今日も皆さんと一緒に発達障害等に関する学びや情報交換の場所となることを願って投稿させて頂きます。 今日のトピックは「発達障害と色彩感覚」についてです。
発達障害を持つ子供や有名人が、素人ではないような豊かな色彩で表現した絵を描いた話題を聞いたことがあると思いますが、そのような色彩感覚は、発達障害に関係する特有なものなのでしょうか?
そこで、発達障害と色彩感覚には関係性があるのかを、調べてみました。
目次
発達障害と色彩感覚
発達障害には理解されにくいこだわりや感覚の特異性を持つことがあります。
この特異性から来る症状が、視覚や色彩にも大きな影響を及ぼす関係を持っていることが分かっています
感覚過敏と感覚鈍麻
発達障害において、五感などの感覚が異常に過敏だったり、逆に鈍麻だったりすることがあります。これは、脳が身体の感覚器官から受けた刺激を正しく処理できない、脳の処理障害によるものです。
処理障害から来る行動を、4つに区分する考え方があります。
- 感覚過敏:感覚情報に過剰に反応している状態のこと
- 感覚回避:過敏によって、刺激を避けるような行動を示す状態のこと
- 低反応・低登録:感覚情報への反応がにぶい、感覚鈍麻の状態のこと
- 感覚探求:鈍麻によって、より強い刺激や繰り返し刺激を求めるような行動を示す状態のこと
こられが、視覚や色彩において影響すると視覚過敏・鈍麻となり、何でもない光や色が強い刺激となったり、逆に見えなかったり、もっと見ようとして生活に支障が出るのです。
過敏と鈍麻は、感覚の両端ではなく五感と共に混在している場合が多く、光には敏感だが痛みには鈍感だとか、色彩には敏感だが身体の統合感覚が鈍感など、4つの区分の混在具合は、マーブル状やグラデーションと表現されます。
視覚過敏で困ること
- 光に対して敏感で、わずかな明るさも気にしたり、暗さに敏感で物陰や暗がりを嫌ったり恐れたりする
- 日光の下では目を開られず、曇り空も眩しい
- 蛍光灯の光がチカチカして見える
- LEDの光が目に刺さる
- 夜のネオンが気持さや恐怖を感じる
- カメラのフラッシュは極端に苦手
- PCやスマホの画面は、ずっと見ていられない
- 対向車のヘッドライトが眩し過ぎて夜は運転できない
- コントラストの強いケバケバしい色彩が目に刺さり極端に疲れる
- 真っ白い紙はテカって文字が飛んで読みにくい
- 特定の色や色彩の度合い、模様や形、様々な組み合わせに、こだわりや快・不快の刺激を感じる
- ごちゃごちゃしたレイアウトにめまいがする
- 動くものが気になり、窓の外や人込みなどで視覚的に疲れる
- 苦手な環境に長く居ると疲れて、頭痛やめまいが起きて酷いと寝込んでしまう など
視覚鈍麻で困ること
- 動く物が感じ取れず、ボールや車などの危険物が目に入らない
- グルグル回っても目が回らないので、ずっと回りたがる(三半規管の鈍麻でもある)
- 明るくしないと色や形が分かりにくい
- 味ではなく、緑色の物を食べなかったり、白い色の物だけを食べたがったりする
- 高い場所を危険に感じないので、どこでも平気で昇ってしまう
- 夜の工事現場や車のライト、カメラのフラッシュなど、光の刺激に惹かれ光源や火元に近付きたがる、近付き過ぎる
- 太陽など、まぶしいものを止めるまで見てしまう など
色覚異常
色覚とは、網膜の錐体細胞によって起きる視覚で、一般的には青・緑・黄-赤の3色型ですが、3つの内1色の感度がが弱かったり、1色少ない2色型だったりして、普通と見え方が違うのがが色覚異常です。
アスペルガー症候群や発達障害の人は色覚が一般人と違う場合が多く、原色的に発色しているように見えたりするという研究結果があります。
男性に多いと言われる赤緑色覚異常を持つ女性にもこの傾向は多いのですが、赤緑色覚異常の場合は単なる色覚劣性でなく、暗所や青色に対しては一般的3色型の人よりも感度が良いという特徴も併せ持つようです。
色盲・色弱は遺伝子の問題で、現代の医学では治療法は無いと言われており、色覚異常の大多数を占める赤緑色覚異常では、地球上に約3億人もいると言われています。
4原色型色覚
一般的3色型よりも1色多い、4原色の色覚を持つ人が確認されています。この4色型色覚は色盲と同じようにX染色体上の突然変異によって発生し、女性にのみ現れると考えられています。
常人の100倍の1億色を視ることができ、研究によると実に全女性の2~3%が4色型色覚を持っていると言われますが、その実態も発達障害との関連性も、まだ明確に解明はされていません。
大学などの研究結果
京都大学霊長類研究所 正高 信男教授とレンヌ第一大学 マリン・グランドジョージ講師の研究では、自閉症児は黄色が苦手で、代わりに緑色を好むといった結果が発表されています。
日本福祉大学のPDF資料には、自閉症者の描画における色彩傾向という、 塗り絵のテストで自閉症と色彩の関係を研究したものがあり、16色を使用した中で、赤・青・黒などへの傾向が示されています。
色覚異常で困る事
- 本当の色が分からない
- 色がかすんだり、くすんだり暗い色に見える
- 全く違う色に見える
- 形からだけで区別できない同形異色の物には不便を感じる
- 信号や標識など生活上の目印となっている色も区別がつかない
- 色に対しては他人と話を共有できない
- 見た目からは理解されないので誤解や差別・いじめを受ける 原因となる など
超感覚!?
