今日も皆さんと一緒に発達障害等に関する学びや情報交換の場所なることを願って投稿させて頂きます。
今日のトピックは、「発達障害とサポートブック」についてです。
発達障害といっても、一人一人違います。
わが子のことを理解してもらい、周りにサポートをお願いするって難しいですよね。
周りの環境が変わるたびに子どもについて一から説明しないといけない、、それは保護者にとって大きな負担です。
発達障害の子のトリセツとも言える「サポートブック」についてお聞きになったことがありますか?
毎回一から説明する負担を減らし、周囲に一貫したサポートをお願いするのに役立つのが、サポートブックなんです!
書いたらいいらしいと聞くけれど、どう役立つんだろう?どんな時に使うんだろう?どうやって作ったらいいのかわからない、、今回はそんな疑問にお答えします。
目次
発達障害の子のサポートブックが大切な理由
サポートブックとは
“発達障害の子どもの特性、接し方などをまとめた冊子”、つまり子どものトリセツ。
サポートファイル、子育てファイル、相互支援シート、など様々な呼び方がある。
サポートブックは、発達障害のある子ども・保護者・支援者との間の情報共有ツールです。
共有する情報には、子どもの特性、困った時の対処法、コミュニケーションの取り方、医療機関情報などがあります。
でもどうして情報共有することが重要なのでしょうか?
子どもが安心感を持って過ごせる
もし支援者によって子どもの対応が変わったとしたら、、、
子どもは不安感を覚えたり、パニックになったりするかもしれません。
情報を共有しておけば、一貫した適切なサポートを得られやすくなり、子どもが安心して過ごせるようになります。
親の負担軽減につながる
サポートブックを活用すれば、子どもの環境が変わるたびに一から説明する手間が省けます。
毎回支援者に子どもの情報を話すのはとても大変ですよね。大切なことを言い忘れたり、上手く伝えられなかったり、、。事前に作ってまとめておくなら、気持ちにも余裕が生まれます。
ただし、渡す時に口頭でも少し伝えることは必要です。
サポートブックはどんな時に使うの?
進学・進級・転校の時
これが主な用途ですね。
新しい担任の先生や子どもに関わる方たちに、具体的な情報を伝えることで、先生が一から子どもとの接し方を模索しなくてもよくなります。
先生にとっても、子どもにとっても過ごしやすくなります。
医療機関・施設利用時
医療機関の受診時や、一時的にボランティアに子どもを見てもらう時、新しい施設を利用するときなどにもサポートブックは活躍します。
どんなところを利用するか、どの程度のサポートが必要かに合わせて、内容や項目を調節するといいですね。
緊急時
災害や事故が起こった時など、万が一に備えて子どもが常時持ち歩くサポートブックを作ることもできます。
宮城県では、東日本大震災の時の経験を生かして、「緊急時サポートブック」を提供しています。
「備えあれば患いなし」
緊急時に見知らぬ誰かにサポートをお願いできるよう、事前に準備しておくといいですね。
成長を振り返る
子どもの成長や変化に合わせて、必要なくなった項目は外すことができます。
情報をアップデートさせていくんですね。
そして子どもの「成長を振り返る記録」として活用できます。
日々の変化は小さくても、長い目で見れば大きく成長していることがわかり、子どもを褒めてあげたくなるかもしれませんね。
作成時に注意すること
書けるところから始める
全ての欄を埋めようとすると、結構大変な作業になります。
自治体によっては、サポートブック作成会という事業を行っているところもあります。
また発達障害の親の会などもありますので、サポートブックを実際に作ってみた方と情報交換して、イメージを膨らませながら楽しく作ってみるのもいいですね。
障害を知らない人でも読みやすいように
サポートブックを見ていただく人の中には、発達障害についての知識がそんなにない、あるいは全くない人もいるかもしれません。
ですから、専門用語など難しい表現はなるべく控えて、わかりやすい表現に置き換えましょう。
- 視覚優位⇒目で見て理解するのが得意です
- 聴覚過敏⇒楽器やチャイムの音が苦手です
このように、実際にイメージしてもらいやすいような表現を意識したいですね。
客観的な観点も入れる
時間をかけて作るサポートブック。そこには親の想いがたくさん込められています。
でもその想いがあまりに強すぎると、主観的すぎるのでは?!という印象を与えかねません。
