今日も皆さんと一緒に発達障害等に関する学びや情報交換の場になることを願って投稿させて頂きます。今日のトピックスは「乳児の貧血」についてです。
「貧血って生理が始まった女性になるものでは?」そういったイメージがあるのではないでしょうか?
実は乳児も貧血のリスクがあります。それも、乳児の貧血は発達障害の原因のひとつになる可能性があります。
この記事を読まなければ、乳児の貧血のリスクについてわからないままかもしれませんが、
読むことで、なぜ貧血が発達障害に関係しているのかや、貧血の対策についても分かるきっかけになるかもしれませんので、よかったら参考にしてみてくださいね。
目次
乳児の貧血と発達障害の関係
乳幼児の鉄欠乏性貧血は精神・運動発達の遅れの原因になると言われています。
精神運動発達が遅れるとは
精神・運動発達遅滞は通常できるとされる年齢から遅れている成長状態を指し、主な症状は、首が座らない、座れない、自分の足で歩けない、飛び跳ねることができないなどの運動能力の発達の遅れと言葉を話すことができない、人とコミュニケーションが取れないなどの精神能力の遅れに分けることができます。
少しでも成長が遅いと感じたら、かかりつけ医に相談の上、早期発見・早期療育が必要です。
引用サイト:精神・運動発達遅延の症状、原因と治療の病院を探す
さらに、貧血はADHDにも関係しているとされています。
鉄不足によってドパミン神経系の機能異常が想定されます。ADHDもドパミン神経系の機能異常が原因の一つとされています。
ADHDに関してはこちらの記事を参考にしてみてくださいね↓
なぜ貧血が精神・運動発達の遅れの原因になるのか
鉄は酸素を運んだり、エネルギーを作るのに関わります。なので、全身の組織や機能の発達に必要です。
特に、脳は全体の25%もの酸素を消費しているといわれています。鉄不足による酸素不足は脳にとって悪影響を及ぼします。
他にも、脳や中枢神経の発達に鉄は必要となります。
そのため、鉄不足は脳の機能に関係している精神・運動発達の遅れの原因となります。
鉄不足によっておこるリスク
鉄不足は脳にとってよくないことは理解できたと思います。もちろん、それによっておこるリスクはたくさんあります。
ここでは、そんなリスクについて紹介させていただきます。
- シナプス結合が減少し、海馬や線条体の構造変化がおこる
- 運動発達、睡眠サイクルの確立、学習や記憶において重要な物質(モノアミン→ドーパミンやノルエピネフリンなど)の合成・代謝に悪影響がある
- 乳児期の新しいものへの関心が低くなる(臆病な性格になりやすい)→社会発達面の問題の原因
- 生後6~24ヶ月では知能低下、処理能力の低下、注意・運動・認知・行動面の機能低下、睡眠覚醒リズムの乱れに関連する
- 鉄欠乏性貧血になってしまった場合に、治療をしても脳の機能障害が残る可能性がある
- 聴性脳幹反応といって言語発達(言語理解・発語など)に大きく影響のある反応が遅れる原因となる
- 発達期の脳における髄鞘化の障害のリスクがある
髄鞘化とは
大人の神経細胞の軸索は、髄鞘という膜で覆われていますが、出生時の神経細胞の軸索には髄鞘がありません。髄鞘を持つ神経線維は髄鞘のない神経線維に比べて非常に速い速度で情報を伝達できます。
したがって、髄鞘化は脳の発達にとって重要な意味を持っています。
一般に髄鞘化が完成すると、その脳領域は充分に機能するようになると考えられているのです。
引用サイト:脳の発達 脳神経細胞の成長
他にも、いくつかの神経疾患のリスクがあります。
- 憤怒けいれん→大泣きしたあとに息を吐いたまま呼吸がとまり、顔色が悪くなったり、意識を失ったり、全身の力が抜けるもしくはけいれんがおこる
