今日も皆さんと一緒に発達障害等に関する学びや情報交換の場所なることを願って投稿させて頂きます。
今日のトピックは、発達障害とコミュニケーションについてです。
発達障害をもつ人は、そうでない人に比べてコミュニケーションに困難さを抱える人が多くいます。
悪気はないのに、なぜかいつも周りから煙たがれたり嫌われてしまったり・・・そんなことが続くとストレスが溜まりますし、自信もなくなってしまいますよね。
発達障害のある人がコミュニケーションを苦手とする理由と、その対策についてみていきましょう。
目次
発達障害があるとコミュニケーションが難しいワケ
ASD(自閉症スペクトラム)
ASDの中でも、アスペルガー症候群(知能や言葉に遅れがない自閉症スペクトラム)の人は、その特徴からコミュニケーションに困難さを抱える人が多く、大きくは4つの型に分類されます。
積極奇異型
会話に積極的に参加し、自分の話をどんどんする一方、人の話や興味のない話になると聞いていなかったりします。また、人の気持ちを察することが苦手なため、相手を傷つけるようなことを平気で言ってしまうことがあります。
相手との距離が近く、初対面の人に対して慣れ慣れしく接する傾向があることから、大人であれば敬語が使えない、子どもであれば初めて会った人にいきなり抱きついたりすることもあります。
孤立型
基本的にひとりでいることを好むため、他人と積極的に関わろうとはしません。聞かれたことにはしっかり返答できますが、目的のない雑談が苦手です。理詰めで語るので、やや堅苦しい印象があるものの説明は上手にできます。
また、無口で表情が乏しいため「もしかして怒ってる?」と勘違いされるのもこのタイプです。
受動型
自己主張を殆どせず、優しく、波風を立てるような発言はしません。反面、人の意見にすぐ流されてしまったり頼まれると断れないので、いいように使われて不利益を被ることがあります。
尊大型
威圧的で、自分の意見を強く通そうとします。学力も高く、自信家でリーダー気質である一方、暴言を吐いたりして人を傷つけてしまうことがあります。近寄りにくいと思われてしまうタイプです。
ADHD(注意欠如・多動性障害)
ADHDの人は想像力が豊かであるため、会話の最中に脳内で連想ゲームが始まってしまい、話が脱線しがちです。会話の流れを無視して全然関係のない話をし始めるので、周りの人を困惑させてしまいます。
また、後先のことを考えずに思ったことを衝動的に口にしてしまうため、失言が多くなりがちです。
コミュニケーション力をアップさせる方法
自分のコミュニケーション力の低さを自覚する
まずは自分のコミュニケーションの問題点を把握することが重要です。これができていないと改善することが難しくなりますので、しっかり認識しましょう。
視線や話を聞く姿勢は大丈夫ですか?
視線が話し手のほうに向いていない、定まっていないと、相手は「本当に話を聞いてくれているのかな?」と不安になります。また、スマホやPCを操作しながら聞いていたり、足を組んだり、ふんぞり返ったりしていませんか?
ほんの少し前のめりになって、相手の目をみて話を聞くことで、相手は「自分の話を聞いてくれているな」「興味をもっていてくれているな」と感じることができますよ。
相手の話にうなずいたり、相槌を打つことも大切です。
表情や声のトーンは大丈夫ですか?
ロボットのように表情がなかったり、声に抑揚がついていないと、相手はあなたの感情が読み取れません。同じ言葉でも、イントネーションや強弱、相手の表情によって与える印象や意味合いも変わってしまいます。
例えば、何かをお願いされて「いいですよ」と答える場合、笑顔で明るく返されると相手は「気持ちよく引き受けてもらえた」と思いますが、無表情で言われると「お願いして悪かったかな」と思ってしまうかもしれません。
また、ひっそりとした公共の場で大きな声で話してしまうこともNGです。
自分の話ばかりしていませんか?