サヴァン症候群
自閉症の人の中には約10%、自閉症以外では約1%の割合で、音楽、数学、芸術、言語に、優れた超人的な才能を持つ人がいます。
この能力を持つ人たちはサヴァン症候群と呼ばれ、一目見ただけの景色を写真のような絵に描けたり、一度聞いただけで曲を完璧に演奏できたり、過去から未来に至るまでの日付の曜日が瞬時に分かったりするのです。
色合いにおけるセンスが飛躍的に優れている芸術家の中にも、サヴァン症候群だったり、サヴァン症候群と言われている人が多く見られ、話題に上る事も少なくありません。
ただ、特定の部分に突出している能力で、全ての分野でこの能力が発揮されるわけではありませんし、むしろ一般的なことは平均以下だったり出来なかったりすることがあります。このサヴァン症候群は、ASDと同じく男性に多いです。
共感覚
共感覚とは、文字、音、数、時間、人の性格や姿などに、色や形や匂いなどの別のイメージを感じたりする不思議な感覚のことです。
一般人でこの感覚を持っている人はわずか2〜4%ですが、自閉症の人々の20%がこの共感覚を経験していると言われており、サヴァン症候群と共に現れる場合も有ります。
新生児では五感が明確に分かれておらず、それぞれが未分化な知覚を生み出していて、成長による感覚の発達にともなう脳の結合の変化によって、通常こうした共感覚は刈り取られ失われて行くとされています。
共感覚を持つ人は、発達の過程で何らかの理由により脳の結合が保たれて、これらの知覚がそのまま残っているものと考えられているのです。
対処法
体調管理
身体の具合や気分が良いと、症状が出にくかったり出ても軽かったりすることが確認されています。
基本として、日々の健康管理に気を使うことが大切なようです。
感覚の訓練を行う
苦手な感覚がはっきりしている場合には訓練も有効です。感覚は訓練を行うと有る程度は向上したり、スムーズに対処できるようになります。
専門的な訓練は各種療法士や医師などに相談をし、本人に会った支援を受ける必要が有るでしょう。
専門機関紹介
発達障害者支援センターは発達障害児(者)への支援を総合的に行うことを目的とした、頼れる専門的機関です。
関係機関と連携する総合的な支援ネットワークを構築しており、さまざまな相談に乗ってくれて、指導や助言もしてくれます。
避けられるものは回避する
見ないで済むのならば、なるべく見ないようにする。長時間が辛いのならば、まめに休憩をとるようにする。
強い光がダメなら間接照明に変えたり、全体が無理なら自分の周りいだけ囲いを設置したり、工夫や単純に避けることで回避できるなら、実施してみましょう。
周囲の理解を求める
感覚鈍麻は本人でないと、何がどの程度どのように苦手や苦痛となるのか分かりませんし、健常者が辛いと思うような刺激が、感覚鈍麻の人には感じられなかったり、心地よい刺激だと受け取ることもあります。
感覚や状態を理解することで、本人にとって生活しやすい状況を作ってもらい、本人も周りも互いに、ストレスや不安などを抱えないようにすることも重要な解決策です。
対策専用の製品を使う
単純に外出に鍔付きの帽子を被ったり、液晶画面の明るさのモードを変えたり、ブルーレイ除去フィルムなどを張っても効果があるという、工夫をしている当事者の意見も多々あります。
また、視覚過敏や色覚異常には、刺激を和らげたり、見える色を補正するサングラスや偏光メガネ、UVカットメガネやコンタクトなど、光や色彩に対処できる製品が出ています。
赤緑色覚異常を補正するメガネがありますので、ご紹介します。
周囲(家族)は寄り添ってあげる
他人からは明らかに優れて見える感覚特性の要素も、本人は意外と気づいていないことも多くあります。
一般との違いを指摘され叱られ、矯正されることばかりでは自己肯定感が下がり、無価値な存在と悲観させて、才能に気付かず活かせずに潰してしまうことになりかねません。
まずは良く見てあげて理解を示し共に寄り添ってあげましょう。
放課後デイサービス アレッタの紹介
放課後デイサービス アレッタは横浜市を拠点とし、子どもたちの自立や健全な育成のために、障害児と保護者をサポートしています。
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まとめ
発達障害の中には、色彩に対して特異な感覚を持つ場合があります。
こだわりだったり、敏感や鈍感だったり、色覚の異常だったり、常人離れした能力だったりと様々で、研究や解明が進んだのが近年なので、注目されるようにはなりましたが、まだ今後より一層の理解を必要としています。
実際の生活に支障がある場合は、専門的な対処や様々な工夫も必要ですが、上手く対処が出来て、問題なく日常生活が出来る環境を作れている場合も多く有ります。
中には、長所や才能とも成り得る特殊能力を開花させて、活躍し注目されている人もいたりします。