- むずむず脚症候群→脚を中心に手などの四肢に不快な異常感覚がおこり、これによってなかなか眠ることができないなどの睡眠の問題がおこる
- 熱性けいれん→急な発熱に伴って意識障害、けいれんを引き起こす
参考サイト:乳幼児の鉄欠乏について
乳児に貧血が多い原因
乳幼児期に貧血を起こしやすい時期は2回あります。
時期 | 原因 |
胎児期~新生児期 | 母体の鉄欠乏、早産、母体妊娠合併症(妊娠糖尿病、子宮内発育遅滞、母体の喫煙、母体の肥満、子宮内感染など) また、母体が鉄欠乏性貧血の場合は低出生体重児の出生率や母児の周産期死亡率があがる。 |
生後6ヶ月~24ヶ月 | 母親由来の鉄は生後4~6ヶ月までならまかなえる。それ以降は急速な身体の発達もあって鉄不足になりやすい。 |
鉄欠乏性貧血の基準
生後6ヶ月から6歳までの貧血の定義:ヘモグロビン濃度11g/㎗未満、ヘマトクリット値33%未満(WHO)です。
鉄欠乏性貧血の治療
治療は鉄剤の経口投与を行います。だいたい3~4日で網状赤血球(赤血球の赤ちゃんのようなもの)が増えて、次第にヘモグロビン濃度もあがってきます。
鉄剤の副作用は少ないですが、腹痛や下痢・軟便がみられることがあります。
また、カルシウムと一緒にとると吸収されにくくなるため、空腹時にとるようになります。(食間に摂取)
貧血の対策
貧血になる前に、ならないようにすることが大切です。そのためには、鉄分を摂取することが有効です。
離乳食で鉄分をとる
離乳食を開始する時期は、生後6ヶ月といわれています。ちょうどそのころに母親由来の鉄が不足してきます。
ですので、離乳食で鉄分を補っていく必要があります。(授乳・離乳の支援ガイド:厚生労働省で鉄分を離乳食で補っていくことを推奨しています)
特に、母乳栄養児の場合は貧血のリスクが高いため意識していく必要があります。(理由は後述してありますので参考にしてみてくださいね。)
一日に必要な鉄分の量
乳幼児に必要な一日あたりの鉄分の量(推奨量)は以下の通りです。
年齢 | 男の子 | 女の子 |
6~11ヶ月 | 5.0㎎ | 4.5㎎ |
1~2歳 | 4.0㎎ | 4.5㎎ |
3~5歳 | 5.5㎎ | 5.5㎎ |
6~7歳 | 6.5㎎ | 6.5㎎ |
鉄分を含む食材
鉄分を多く含む食材の例は以下の通りです。
あさりの水煮缶 | 30gで11.3㎎ |
大豆 | 30gで9.4㎎ |
豚レバー | 50gで6.5㎎ |
干しひじき | 10gで5.5㎎ |
鶏レバー | 50gで4.5㎎ |
切り干し大根 | 30gで1.9㎎ |
煮干し | 20gで1.8㎎ |
ほうれん草 | 50g(小4分の1束)で1.8㎎ |
インゲン豆 | 30gで1.8㎎ |
効率の良い鉄分のとり方
鉄分を効率よくとるためのポイントは4つあります。
- ビタミンcと一緒にとる→ビタミンcはキャベツやブロッコリーなどの野菜に多く含まれます
- クエン酸と一緒にとる→クエン酸はみかんやいちごなどの果物に多く含まれます
- 肉類と一緒にとる
- ヘム鉄をとるようにする→ヘム鉄は、肉類やレバー、魚類や貝類に含まれている鉄です(非ヘム鉄は、鶏卵や豆類、緑黄色野菜に含まれている鉄です。非ヘム鉄は、吸収率が悪いです。)
鉄分の効率的なとり方について解説している動画がありましたので、よかったら参考にしてみてくださいね↓
吸収率にも関わってくるヘム鉄と非ヘム鉄を分かりやすく解説している動画がありましたので、よかったら参考にしてみてくださいね↓
貧血予防の離乳食のストックレシピ
鉄を多く含む食材や効率のいいとり方を紹介させていただきましたが、肝心なのはそれをふまえたレシピですよね。
YouTubeで、そんな貧血予防の離乳食ストックレシピが紹介されていましたので、参考にしてみてくださいね↓