ASDやADHDの人は、自分の話ばかりしてしまう傾向がみられます。相手が話していても、いつの間にか自分の話に持って行きがちです。
例えば、相手が旅行に行った話をしたとします。定型発達の人であれば、「どこにいったの?」「どうだった?」「楽しかった?」と相手の人の話に興味がある姿勢を示し、話をもっと引きだそうとします。
ここで、「私もこないだ○○に行ってきたんだ!」とか「旅行が好きなんだね、私は音楽が好きなの! 好きな歌手はね・・・」と自分の話に持っていってはいけません。
相手が話をしている時は、しっかり耳を傾け、相槌を打ちながら聞き役に徹するようにしましょう。
思ったことをすぐに口にしていませんか?
ADHDの人は、とても素直な人が多いです。裏表がなく、正直者だとも言えますが、何でも思ったことを口にすればよいというものではありません。
口に出す前に、その言葉が相手を傷つけるものではないか、考えるようにしましょう。
同調できていますか?
相手が愚痴や弱音を吐いているとき、アドバイスばかりしていませんか?
ASDの人は感情ではなく情報のやりとりをしてしまいがちです。これはASDに限らず男性に多くみられる特徴なのですが、女性がただ話を聞いて欲しいだけなのに対し、問題解決思考が働いてあれこれアドバイスをしてしまいます。
「そうだったんだ」「辛かったね」「わかるよ」というように、気持ちにより添った言葉をかけてあげましょう。
苦手な場合は男性の多い環境に身を置く方が、楽かもしれません。
ワーキングメモリの低さをカバーする
ワーキングメモリが低いと、多くの情報を一度で理解することが難しくなります。ASDには耳から入ってくる情報を処理することが苦手な特性(視覚優位)がありますので、口頭ではなく、できれば図や文章を用いて説明してもらうのがよいでしょう。
ワーキングメモリや、ワーキングメモリの鍛え方について分かりやすくまとめられた動画がありますので、参考にしてください。
台本を用意する
人前で何か発表をしたり、話をする際はあらかじめ台本を用意しておくと便利です。
話があちこちに飛ぶのを防ぎ、優先順位をつけたり、起承転結をしっかりつけることで、聞き手にとってわかりやすいスピーチをすることが可能です。
また、事前にしっかり準備をすることで焦りや緊張も和らぎますよ。
SST(ソーシャルスキル・トレーニング)
SSTとは社会生活や対人関係を円滑にするためのスキルを身につけることです。
一朝一夕では身につかないため、できれば子どものうちから日々の生活を通して少しずつ身につけていくことが大切です。例をあげてみましょう。
✔「お店やさんごっこ」を通して店員さんとのやりとりの仕方を身につける
✔バスや電車、公共の場など、時間や場所、状況に適した行動(TPO)を学ぶ
✔子どもの気持ちを代弁してあげる(相手の気持ちを知るために、自分の気持ちを知る)
SSTの進め方や、書籍について紹介された記事がありますので、参考にしてください。
マンガで学ぶ
心の中の声がモクモクの吹き出しになって見えることのある「マンガ」は、人の気持ちを察したり表情を読み取ることが苦手な人にとってよい教科書となります。
人はどんな言葉に傷つくのか、どんな場面でどんな表情をするのか、仕草をするのか・・・
台詞や登場人物の表情に注意して、マンガからコミュニケーションを学んでみましょう。こちらの動画を参考にしてみてくださいね。
周りの人ができること
伝え方の工夫
発達障害の人がいくら頑張って努力をしても、限界があります。無理して周りに歩み寄ろうとするあまり、大きなストレスを抱えてしまう人もいます。
発達障害を持つ人、周りの人、双方が特性を理解し歩み寄ることにより、落としどころを作ることが大切です。
言葉通りに受け取られやすいので注意
定型発達の人であれば、相手が発した言葉の裏にある真意や本音を読み取ることができますが、ASDの人は言葉通りに受け取ってしまいがちです。
例えば、あなたがASDの子どもに「お風呂見てきて」と言った場合、その裏には「もしお湯が溜まっていたら止めてきてね」という意味が含まれていますがASDの人は本当に「見るだけ」で、お風呂のお湯が溢れそうになっていても止めてくれなかったりします。
