ADHDとPTSDの類似性

ADHDとPSDには似ている点が多く見られます。
そのため、ADHDと診断されている子どもが、実はPTSDであったという場合も考えられます。

ADHDの子どもには、不注意、多動性、衝動性の傾向が見られます。
おとなしく座り続けることができなかったり、癇癪を起こしたりといった症状が代表的なものです。

ADHDとPTSDの2つを見分けることは、専門家であっても困難とされています。
子どもの生育歴や発達歴、過去にどのようなことがあったのかを基にしないと、正しく見分けることはできません。

そこで大切になるのが、家族をはじめとする子どもの近くにいる養育者の意見です。
急にADHDが疑われるような症状や傾向が見られるようになった時は、PTSDの可能性があるので医師に伝えてみましょう。

自閉症スペクトラムとトラウマ

自閉症スペクトラム(ASD)の子どもは、PTSDと診断されなくても心の傷に苦しめられていることがあります。

自閉症スペクトラムの子どもに多く見られる過去の出来事を急に思い出す「タイムスリップ現象」と呼ばれる現象があります。
これは、いじめや暴力を受けた時の記憶を思い出し、まるで今その経験をしているかのように振る舞う現象のことです。

自閉症スペクトラムの子どもがタイムスリップ現象を引き起こす要員としては、トラウマになるような経験をしやすいこと、自分の身体に起こっていることを説明することが難しいことが挙げられます。

トラウマになるような経験をしやすい

自閉症スペクトラムの子どもは、定型発達の子どもに比べストレスを感じやすいのが特徴です。
感覚過敏の子どもにとっては、学校の教室さえもストレスを感じさせる環境です。

また、自閉症スペクトラムの興味関心の偏りといった特性から、人とコミュニケーションをとることが難しくいじめに発展する場合もあります。

自分の身体に起こっていることを説明することが難しい

自閉症スペクトラムの子どもにとって、自分の状況を周りに伝えるのは困難を要します。
親や学校の先生など身近な人間でも、子どもがタイムスリップ現象に悩まされていることに気づいてあげられないこともあります。

過去にいじめにあったり辛い経験をしたことのある子どもが、今はすでにその出来事を克服したように見えても、実際にはタイムスリップ現象に悩まされていることがあります。

自閉症スペクトラムの子どもが次のような行動をとった際にはまだトラウマに悩まされている可能性があるので、子どもに不安に思うところがないか確かめてみましょう。

・攻撃的、破壊的な行動を急にとるようになった
・寝つきが悪くなるなどの身体の変化
・社会性やコミュニケーションの悪化
・一見無目的に思える行動を繰り返すようになった(奇声や身体を揺するなど)

自閉症スペクトラムの子どもは、普段からトラウマになるような経験をすることが多いため、タイムスリップ現象を引き起こしてしまうこともあります。

しかし、子どもが親や先生に相談しやすい環境を整えることで、タイムスリップ現象やPTSDを未然に防ぐことができるでしょう。