今日も皆さんと一緒に発達障害等に関する学びや情報交換の場所なることを願って投稿させて頂きます。
今日のトピックは「発達障害と視覚優位」についてです。
今回は耳で聞くよりも目で見て理解することが得意な「視覚優位」についてお伝えします。
発達障害があり、人の話をなかなか理解することができないと悩んでいる方は、もしかしたら視覚優位にあてはまるかもしれません。
ここでは視覚優位の特徴や対処方法などを詳しくお伝えしますので、ぜひ日々の生活の参考にしてみてください。
目次
視覚優位とは
認知特性のひとつである視覚優位
人が見たり聞いたりした情報を認知する方法は、その人により特性があります。そのことを「認知特性」といいます。
認知特性は、6つのパターンに分類することができ、その中の2つが視覚優位に該当します。
【視覚優位者】
①写真(カメラアイ)タイプ
写真を撮ったように記憶し、二次元で思考する
②三次元映像タイプ
映像を撮ったように記憶し、時間軸もつかって三次元で思考する
【言語優位者】
③言語映像タイプ
文字や言葉のイメージから映像化して思考する
④言語抽象タイプ
文字や文章を図式にあらわして思考する
【聴覚優位者】
⑤聴覚言語タイプ
文字や文章を音として情報処理する
⑥聴覚&音タイプ
音色や音階など、音楽的なイメージを脳に入力する
視覚優位とは、この6つの中の①か②のタイプのことをいいます。
このように、人は情報を認知する際に、目で見て情報をとりいれるのが得意な方もいれば、耳で聞いて情報をとりいれるのが得意な方もいます。
何かの情報を伝える際は、それぞれの特性にあわせて伝え方を工夫することによって、同じ情報でも伝わりやすさに差が出ます。
そして、発達障害のある方も、この6つのタイプのうちどれにあてはまるかを理解することによって、情報をとりいれる際の最適な方法を考えることができます。
参考書籍:医師のつくった「頭のよさ」テスト 認知特性から見た6つのパターン
著者:本田 真美、出版社:光文社新書
価格:814円(2020年11月現在)
認知特性の調べ方
ご自分がどのタイプに当てはまるのかすぐにわかるという方もいると思いますが、なかなかはっきりとはわからないという方も多いのではないでしょうか。
そんな方のために、ご自分がどのタイプにあてはまるのかを詳しく調べることができるツールがあります。
こちらのツールでは、40問の質問に答えることで、ご自分がどの認知特性にどのくらいの割合で当てはまるのかを詳しく調べることができます。
それぞれの認知特性ごとに該当する割合が細かく表示されるので、その人ならではの特性を知ることができます。
質問自体は誰にでも答えることのできる内容で、とても簡単に調べることができます。
所要時間は10分程度なので、ぜひみなさん診断してみてください。
参考書籍:あなたの才能が10分でわかる40問テスト
著者:本田 真美、出版社:自由出版社
価格:1,100円(2020年11月現在)
発達障害のある視覚優位者の特徴
では、認知特性の中で、視覚優位に当てはまる場合、どのような特徴があるのでしょうか。
具体的にみていきましょう。
聴覚優位についてはこちらをご覧ください。
視覚優位者の特徴
視覚優位の方は、情報を認識・理解・記憶する際に、耳で聞く方法よりも目で見る方法を得意としています。
具体的には次のような例があげられます。
・先生の話を聞くよりも、黒板の文字や教科書を見た方が理解しやすい
・言葉で説明されるよりも実演を見た方が理解しやすい
・言葉で道案内をされるよりも地図を見た方が理解しやすい
・文章よりもイラストや写真の方が理解しやすい
・過去のことを思い浮かべる際に、写真や動画のようなイメージが頭に浮かぶ
・人の顔を覚えるのが得意
・言葉で伝えるのが苦手
このように、視覚優位の方は頭の中に写真や動画のようなイメージが浮かびやすく、目で見えるものを理解したり記憶したりすることが得意です。
反対に、口頭だけで説明を受けることや、スラスラとスムーズに会話をすることなどが苦手です。
では、発達障害のある視覚優位の方は、実際にどのような状況なのでしょうか。当事者の声を聞いてみましょう。
発達障害のある視覚優位者の実情
発達障害のある視覚優位者の場合、口頭でのスムーズなコミュニケーションが難しい傾向にあります。
実際にどのような場面で苦労されているのか、いくつか実例を紹介します。
このように、発達障害のある視覚優位者の場合、耳で聞いた情報をすぐに理解することが難しいため、スムーズなコミュニケーションをとることが困難な傾向にあります。
耳でとりいれた情報を図や文字に変換しなければ理解できないという場合もあるため、ひとつの情報を理解するまでにある程度の時間を要します。
では、発達障害のある視覚優位の方が日常生活を過ごしやすくするために、どのような工夫ができるでしょうか。
まずは実際の声を聞いてみましょう。
視覚優位の場合にできる工夫
発達障害のある視覚優位の方の場合、他人とのコミュニケーションの場面において困難が生じる場合があります。
そのため、日常生活を過ごしやすくするためには工夫が必要です。
実際にどのような工夫をされているのか、当事者の声を聞いてみましょう。
発達障害のある視覚優位者がしている工夫の実例
このように、日常生活や社会生活を問題なく送るために、自らの特性に合わせてさまざまな工夫をされています。
これらの実例を含め、発達障害のある視覚優位の方ができる工夫についてまとめてみましょう。
・視覚優位であることを周りの人に伝え、コミュニケーションの取りやすい方法をお互いに理解しておく
・電話だけではなくメールを活用する
・いつでも図式化できるようにノートなどを持ち歩く
・障害の特性にあった役割を分担する
・手話を活用する
・テレビや映画を見るときは字幕を入れる
・余計な情報が入らないように、身の回りを整理整頓する
・パソコンの画面上は必要のあるもののみ表示させる
視覚優位は脳の特性によるものなので、いくら努力をしたからといって克服できるものではありません。
視覚や聴覚の刺激に慣れる努力をするのではなく、視覚優位の特徴を活かした環境をつくることを心がけましょう。
「見る力」を活用しよう!
