
- 旅行関係
- 接客業
- 事務仕事
- 経理
- 総務
- 人事
- 秘書
- 工場でのライン作業
- 製品の検品作業
- 校閲
- コールセンター
などがあげられます。ADHDの方は交通事故を起こしやすいという研究結果もあります。トラックやバスの運転手などの仕事は向いていない仕事です。
ADHDの方は、マルチタスクが苦手です。マルチタスクが求められる保育士、銀行員、旅行関係、経理などといった仕事は難しいかもしれません。
他には医師・看護師や検品、校閲といったミスが許されない仕事も重大なミスを起こして人の命に関わるなどといったことになってしまうかもしれません。
特異的発達障害(学習障害)の方が向いている仕事
学習障害の方は、得意分野ややりたい仕事にチャレンジしてみてもいいでしょう。苦手分野に関しても、その分野を周囲のフォローで補えたり、他の方法でカバーできるような仕事はできそうですね。例をあげますと、
- 注文をタブレット操作で受けることができる飲食店
- バーコードで読み込むだけのレジ
- コピー&ペーストで行えるパソコン作業
などといったことがあげられます。ありがたいことに今は技術が進歩しています。手書きで行うといった作業もパソコンやタブレットなどの機器が代替わりしてくれています。
「やってみたい仕事だけど、○○が苦手でできない…」と悲観的にならず、自分の苦手を補えるツールや環境であるか確認してからでもいいかもしれません。
特異的発達障害(学習障害)の方が向いていない仕事
学習障害の方は、人によって不得意分野の偏りがあるため、「向いていない仕事はこれです」ときっぱりとお伝えできません。ですが、苦手分野を行う仕事は難しいでしょう。
例をあげますと、
- 読み書き障害では事務仕事
- 算数障害では経理
などがあげられます。ですが、先ほどお伝えしたように周囲のフォローや補えるツールなどを活用してできることもあります。
これは、他の発達障害でもそうですが、サポートがしっかりしていればできる仕事もあります。
車で例えてみますが、以前は、障害物を見落として追突事故を起こしてしまうことがありました。
ですが、今は衝突回避システムによって回避できる場面も多くあります(過信はダメですが)
注意力が散漫でできなかった仕事も、技術の力でできるようになってきています。
いろいろな可能性を探ってみましょう!
実際に発達障害を抱えながら働いている人の声
適職の例を紹介させていただきましたが、実際のところはどうなの?と思う方もいらっしゃると思います。
参考までに、ツイッターでの声をいくつかさせていただきます。
記憶力やマルチタスクを求められる接客業はダメでも、工場はルーティンワーク介護は、確かにコミュニケーションは必要ですが、仕事内容はわりとルーティンなので、人によっては比較的やりやすい仕事かもしれませんね。
障害の有無にかかわらず、得意を仕事にできるのがいいですね
こちらは、発達障害に向いている仕事と考えるよりも続けられる仕事が結果的に向いていたということでしょう。向いている仕事の例を紹介してみましたが、
ASDだから○○が向いている、ADHDだから△△が向いているかもと発達障害だからというよりもその人に合った仕事をみつけることが大切ですね。
発達障害の方の就職を支援する制度
平成17年に施行された「発達障害者支援法」によって、発達障害の方が働きやすくなるような制度ができました。そんな制度を紹介させていただきます。
障害者雇用率制度
企業は従業員のうち2.2~2.5%(団体による)は障害者を雇わなければならないという制度です。これを満たさない企業は国にお金を支払わないといけません。逆に2.2~2.5%以上に障害者を雇っている企業には、国からお金をもらえます。
どんな制度なのか
障害がある方が、一人ひとりの能力に応じて障害のない方と同じように働けるように企業が「障害者雇用枠」で雇ってくれます。
どういった人が対象か?
「障害者雇用枠」で働くためには、障害者手帳が必要となります。発達障害者の場合は「精神障害者保険福祉手帳」か「療育手帳」になるでしょう。
手帳に関してはこちらの記事を参考にしてみてくださいね↓
どんなメリットがあるの?
障害があることを前提で雇ってくれるので、障害に配慮した働き方ができます。ですので、仕事を続けやすいです。
実際に、障害者が就職して一年間仕事を続けられているかは、一般雇用枠で平均30.8%、障害者雇用枠で平均70.8%であったようです。
参照文献:障害者雇用の現状等
心配なのは、給料のことだと思いますが、基本的に最低賃金は保障されています。
どんなデメリットがあるの?
