行政機関や事業者においては、「障害者差別解消法」によって合理的配慮が求められます。
その義務や罰則はどのように定められているのか、その詳細についてまとめます。

行政機関と事業者の義務の違い

行政機関と民間事業者では、義務に違いが見られます。
「不当な差別的取り扱い」に関しては、両者ともに法的に禁止されています。
障害を理由に不当にサービスを提供しないなどといったことは、あってはならないのです。

ただ、合理的配慮に関しては、行政機関は法的義務、民間事業者は努力義務と位置付けられます。

行政機関は合理的配慮をしなくてはなりませんが、民間事業者はなるべくするように努力すべきである、とされています。
そのため、学校教育における合理的配慮は、公立学校の場合法的義務となりますが、私立学校の場合は努力義務となります。

また、民間事業者の場合努力義務にとどまるといっても、それはサービス利用者に対するものだけで、雇用した労働者に対しての合理的配慮は法的義務となることが、厚生労働省によって定められています。

合理的配慮を実現するために必要な手順

合理的配慮の内容に関しては、配慮を必要とする本人と周りがよく対話することで合意形成を進めるべきです。

具体的にはまず、配慮を必要とする本人や保護者、介助者が必要な配慮の意思表明をすることが大切です。
その次に、学校や企業、行政がどんな配慮ができるかを検討して本人と話し合います。

話し合った末、配慮の場面や内容についてお互いに合意ができたら実施します。
配慮が実施された後も、定期的に話し合いの場を設けることによって、見直しや改善を重ねましょう。

教育での合理的配慮とは

教育機関が合理的配慮をするとき、3つの観点と11つの項目を踏まえた上で行うことが求められます。

まず一つ目の観点は、教育内容・方法です。
教育内容を細分化すると、「学習上又は生活上の困難を改善・克服するための配慮」「学習内容の変更・調整」に分けられます。

もう一つの教育方法は「情報・コミュニケーション及び教材の配慮」「学習機会や体験の確保」「心理面・健康面の配慮」に分けられます。

二つ目の観点は、支援体制です。
項目ごとに分けると、「専門性のある指導体制の整備」「幼児児童生徒、教職員、保護者、地域の理解啓発を図るための配慮」「災害時の支援体制の整備」となります。

三つ目の観点は、施設・整備です。
「校内環境のバリアフリー化」「発達、障害の状態及び特性等に応じた指導ができる施設・設備の配慮「災害時等への対応に必要な施設・設備の配慮」に分けられます。

就労での合理的配慮とは

就労における合理的配慮は、「採用/応募に関する配慮」「作業/職場環境への配慮」「福利厚生/研修待遇などに関する配慮」の3つの観点から行われます。

採用や応募に関する配慮では、募集要項を音声で提供するなどといった具体例が挙げられます。
作業や職場環境への配慮では、作業しやすいようにイヤホンなどの着用を認めること、福利厚生/研修待遇などに関する配慮では、体調に気を配ることなどが一例です。