大人になっても同じで、建前や皮肉、冗談がわからず解釈のズレが生じることがあります。共通認識がないため、暗黙の了解、ということが苦手です。「帰れ」と言われて本当に帰ってしまうことも、ASDあるあるです。
曖昧で抽象的な表現を避ける
「だいたい」「適当に」「ちょと」など、曖昧な言葉は使わないようにしましょう。
例えば、「ちょっと塩をかける」ではなく「小さじ2分の1の塩をかける」、「夕方までに」ではなく「午後5時までに」という具合です。
指示は具体的に、細かく伝えましょう。 ASDには真面目な人が多いので、適切な指示ができればきちんと守ってくれますよ。
口頭よりも文面で
先述した通り、ASDの中には耳から入ってくる情報を処理することが苦手な人がいます。長い指示や複雑な指示をする時はなるべく口頭ではなく文字にして伝えましょう。
文字だけでなく、図や表を用いると更に分かりやすくなります。うっかりミスをしがちなADHDの人にとっても、指示を何度も読み返すことができるので有効です。
無理に誘わない
ランチを皆と一緒に食べなくても、飲み会に来なくても、しつこく誘わないようにしましょう。
特に、孤独型のASDの人にとって、一人で過ごす時間はストレスから解放される貴重な時間ですので、本人が乗り気でないようなら尊重してあげましょう。
心にゆとりを
心にゆとりがないときは、相手のちょっとした言動にイラッとしてしまうことがありますよね。
特性について学び、相手を理解することで、不可解な行動もあまり気にならなくなるかもしれません。付き合い方次第では、独特の視点や、常識にとらわれないアイデアから学ぶこともできそうです。
その特性を受け入れ、ポジティブに捉える心の余裕がほしいですね。
カサンドラ症候群について
相手を理解し、受け入れようとする気持ちはとても大切です。しかし、度を超えた我慢は心身に不調を来します。頑張り過ぎず、距離を置いたり、第3者に相談することも時には必要です。
カサンドラ症候群とは
アスペルガー症候群の夫または妻と情緒的な相互関係が築けないために配偶者やパートナーに生じる、身体的・精神的症状を表す言葉である。
引用元:カサンドラ症候群 – Wikipedia
上司と部下の関係、家族や友人の間でも起こりますが、ASDの配偶者をもつ人に多いとされています。
家の外では気を張っているので、コミュニケーションや対人関係を円滑にすることができても、家の中では素の自分に戻ってしまいます。
配偶者は、「気持ちが理解してもらえない」「マイルールを押しつけられる」ということなどにストレスや寂しさを感じつつも、うまくやっていこうと我慢をし続けた結果、身体的・精神的に不調が現れてしまうのです。
カサンドラ症候群の症状
偏頭痛、体重の増減、食欲低下、睡眠障害、胃痛、めまい
うつ、無気力、怒り、悲しみ、怯え、緊張、不安
カサンドラから脱出する方法
相手を変えることは簡単ではありません。ASDだという自覚がない場合や、改善する気持ちがない場合は特に難しいと言えるでしょう。
変えられたとしても、かなりの時間がかかることは覚悟しなければなりません。既に心身に不調が出ている場合、相手と物理的な距離を置くことが一番早く脱出できる方法です。(別居、離婚)
それが難しい場合は、いちど専門家に相談してみましょう。
OFFICE NAKAGAWA(カウンセリングオフィス/オンライン相談可)
まとめ
いかがでしたか?
発達障害の人は、その多種多様な特性により、コミュニケーションに困難さを抱えていることが多いです。特に日本では個性よりも和を重んじる風潮があったり、ストレートな表現を避けることが多いため、察することや行間を読むことが苦手な発達障害をもつ人にとっては一層ハードルが上がっているのかもしれませんね。
発達障害の人も、そうでない人も、特性を理解してお互いが歩み寄ることが大切です。とはいえ、精神的な負担が大きいのであれば、その環境から逃げることも選択肢のひとつですので無理し過ぎないでくださいね。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。