2016年4月に施行された「障害者差別解消法」によって、行政や事業者に合理的配慮の提供が義務化されました。
人は一人一人違う個性を持っています。そのことを世の中の人が理解してお互いを尊重することができればより良い社会になるでしょう。
しかし、障害を持つ人にとって、社会は未だ生きづらい側面を見せます。

そんな現状を打開するため合理的配慮は誕生しました。
障害を持つ人が世の中の人から適切な配慮を受けることができれば、より自分らしく生きることが可能となるでしょう。

合理的配慮とは

では、具体的に合理的配慮とは何なのかを説明したいと思います。
合理的配慮とは、障害の有無によって不平等が生まれないよう、人それぞれに生じる困難や障害を取り除くための個別に行われる調整や変更のことです。

2016年4月施行の「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」によって、行政や事業者には障害のある人に対しての合理的配慮が求められるようになりました。

合理的配慮についてわかりやすいように具体例を挙げます。

読み書きが困難な人への合理的配慮…タブレットや音声読み書きソフトによって読み書きが困難な人が学習できるようにする

移動が困難な人への合理的配慮…スロープやエレベーターを設置することで、四肢が不自由な人が移動困難な場所にアクセスできるようにする

指示理解が困難な人への配慮…複雑な指示を理解するのが苦手な人へ、わかりやすいイラストや図を用いて説明をする

疲労・緊張をしやすい人への合理的配慮…疲労や緊張をしやすい人のために休憩スペースを設けたり業務時間の調整をする

もちろんここに挙げたのは一例なので、一人一人に沿った別のアプローチが必要になる場合もあります。
とはいえ、行政や事業者の人員や資源にも限りがあるため、過度な負担をすることはできません。

このため、障害のある本人と行政や事業者が話し合って、具体的にはどのような配慮が必要なのかを一緒に決めることが大切です。

なぜ合理的配慮が普及したのか

なぜ日本に合理的配慮が普及したのかというと、2006年に国連総会で採択された「障害者の権利に関する条約」が背景に見えます。
この条約では第2条において、「障害に基づく差別」を「合理的配慮の否定」も「障害に基づく差別」であると決定づけています。

ここから言えることは、「障害のある人に必要な配慮ができるのにしないのは差別である」と明確に示されたということです。

「障害者の権利に関する条約」は国際条約なので、これを締結するには「障害に基づく差別」を禁止するための国内法を整備しなければなりません。

日本では、2004年と2011年に「障害者基本法」の改正、2013年に「障害者差別解消法」を制定することで国内法の整備をしました。
加えて2014年に「障害者権利条約」を批准することで「障害者権利条約」の批准国となった本国は障害のある方が差別されずに生きていくための重要な手段として合理的配慮を義務化したのです。