今日も皆さんと一緒に発達障害等に関する学びや情報交換の場所なることを願って投稿させて頂きます。今日のトピックは「発達障害 こだわり」についてです。
電車や恐竜に没頭する男の子や同じ服ばかり着たがる女の子など、特定の物事に強いこだわりが見られる子どもは多いです。そんなお子さまの様子をみて、「ウチの子は発達障害かもしれない」と不安を抱く親御さんも少なくありません。
一方で、明らかに発達障害である言動が見られるお子さまが、「ウチの子はちょっとこだわりが強いだけ」といって見過ごされてしまうケースもあります。
実は、どちらの場合にも共通して「発達障害だったらどうしよう」というネガティブな気持ちが根底にあることが多いです。こんな不安を払拭するために、どこまでが「ちょっとこだわりが強いだけ」で、どこからが「発達障害」なのか、一緒に考えていきましょう!
目次
発達障害における「こだわり」とは?
医学的に、発達障害は主に以下のような3つの分類がなされています。
・注意欠陥多動性障害(ADHD)
・自閉症スペクトラム(ASD)
・学習障害(LD)
これらの中で、こだわりの強さが特徴としてあげられるのはASDです。
「自閉症」や「アスペルガー症候群」といった呼ばれ方もされてきましたが、国際的な診断基準(DSM-5)により、現在は総称として自閉症スペクトラム(ASD)と呼ばれています。
ASDの診断基準のうち、「こだわり」に関する側面については【限定された反復的な行動・興味・活動が2つ以上あること】と定義されています。
▼ASDについて、もっと詳しく知りたい方はこちらから!
限定された反復的な行動・興味・活動とは?
ASDにおける「こだわり」の定義をもう少し掘り下げてみると、次の4つになります。
- 常同的で反復的な運動動作や物体の使用、あるいは話し方
- 同一性へのこだわり、日常動作への融通が利かない執着
- 集中度・焦点づけが異常に強くて限定的であり、固定された興味がある
- 感覚入力に対する敏感性あるいは鈍感性、あるいは感覚に関する環境に対する普通以上の関心
少しわかりにくいので、具体例で考えましょう。
- おもちゃを一列に並べたり物を叩いたりする、反響言語(オウム返し)
- 毎日同じ道順をたどったり、同じ食物を食べたりする
- 電車や恐竜など特定の物事に強い興味を持つがその範囲は狭い
- 大きな音、特定の音が苦手
あくまで一例にすぎませんが、このような言動が2つ以上みられる場合にはASDと診断される可能性があるようです。
恐竜好きな男の子はASDなのか?
では、以上のようなこだわり方が2つ以上みられるお子さま(大人もですよね)はASDだと決めつけてしまってよいのかというと、もちろんそうではありません。
たとえば私には5歳の息子がおりますが、彼は3歳の頃から恐竜の名前をすべて覚えてしまいました。それに飽きると今度は歴代の仮面ライダーが使う武器の名前をすらすらと言える状態で日々楽しく過ごしています。
また、音の変化に敏感な一面もあり、大好きな仮面ライダーを映画館で観ることにチャレンジしたのですが、あまりの音響に恐れをなして泣きわめいてしまったこともあります。
このような彼の性質は先ほどの③と④に該当するわけですが、私は息子がASDだと感じたことはありません。なぜなら、人とのコミュニケーションが上手だからです。
「こだわりが強い=発達障害」とは限らない!
国際的な診断基準(DSM-5)が定めるASDの診断基準には、こだわりに関する側面とは別に、もう1つ重要な要素があります。
それは、【複数の状況で社会的コミュニケーションおよび対人的相互反応における持続的欠陥があること】です。つまり、よく喋る子どもはこの項目にはあてはまりません。
また、DSM-5によると【「こだわり」と「コミュニケーション」のどちらにも症状がみられる場合にASDの疑いがある】とも定義されていることから、私には自信を持って息子は発達障害(ASD)ではないと断言できるわけです。
▼コミュニケーションについては、こんな情報もあります。
もちろん、自己判断でASDでないと確実に判断できるわけではないため、今後も注意深く観察していくつもりです。ですが、成長とともにおさまっていく特徴もありますよね。
今、この記事を読んでいる親御さんのなかにも「子どものころは大きな音が苦手だった。けれども成長とともに気にならなくなった」という方もいらっしゃるかと思います。お子さまの違和感にあまり過敏になりすぎず、気長に様子を見ていくことも、時には必要かもしれません。
▼そうはいっても不安……というときは、専門機関に相談することをおすすめします!相談先も複数あるので「相談しやすそう」と感じるところに、まずは相談してみましょう。
「こだわりの強さ=伸ばすべき強み!」と意識変換しよう
「電車や恐竜に異常な興味を示す男の子」が世の中にたくさんいるように、特定の物事に強い興味を抱く(こだわりを持つ)ことは、誰にでもあります。そのことだけで発達障害を疑ってしまうのはあまりにも時期尚早です。
最近ではグリット(やり抜く力)の重要性もよく話題にあがりますが、「幼い頃から好きなことに没頭する」という経験が何よりもグリットを育む要因とも言われています。
こだわりの強さが発達障害の一因となり得るからと言って、焦って成長の芽を摘んでしまうようなことをしてはいけません。お子さまのこだわりは、お子さまの強みであるかもしれないのです。
意識変換すればネガティブなイメージからも抜け出せる
ネガティブな受け止め方自体が発達障害というものに対する「こだわり」であり、その段階より前に進もうとする考えの「障害」となってしまっているかもしれません。
こだわりの強さをどう捉えるかによって、こだわりという【お子さまの強み】を活かした子育ての実践や、発達障害という【お子さまの特性】を踏まえた準備をすることができます。子どもは自分で気づけませんから、親である私たちが正しい知識を身につけていきたいですね。
「愛する我が子はきちんと育っているか」は、子育てをするすべての親御さんが抱える悩み事の一つです。子育てに正解はない、とはいえ間違った子育てをしたくはありませんから、親はみんな必死になって色々と調べます。
しかし、そうやって得られる情報の中で目につくのは「こうなってはいけない」というネガティブなものばかりになってしまってはいませんか?
「こだわりが強い=発達障害かもしれない」というのは、短絡的な悪しきイメージです。それこそ、「こだわりが強い=発達障害」というネガティブなイメージに「こだわり」を抱いてしまっていると言えるのではないでしょうか。
「こだわりが強い=伸ばすべき強み」と意識変換すれば、このネガティブなイメージからも抜け出せます。もしも最終的に発達障害と診断されたときにも、この意識は役に立ってくれるでしょう。
まとめ
発達障害の診断基準などをもとに、こだわりの強さについて考えてきました。結論、こだわりが強いからといって発達障害だとは限りません。
「こだわりが強いこと」が発達障害の一因であることには違いないのですが、発達障害の要因はそれだけではありません。
こだわりの強さだけで発達障害を疑うことはやめましょう。むしろ「こだわりの強さ」に秘められた「伸ばすべき強み」という可能性にも目を向け、まずはネガティブな気持ちを変換してみましょう。
ポジティブな気持ちでお子さまを見ることができれば、たとえ「それでもやはり発達障害かもしれない」となったときにも、それを【お子さまの特性】と捉えたうえで前に進める力になってくれるかもしれませんよ。