こちらのレシピの作者さんは、10ヶ月健診で貧血の診断をされた我が子のためにこちらの離乳食を作っていました。
10ヶ月でも食べられるかどうかは、その子にもよると思いますので、今現在、食べることのできている離乳食の形態と比べて大きく変わらないようでしたら、チャレンジしてみてもいいかもしれませんね。
YouTubeで紹介されていたレシピ
材料:
- ひきわり納豆3パック
- 鮭3匹
- 豚ひき肉100g
- 鶏ささみ100g
- 豚レバー150g
下準備:
- レバーを薄く切ってボウルに入れ、ボウルに水を入れて血抜きをしていきます。
- ボウルの水を3、4回変えて一時間おきます。
- 臭み消しをします。レバー150gに対して塩小さじ1、酢小さじ2を用意し、先ほどのレバーの入ったボウルに入れます。
- 均一になるように混ぜて、15分おきます。
調理
- 鍋を2つ用意し、湯を沸かします。
- 湯が沸いたら肉類を鍋にいれます。(片方の鍋に豚ひき肉、もう片方の鍋に鮭と鶏ささみをいれます)
- 豚ひき肉はアクが出るのでアクをとります。
- 豚ひき肉に火が通ったらお皿にうつします(豚ひき肉の方が鮭やささみよりも火が通りやすいです)。
- 鮭と鶏ささみも火が通ったらとりだしてお皿にうつします。
- 両方の鍋を、さっと水で流して豚レバーと納豆の加熱用に湯を再度沸かします。
- 漬け込んでおいたレバーを水が透明になるまで3、4回洗います。
- 洗ったレバーをキッチンペーパーで水気をとります。
- 湯が沸いたら、片方の鍋に納豆、もう片方の鍋にレバーをいれて火が通るまでゆでます。(納豆は湯通しすることでネバネバが軽減して、赤ちゃんが食べやすくなります)
- 納豆は1分くらいで大丈夫です。
- レバーをはしっかり火が通るまでゆでます。
- 材料をみじん切りにしていきます。
- 豚ひき肉はそのまま細かく切ります。
- 鶏ささみは、筋をとって細かく切ります(パサつくので細かいみじん切りにします)→イメージはそぼろくらいです。
- 鮭は皮を取り除き、軽くほぐしながら骨をとり、ささみより大きめに切ります。(切りながら細かい骨もとっていきます)
- 豚レバーをみじん切りにします。(鶏ささみ同様パサつくので細かいみじん切りにします)
- 切った材料をトレーに入れていきます。(トレーは専用の小分けのものでもいいと思いますが、大きめの氷用の製氷トレーでもいいかもしれません。)
- トレーに入れる時、一食辺りレバーは5g、他の肉は10g目安になるように入れていきます。(先にレバーを入れてその上に他の肉類一種類だけを10g入れます→2層)
- 納豆と鮭は一種類だけで15g目安になるようにトレーに入れます。
- それぞれの具材は冷凍するときに固まりやすいように押し固めます。
- 蓋をして冷蔵庫へ入れます。
紹介されていた専用トレー:Richell つくりおきわけわけフリージングパック
作りおき用の区切られたトレーです。サイズのバリエーションも豊富なので、必要なものを選ぶこともできます。製氷トレーに比べて高価ではありますが、電子レンジ解凍や食器洗い乾燥機対応なのもありがたいですね。
作るが面倒くさい!そんな方にオススメの市販の鉄分を含む離乳食など3選
「確かに離乳食を作ることができればいいけど、作るのが面倒くさい…」「離乳食を作る時間がない!」そんな方にオススメの市販の鉄分を含む離乳食などを紹介させていただきます。
和光堂 ごくごく野菜 1食分の野菜+鉄 りんご味 7か月頃~(125ml・3本入)
離乳食をはじめるころにピッタリの野菜ジュースです。1食分の野菜がとれ、鉄も補えます。
