皆さんこんにちは!本日も発達障害等に関する学びや情報交換の場所となることを願って投稿させて頂きます。
今日のトピックは、「発達障害のサッカー」です。
近年、サッカーは日本で人気となっているスポーツですが、発達障害のある子どもを持つ保護者も、サッカーをやらせてあげたい!と思う方はいるのではないでしょうか。
しかし、発達障害があるため、チームやコーチなどと仲良くできるのか不安になり、中々やらせてあげられないと考える保護者もいるかも知れません。
実際に、サッカーチームに加入していたが、保護者の心配や負担が多くなってしまい、仕方なく辞めなければいけなくなったという方もいるでしょう。
では、発達障害のある子どもがサッカーをしたい!と思った時、保護者としてどのようなサポートができるのか、どのような選択肢を提案できるのか見てみましょう。
目次
発達障害児へのサッカーのメリット
初めに、発達障害のある子どもがサッカーをするメリットについて見ていきます。人気のスポーツということ以外で、実は発達障害児の成長にとても役立つポイントがあるのでまとめてみました。
- 色んな動きをして大きく体を動かすことで運動療育につながる
- ルールがはっきりしていて例外などはないので理解しやすい
- 指示があると動きやすいのでコーチの指示通りにプレイできる
- サッカーという共通の目的があるのでチームメイトと話しやすい
これだけでピンとこない方もいるかも知れないので、もう少し詳しく見ていきましょう。もしかしたら、自分の子どもの特徴に当てはまるものがあるかも知れません。
運動療育になる
実は、サッカーを運動療育のメインにする支援施設もあり、そのような施設は次のことに関する力を効果的に伸ばすことができるのでサッカーを取り入れています。
- 体力(持久力、バランス、タイミング、スピードなど)
- 複合的な動作(走る、止まる、蹴る、回るなど)
- 団体行動(チームワーク、ルールを守る、自分の役割を果たすなど)
運動療育
遊びながら様々な動きをすることで脳の活性化を促す療育方法です。運動を通して成功体験を増やすことで自己肯定感を高めたり、他人とのコミュニケーションの機会を増やしたりするなどの効果が期待されています。
上記以外でも、左右両方の脳を使って脳のアンバランスさの調整や、非言語コミュニケーションの発達も見込めるとして、広島県立障害者療育支援センターの河野医長も次の動画で述べています。
ルールがはっきりしている、指示通りプレイできる
サッカーは、様々なスポーツの中でもルールが簡単で分かりやすく、練習や試合の中でもパターンが結構決まっているので、不規則なことが起こる頻度は少ないでしょう。
発達障害のある子どもの中でも自閉症スペクトラム障害でよく見られる症状ですが、コミュニケーションにおいて多くの困難を感じています。そのような子は不規則なことに対応することは難しいです。
しかし、規則や決まっていること、分かりやすい指示には取り組みやすいので、あらかじめルールを説明し、的確な動作の指示があればプレイに大きな問題はないでしょう。
また、練習や試合に取り組みやすいことから、注意欠陥多動性障害の子どもにとって、興味を持ちやすいスポーツであり、集中し続けることもできるでしょう。
共通の目的と話題がある
人付き合いやコミュニケーションが困難な症状を持つことがある発達障害児ですが、それは言葉をそのままの意味で捉えるので、暗黙の了解や裏の意味、空気を読むことは難しいのです。
しかし、サッカーという共通の話題があったり、「今日は勝つぞ!」というように同じ目標に向かっているので、学校の同級生などと比べれば会話が続けやすいでしょう。
また、サッカーは1チーム11人なので、必然的に練習や試合で多くの歳が近い子と話す機会が増えるので、対人関係を築くチャンスにもなります。
サッカーに関する注意点
先に述べたようなメリットがあると同時に気をつけなければいけないことやデメリットへの対応も忘れてはいけません。
プレイする時
練習や試合の時に発達障害児だからあり得るハプニングがあります。事前にコーチなどに話すことで対応してくれるかも知れないので、この点をまずは保護者が理解しましょう。
中でも多くの方が経験するかも知れないことをいくつかピックアップしてみました。
ボールを追いかけることだけに集中してしまいパスをしない
これは、サッカーを始めたばかりの頃に起こる可能性が高いことです。
同時に複数の動きや考え事をすることが困難な発達障害児にとって、ボールを追いかけながらチームメイトにパスを出すことはレベルが高い子もいるでしょう。
しかし、それは最初のうちで、練習を重ねてチームやコーチに「○○にパスして!」などの指示があれば、段々と理解していきます。
指示がないと毎回同じ人にしかパスができない
これも上記の点にかぶる部分はありますが、ボールを追いかけて誰かにパスをする時、先に視野に入った子にパスをします。その場合、後ろ側にチームメイトがいても気づけない時が多いのです。
そのため、チームメイトやコーチが「後ろにいる○○にパス!」などと指示を出した方が良いでしょう。
休憩時間の栄養補給や着替えを一人ですることが難しい
決められた短い時間の内に栄養補給や着替えを自発的にすることが難しい子もいます。