そこで大切なのが、親の願いだけでなく、「客観的な意見・資料も書く」ことです。
ここでいう客観的とは、
- 専門家の意見・検査結果などの資料
- 特別支援コーディネーターやスクールカウンセラーなどの意見
- 子ども自身の意見
のことです。
医師の意見や発達障害の検査結果を書くと、信頼性がぐっと増しますよね。
また、可能なら学校の発達障害に理解がある先生たちと一緒にサポートブックを作っていただくことも。
そして子どもにも「こんな時どう思う?こういう風に書いたけど合ってる?」と意見を聞いてみましょう。
苦手なところ+対処法を書く
「頑固なところがある」など性格だけを書くと、それがどう具体的に表れるのかが支援者にはわかりません。
また、苦手なことやできないことだけを書くと、支援者は「じゃあどうしたらいいの?」と困ってしまいます。
サポートブックは、あくまで子どもがサポートを得られるようにするための情報共有ツールです。
どんな行動が苦手なのか、そしてどうすればできるようになるか具体的な対処法を書きましょう。
ポジティブなことも書く
子どもの特性を伝える、というとすぐに思い浮かぶのが子どもの不得意なこと。
でも、ポジティブな内容もどんどん入れましょう!
例えば得意なことや頑張っているところです。
子どものできている所に目を向けるのは、親にとっても必要な練習です。
そういう視点で子供と接することは、子どもの自己肯定感を上げるのに役立ちますね。
また、支援者にとって、子どもとのコミュニケーションの手がかりになりますよ。
こちらの動画では、自閉症を持つお母さんが使われたサポートノートが紹介されています。
「好きなことや得意なことをたくさん記入すると、支援する側がそれを取り入れて子どもの成長を伸ばしやすい」とコメントされています。
具体的な書き方例
では実際に作る時の記入例を見てみましょう。
食事
発達障害の子どもに偏食はよくみられます。
単に好き嫌いというわけではなく、感覚過敏で「嗅覚・味覚の過敏」や「口腔内の感覚が過敏」になったり、こだわりが強いことが原因ということがあります。
子どもが十分に配慮してもらえるよう、食事面の情報を書きましょう。
<書き方例>
・うどん
・肉料理
・コロッケ
・パサパサしたもの
・赤い色の食材
・箸を使うことができる
・一口大に切ると、ひとりで食べられる
・コロッケなど、サクサクした触感の物は苦手⇒中身だけ食べる
・白いご飯はあまり食べない⇒ふりかけをかけると食べる
コミュニケーション
普段、子どもがどんな方法でコミュニケーションを取っているかをまとめます。
家族にしかわからない表現を特に書きましょう。
<書き方例>
・2-3語文で話せる
・絵カードも活用する
・短く簡潔に話すと理解できる
・注意を向けてほしいときは手を握る
・要求があるときは、目の前に行き指をさす
・拒否するときは、嫌がってしゃがみ込む
・本人に近づき、ゆっくりと話す
・言葉だけでなく、ジェスチャーや絵カードを使うと伝わりやすい 例:「ダメ」の声掛けと、「バツ×」のジェスチャーをすると分かりやすい
・話しかけるときは、最初に「○○君」と名前で呼びかける
トイレ
支援者が子どもをサポートするときに、気になることの一つがトイレについてです。
トイレトレーニングの進み具合は個人差があるので、失敗を避けるため普段のトイレのポイントを丁寧に書きましょう。
<書き方例>
・トイレに入る前にズボンを下ろそうとする
・そわそわし、動き回る
・ズボンの中に手を入れるとおしっこに行きたいサイン
・うんちはいつも朝食後にすることになっている
・トイレに入ってからズボンを下ろすよう声掛けする
・トイレ用擬音装置の音が苦手⇒その音が流れないように気を付ける
・3時間ごとにトイレに誘ってください
パニック
今までどんなことをきっかけにパニックになったか?具体的にどんな行動をとるか?パニックが早く落ち着く方法など具体的な情報があると、支援者がサポートしやすくなります。
<書き方例>
・急にスケジュールが変更になった時
・大きな声や音がした時
・人の多い所
・大きな声を出す
・苦手な音の時⇒イヤーマフを使うと5分程度で落ち着く。
・予定変更⇒場所や環境を変えて、静かな場所に行くと10分程度で落ち着く。
・落ち着いたら、「自分で落ち着けたね。えらいね」と褒める
・予定を前もって伝えておくとパニックになりにくい
渡すときの心構え
では、サポートブックが完成したら、渡すときにどんな点に注意したらいいでしょうか?