そのままなら7カ月頃から、うすめて5カ月頃からと鉄不足が気になってくるころに飲むことができるジュースはありがたいですね。
森永 大満足ごはん 鶏肉と6種野菜の炊き込みごはん 120g 9ヵ月頃から
湯せんやレンジでチンして食べられるお手軽な離乳食です。1食分の鉄・カルシウムが摂取できます。9ヶ月頃目安で食べることができます。歯ぐきでつぶせる固さとなっています。
鶏肉と6種類の野菜を使っていて、うす味に仕上げています。着色料、保存料、香料は使用しておらず、国産野菜使用なのも安心ですね。120g入りです。
ピジョンベビーフード 食育レシピ 1食分の鉄カルシウム(120g・6食入)
こちらも湯せんやレンジでチンして食べられるお手軽な離乳食の6個セットです。1食分に必要な鉄1.5mg、カルシウム150mgが摂れます。月齢1才4ヵ月頃目安で食べることができます。前歯で噛み切れる固さとなっています。
着色料、香料、保存料不使用なのも安心ですね。セット内容は鶏だんごのトマト煮×2個/たらのブイヤベース×2個/鶏つくねのうま煮×2個で、一袋120gです。
離乳食がすすまない場合
離乳が進まず、母乳栄養を飲み続けている場合は注意が必要です。
それは、母乳は鉄分をあまり含んでいないからです。ですので、離乳が進まない母乳栄養児は貧血のリスクが高いということになります。
その証拠に、沖縄県で行われた乳幼児健診を受けた55,000人を対象とした研究結果によると、生後9~11ヶ月健診時点での貧血の有病率は、母乳栄養児で34.5%、混合栄養児で20.3%、人工栄養児で10.9%と、母乳栄養児の貧血の有病率が高いことがあきらかになっています。(参考サイト:乳幼児貧血の発育・発達への影響と貧血の予防・改善方策に関する大規模疫学研究)
そこで、フォローアップミルクが役立ちます。
フォローアップミルクとは
フォローアップミルクは、離乳食では足りない栄養を補うためのミルクとなっています。
離乳食だけでは、不足しがちな鉄分はもちろんその他のミネラルなどの栄養素をとることができます。
赤ちゃんはだんだんに食べることができるようになってきますが、離乳が順調でない場合は特に栄養摂取に限界があります。
そんな足りない栄養素を補うために、フォローアップミルクを活用した方がいい場合もあります。
フォローアップミルクは母乳代替食品ではなく、離乳が順調に進んでいる場合は、摂取する必要はない。離乳が順調に進まず鉄欠乏のリスクが高い場合や、適当な体重増加が見られない場合には、医師に相談した上で、必要に応じてフォローアップミルクを活用すること等を検討する。
授乳・離乳の支援ガイド:厚生労働省
このように、必ずしもフォローアップミルクを活用しなければならないわけではありません。
健診や保険センターで相談を
健診などでも相談はできますので、「うちの子は成長が遅いけど…大丈夫かな?」など不安がある場合に、まずは信頼できる専門機関に相談することをオススメします。
健診に関してはこちらのサイト:乳幼児健康診査の内容を参照にしてみてくださいね。
3・4ヶ月健診から離乳食の相談などを行っています。その後も6・7ヶ月健診、9・10ヶ月健診と健診の度に相談できるので、活用してみましょう。
また、健診まで待ちきれない場合は、地域の保険センターなどに問い合わせて相談することもできます。保険センターは保健師や看護師など専門職の方がいるので、安心ですね。
まとめ
乳幼児期の貧血は発達障害など身体や脳にとって様々な悪影響を及ぼします。そのうえ、生後6ヶ月頃からは貧血のリスクが高いため予防が必要です。
離乳食で鉄分を補うようにしたり、離乳がすすまない場合は相談したうえでフォローアップミルクを利用するなどで貧血は予防できるので、できることを実践してみることをオススメします。