喉が渇いていないと、お腹が空いていないと、自分で「食べよう!」と思わないので行動できないことがあります。また、着替えを自分でするのが難しい子もいるでしょう。
そのため、試合の始まる時間や休憩時間に合わせて、起きる時間や家を出る時間などコンディションの調整をしなければいけません。また、着替えは保護者が入って手伝ってもいいかを聞く必要があるでしょう。
観戦する時
サッカーをプレイする楽しさを知っていると観戦をするのも好きになるのは自然なことでしょう。家では大丈夫でも、スタジアムで観戦する場合は気をつけなければいけないこともあります。
音に敏感で気分が悪くなってしまう
音や光に敏感な子は、些細な刺激でも頭が痛くなったり、その場にいずらかったりします。家では音量や部屋の明るさの調整ができますが、スタジアムになると防げるものがほとんどありません。
そのため、耳栓やイヤホン、サングラスなどを準備する必要があります。
自分の席だけにいれない
衝動性の症状がある子は、試合中や最初の時間だけ自分の席にいれるかも知れませんが、飽きてしまったり、突発的に自分の席から出てしまいたくなる時もあるでしょう。
その子の身の危険を避けるために、スタジアム観戦を諦めるご家族もいるかも知れません。
保護者にできるサポート
これまでに、サッカーのメリットとデメリットを見てきましたが、保護者としてどのようなサポートができるのかを考えた時、以下のことができるでしょう。
- まずは自分の子どもの症状や性格をよく知る
- その詳細をコーチに相談した上で、指導してもらえるかを聞いてみる
- 他のチームメイトとの出来、不出来を比べない
- スキルアップや試合中での活躍より、前にできなかった動きができるようになったことを褒める
- コンディション調整や着替えの助けなど、できることは支えてあげる
- それでも子どもの調子が上手くいかなかった時はそんなに落ち込まない
最後に挙げた「調子が上手くいかなくても落ち込まない」ことは、保護者にとって難しいことかも知れません。
ここで伝えたいことは、集中力が途切れたりベンチスタートだったりパスが上手くできなかったとしても、子どもが続けたいと思えるなら落ち込まなくてもいいのです。
保護者から見ればサッカーは、「習い事の一つなので上手くいって欲しいし、療育にもつながるなら続けて欲しい」と思って始めさせるでしょう。
しかし、子どもからすればその日の調子が悪くても続けたいと思うなら、どこかで楽しく感じているのです。そのため、保護者の助けがとても必要で困難ではなければ、落ち込まずに支えてあげましょう。
発達障害児に向けた取り組み
近年、発達障害がさらに知られるようになってからは、発達障害児に向けた取り組みも多く始まっています。
保護者にできる支え方はありますが、発達障害の知識がある方に任せた方が安心でき、似た環境の子どもとも知り合うことができるので、新しい交流の場も見つけられるかも知れません。
サッカースクール
「NPOトラッソス」は、東京都と神奈川県で活動している発達障害児、知的障害児向けのサッカースクールであり、楽しくサッカーをして成長を促すことを目指して運営しています。
一番の特徴は、子どものコンディションが不調な時に参加できないということを回避するためにサッカースクールでよくある曜日制ではなく、週5回ある練習日のどの日でも通えるのは、発達障害児の保護者としては魅力的です。
また、指導者育成の一環として、トラッソス・サッカースクールにいる指導者は発達障害に関することを学んでいるので知識があり、保護者も安心して預けられるでしょう。
そして、練習以外でも様々な活動をしており、ファミリー・サッカーやクリスマス会など保護者も参加できるイベントがあるので、お母さんやお父さん同士の交流も生まれます。
サッカー観戦
2019年夏、日本で初めてサッカースタジアムの中に発達障害者向けの観戦席ができたとこをご存じですか。
富士通やJTB、全日空などの会社と試合会場だった等々力陸上競技場がある川崎市が協力し、発達障害児が困難なく試合の観戦ができるように「センサリールーム」を用意しました。
その日はサッカーJ1リーグの川崎フロンターレと大分トリニータの試合でしたが、下記のつぶやきにもある通り、音や光に敏感な子や人混みが苦手な子もこの部屋から落ち着いて観戦することができました。
この部屋は防音効果のあるガラスで仕切られ、眩しい光も抑えられており、発達障害児やその保護者も安心して観戦できるでしょう。
まとめ
- サッカーは運動療育になったり、ルールが分かりやすく会話の機会が増えるなど、発達障害児がサッカーをするメリットがある
- 症状によって、プレイする時や観戦中での困難なこともあるので、保護者のサポートが必要
- 保護者は、子どもの調子が良くなくても落ち込む必要はない
- サッカーに関する発達障害児に向けた様々な取り組みがある
各地に発達障害児向けのサッカースクールやチームなど、以前に比べて発達障害児に向けた取り組みが行われていますね。
諦める前にそれらの施設や団体に相談したり、見学したりしてみてください。子どものできることを増やせるチャンスになるかも知れません。
今日も最後まで読んでいただきありがとうございました。