障害者手帳がないと、障害者枠で働くことができません。また、一般採用枠に比べて求人が少なく、選べる業種が少ないです。
他には、「最低賃金の特例許可制度」というものがあって、「精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い者」が対象になってしまう恐れがあることです。
「最低賃金なのにさらに低賃金になるの?」と思うかもしれませんが、最低賃金を一律で決めると、労働能力が著しく低い労働者の雇用機会が減ってしまうといったことからこのような制度があるようです。
ただし、減額特例となるには条件もあるため簡単には減額にはなりません。障害があるからといって減額するのは「経済的虐待」といって法律に違反することになります。
話が難しくなってしまいましたが、ようするに、そう簡単に低賃金以下で労働させられることはないですよということです。
もし、低賃金以下で働かされている場合は、雇用主に確認するのはもちろん、発達障害支援センターや労働基準監督署に相談することもできます。
障害者雇用率制度に関してはこちらを参考(厚生労働省ホームページ)にしてみてくださいね。
就労移行支援事業
企業就労を希望する65歳未満の障害者を対象とした事業です。企業に勤めるために必要なスキルや、知識を身につけること、自分に合った企業探し、就職のサポート、就職後の職場で続けられるようにサポートするところまで支援してくれる事業となっています。
どういった人が対象か?
就労移行支援は、障害者手帳は必要なく、「障害福祉サービス受給者証」が必要となります。これは、医師の診断があれば取得できます。
障害福祉サービス受給者証についてはこちら(東京都保険福祉局ホームページ)を参考にしてみてくださいね。
就労移行支援に通う目的
就労移行支援では、作業所に通って作業をするところといったイメージがある方がいらっしゃると思います。
ですが、ただ作業をするだけではなく、就職を成功させるために重要な3つのことを知ることができます。
- 自分の特性を知る→日々の訓練や就労体験を通じて知ることができます。
- 自分の特性に対しての具体的な対処を知る→自分の特性を知り、その対処を自分なりに考えて実行することでみつけていくことができます。
- 必要な配慮を知ることができる→企業に必要な配慮を伝えることができる
この3つを知ることができる=それを正しく企業に伝えることで就職を成功させやすいということになります。
こちらの動画では、就労移行支援に通うことによってなぜ就職が成功するのかを分かりやすく解説しています。是非参考にしてみてくださいね↓
就労移行支援に関してはこちらを参考(厚生労働省ホームページ)にしてみてくださいね。
就労移行支援の事業所を見学したAさんのお話
実際に、事業所を見学したことがあるAさんの体験談を紹介させていただきます。
そこは、就労移行支援と就労継続支援B型の事業所だったようです。
一階と二階があって、一階は、造花を作っていて、二階はお菓子を作っていました。
造花はひたすら棒に葉っぱをつけていくという地味な作業ですが、集中力がいります。早い人は、Aさんの3倍くらいのスピードで貼り付けていたそうです。
お菓子の方は、ブロックごとに分かれて決められた作業を行っていて、分量を計る人や成形する人など様々だったようです。
どの作業も単純なものですが、集中力が必要であったり、マニュアル通りに行うことができるかなど様々なことが求められています。
こういった作業を通して「30分しか作業を続けることができないな」とか、「週5で働くのは厳しいかも」など自分の特性を知っていくことはできそうです。
就労継続支援B型の方は、作業が終わったら解散となりますが、就労移行支援の方は作業後ワークを行っていたそうです。
その時やっていたのは、公文式学習だったようです。どんどんとステップアップしていくスタイルで、自分のレベルに合わせて一般教養を身につけることができそうですね。
他には、アンガーマネジメントなどのソーシャルスキルトレーニングも取り入れているそうです。ソーシャルスキルトレーニングは一人で行うのは困難なので、こういった場でソーシャルスキルを身につけることができれば社会生活を今より上手に過ごせそうですね。
ソーシャルスキルトレーニングについて知りたい方はこちらの記事を参考にしてみてくださいね↓
事業所よって行っていることは様々です。見学もできるので、自分が頑張れそうな事業所を探してみるのもいいかもしれませんね。
まとめ
発達障害の方の適職の例はたくさんありますが、発達障害の症状も人それぞれのため、必ずしもASDだから○○が適職などといったことはありません。あくまでも傾向でしかありません。
大事なのは自分をよく知り、特性に対する対処法などを身につけたうえで、自分に合った仕事をみつけることです。そのために、支援などを上手に活用してみてはいかがでしょうか?