あまり期待しすぎない
家で行っている対処法は、あくまでも一つの方法にすぎません。
もしかすると、ほかのやり方の方がもっといいかもしれないですし、家庭と全く同じようにするのは難しいこともあるので、書いてあることを100%その通りに対応してもらえるとは期待しすぎないようにしましょう。
普段からの良いコミュニケーションが大切
サポートブックを最大限活用するには、普段から支援者とよくコミュニケーションをとり、信頼関係を築くことが欠かせません。
保育園や学校の先生など子どもと長期間関わる支援者の場合は特にそうです。
子どものサポートをしてもらって当たり前、という見方ではなく、日ごろから感謝の気持ちを言葉で伝えるようにしましょう。
どこでテンプレートを手に入れたらいい?
サポートブックをすべて手作りすることもできますが、一からなのでかなりの作業ですよね。
そこで、おススメなのが自治体が提供しているものやインターネット上で無料でダウンロードできるものを利用するということです。
各自治体
地元の自治体の情報をインターネットで検索し、問い合わせしてみることができます。
「都道府県や自治体の名前+サポートブック」で検索すると、地元の情報が見つかります。
また各自治体の福祉担当窓口に電話して聞いてみてもいいですね。
団体や個人
インターネットで、「サポートブック テンプレート」と検索するとたくさん見つけることができます。
今回は、その中でいくつかご紹介します。
LITALICOジュニア
保育園入園、小学校入学、特別支援学校入学と子どもの進路に合わせてシートを組み合わせることができます。
チェックシート形式で、子どもの特性・サポートの仕方を確認できるようになっています。
楽々かあさん公式HP
発達障害とグレーゾーンの子どもを育て、自身も発達障害の傾向がある方が運営されている個人のHPです。
実際の経験に基づき、ノウハウがいっぱい詰まったサポートブックが無料でダウンロードできます。
うぇぶサポ
多くのサポートブックはインターネットでダウンロードし、印刷して作成しますが、このうぇぶサポではネット上で作ることができます。
うぇぶサポの特徴
- PCが壊れても情報は無くならない
- 印刷しなくても、インターネットブラウザやスマホがあればどこからでも見れる
- 内容を更新することができるので、常に最新の情報を提供できる
見せたい人に見せたい部分だけネットで見てもらうことも。
もちろん作成した情報をPDFにして、印刷することもできます。
グレーゾーンの子にも必要?
主に発達障害の子向けに作られているサポートブックですが、グレーゾーンの子にも準備したほうがいいのでしょうか?
そこで、グレーゾーンの子どものサポートブックを作る時のポイントは、「シンプルに書く!」ということです。
まず相手に知ってほしい最低限の情報を選んで、もっと話を聞きたいと思ってもらえるように心がけましょう。
上に挙げた楽々母さん公式HPでは、グレーゾーンの子向けに簡易的なサポートシートのサンプル例が紹介されているので、参考にしてください。
使わなくなるタイミング
時間をかけて作るサポートブックですが、使わなくなることってあるのでしょうか?
子どもが安定して、周りのサポートが必要なくなったら、サポートブックを返却してもらうことができます。
あとはお家でわが子の成長記録として記念にとっておいてくださいね。
まとめ
いかがだったでしょうか。
サポートブックは、発達障害の子どもの特性・接し方などをまとめたトリセツで、情報共有ツールです。
進級・進学など環境が変わった時や、緊急時、また子どもの成長記録としても活躍します。
子ども・保護者・支援者との間で情報共有をすることで、一貫したサポートを受けられるようになり、子どもが安心感をもって過ごすことにつながります。
最初から完璧に仕上げようと思うと負担が大きいので、まずは気軽に始めてみてくださいね!
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。