このように、日常生活を過ごしやすくするためには、視覚優位の特性をしっかりと把握し、あらかじめ周りの理解を得ておくことが重要です。
視覚優位の特性を理解しておけば、得意とする見る力を生活のさまざまな場面で活用することもできるのです。
例えば、視覚優位の方が得意な見る力を活かし、聴覚優位の方が得意な聞く力を活かすことで、お互いに得意な仕事を役割分担することができます。その結果、ひとりでは決して成し得なかった大きな成果をあげることも可能になります。
視覚優位は決して悪いことではなく、むしろ長所としてそれを活かすことも可能です。できないことばかりに目を向けるのではなく、できることに注目して、どんどんその力を活用していきましょう。
視覚優位の方にオススメの書籍
視覚優位の方の中には、文字を読むのが得意な方もいれば、文字だけでは理解しづらいという方もいます。
そのため、本を読む時もその方の特性にあった本を選ぶと情報が頭に入りやすくなります。
ここでは、視覚優位の方にも読みやすいオススメの本をいくつか紹介します。気になった本があったら、ぜひ手にとってみてください。
せいかつ絵カードずかん
絵:カモ、監修:岩澤寿美子、出版社:KADOKAWA
価格:1,628円(2020年11月現在)
こちらは、言葉と習慣がぐんぐん育ち、入園や入学準備に役立つ一冊です。
生活に役立つ絵カードが図鑑のように528枚つめこまれています。
親しみやすいタッチのイラストで、言葉だけでは理解しづらいお子さんや視覚優位の方でもわかりやすく生活習慣を身につけることができます。
コピーしやすいように、しっかりと開くように製本されている点も魅力のひとつです。
・自閉症の子どもがものすごく食いついて見ています。
・自閉症で並んでいるものが好きなので、カタログのようにパラパラとめくって楽しんでいます。
・コピーしやすいように配慮されているので、日常にとりいれやすいです。
なし
14歳からの発達障害サバイバルブック 発達障害者&支援者として伝えたいこと
著者:難波寿和、出版社:学苑社
価格:1,980円(2020年11月現在)
こちらは、発達障害のある当事者である筆者が、「生きやすくなるための工夫とは何か?」を自らに問い続けて書きあげた一冊です。
イラストが多いため、視覚優位の方にも読みやすくわかりやすい内容です。
人生の中のさまざまな場面における対処法がわかりやすく書かれているので、困った時のガイドブックとして一冊お手元に持っておいてはいかがでしょうか。
・イラストが多いので、視覚優位の人にはすっと頭に入ってきやすいのではないかと思います。
・読みやすい!解りやすい! すごく納得のいく一冊です。
・見開きで簡潔です。パッと開いて、サッと流し読みもできます。
・内容が細かい部分もありますが、大ざっぱな部分もあり、参考にはなりませんでした。
・イラストが多すぎて、内容が薄かったです。
天才と発達障害 映像思考のガウディと相貌失認のルイス・キャロル
著者:岡南、出版社:講談社
価格:1,980円(2020年11月現在)
こちらは、視覚優位の代表としてガウディをとりあげ、人による感覚の違いについて実例をまじえながら詳しく解説している一冊です。
認知の偏りにより偉大な建築物を遺したガウディに触れ、発達障害の新たな可能性を探っています。
視覚優位だけでなく聴覚優位についても実例をとりあげ、それぞれの良さについて認識させてくれる画期的な書籍です。
・当事者研究としても、認知についての研究としても第一級の価値をもった書だと思います。
・なぜ人には違いがあるのか、こころから納得できる一冊でした。
・著者が発達障害者のため説得力があり、発達障害について知るには最適の本だと思いました。
・議論が堂々巡りになっている部分があります。
・ガウディを神格化しすぎていると感じました。
視覚優位の方にとって、読みやすい本にも個人差があります。
イラストが多い本や写真が多い本、表やグラフが多い本、文字だけの本など、本にはさまざまなタイプがあります。
もしも自然と目をひく本が見つかったら、ぜひ手にとってみてください。
そしてその本の印象を覚えておけば、また次の本を探す際に選び方の参考になるかもしれません。
まとめ
今回は、発達障害のある視覚優位者についてお伝えしました。
視覚優位の場合、どうしても口頭でのコミュニケーションの場面で苦労することが多く、苦手意識を持ってしまう方もいるかもしれません。
しかし、どんな方にも得意なことや苦手なことはあります。
苦手なことを悩むのではなく、得意なことを活かしてそれをカバーする方法を見つけてみましょう。
「見る力」は日常生活のさまざまな場面で心強い武器になるはずです。
言葉がうまく出なくても、「見る力」を活かした自分ならではの方法で周りとのコミュニケーションを楽しんでいきましょう。