昨今話題になっている発達障害ですが、私が勤務する病院でも子どもさんが発達障害であることから、その子育ての大変さや困難さを患者さんからお聞きすることがあります。
特に「ADHDでとにかく動くし他の子に乱暴してすぐケンカするんです」や「障害があるからどう対応したらいいのか困っている、疲れる」、「うちの子、他の子より落ち着きなくて、注意しても何度も同じことするし、もしかすると何か発達障害があるのかも。」など悩まれている方もいらっしゃいます。
そこで今回は同じようにADHDの子どもさんに悩んでいる方や、その疑いがあるのかもと思っている方の助けになれれば、と思い記事を書かせていただきました。
目次
発達障害の乱暴は親の対応で変わることご存じですか?
お子様に発達障害がありADHDと診断された、もしくはその可能性があり何か悪いことをしたときに何度同じことを言っても聞いてくれず、途方に暮れてしまうこともあるのではないでしょうか。
「この子にはいったいどう接したら事の良し悪しが伝わるのだろう」と悩んだり「私の育て方がダメなのね」と自分を責める前に、この記事を読みお母様の負担を軽減し、子どもさんもその子らしくすくすくと成長し日々の生活を送れることを願います。
では、そのためにはどうしたら良いのか?そんな疑問にお答えしていきたいと思います。
発達障害乱暴とイメージがあるADHDってどんな障害?
先ほどから耳にする「ADHD」ですが、発達障害乱暴と検索するとほとんどのサイトでこの単語が言葉が出てきます。
子どもさんの乱暴的な行為に悩まされているお母様であれば、もうすでにご存の方が多いのではないかと思いますが、そうでない方は「なんだそれは?」と疑問に思ったり、「聞いたことはあるけどよく知らない」という方もいらっしゃるはずです。
そこでまずはADHDの特徴についてご説明していきたいと思います。
乱暴的な印象のADHDの原因って何ですか?
日本語で「注意欠陥多動性障害」と言われており そもそもどうしてこのような障害になってしまうのでしょうか?
実は残念ながらその原因は未だ明確にはわかっていません。ですが有力な一説によると脳の機能的な問題があると言われています。皆さんもノルアドレナリンやセロトニン、ドーパミンという物質を耳にしたことがあるかと思います。
これらは脳内神経伝達物質と呼ばれ、人の感情や精神状態をコントロールするだけでなく記憶や運動にも大きく関与している物質達です。ADHDではこのノルアドレナリン、セロトニン、ドーパミンが正常量分泌されていないことが発症の要因と考えられています。
そう言われるとADHDの子がなぜ特徴的な問題行動をしてしまうのかうなずけますよね。
また、ADHDは遺伝的な要素もあり遺伝率は70%を超えるとの報告がされており、症状の出方には生育環境・家族背景などの環境的因子も大きく影響すると言われています。
そんなADHDは次の3つのタイプに分かれておりそれぞれの特徴をご紹介していきたいと思います。
「注意欠陥」が強いタイプ
集中して物事に取り組むことが難しく、学校の授業だけでなく遊びや活動でもその症状がみられます。また、ちょっとした刺激でその集中力が途切れて気がそれるので、話を聞いていられなかったり、すぐにその活動をやめて他のことに目移りしてしまう傾向も。
教室に貼ってある掲示物や飾りですらその子にとっては注意力が低下する原因になってしまうこともあります。
物忘れが多くすべきことさえも忘れてしまう、何度同じことを言っても注意不良なため同じ失敗を繰り返してしまう、なども挙げられます。
考えることや臨機応変にすることが苦手で、自分で計画を立てて行動するのも本人にとってはなかなか難しく、このタイプの特徴と言えるでしょう。
「多動性、衝動性」が強いタイプ
本人の意識とは別に身体が勝手に動いてしまい、落ち着いてじっとしていられない。考えたり自分の感情を抑えることが苦手なため衝動的で乱暴なちょっと怖い印象も持たれてしまいます。
わかりやすい例として、手足をそわそわと動かしてみたり、授業中でも思い立ったように急に動きだしそのままほかの事を始めたり廊下を走り回ってしまうことがあります。
おしゃべりな特徴もあるので他の人が話していても平気で割って入り、順番が守れないなど集団生活を苦手とします。他の子から注意されたりすると衝動的になってケンカに発展しやすいことも
夢中になってしまうと周囲のことが見えなくなったり、「ここは登ったら危険だ」という認識がないため、遊んではいけない場所や高いところにも平気で登って、周りの心配をよその本人は楽しそうにしていることもあります。
「注意欠陥と多動性、衝動性」の混合型タイプ
前述したそれぞれの特徴が混ざっているタイプで、どちらの特徴が強く出るかは人によって異なります。
発達障害で乱暴しちゃう子どもにはどう対応すべき?
発達障害がありしかも乱暴してしまうその原因が脳に異常があるからと、子どもが何か悪いことをしたときに無視してしまうことは一番良くありません。
ADHDの子もきちんと学習する能力はあります。ただその学習方法がほかの子と少し違っていたり時間を必要とするだけ。
そこで今回はどのようにしたら子どもに事の良し悪しが伝わりやすいのかをお伝えします。
子どもの言動を観察してみましょう
例えば、子どもがケンカをしたとしてそれはどんな状況であり、相手にどんな言葉を言われた・どんなことをされたのかなどを知っていきましょう。確かに感情のコントロールは苦手ですが、爆発してしまうきっかけやポイントには何か共通点があったりします。
そして、そのケンカをしたとき子どもは泣くのか、乱暴をして相手を傷つけてしまう行動にでるのか、自分に当たってしまうのか…などその反応も様々です。
もちろんケンカをした時だけでなく、他にも何か問題行動を起こしてしまった時の場面や環境にも注目してみてください。
子どもにどうやってダメなこと伝えたらいい?
子どもが何か問題行動を起こした時に、子どもを観察すると同時に親である自分はどう対応したのかも考える必要があります。
ただ叱るだけではADHDの子どもにはその行為が悪いことだという事が伝わりにくく、ここで親が感情的になってしまうと、火に油を注ぐように子どもはもっと感情的に反応してしまいます。まずは親自身が落ち着いて冷静に、そして子どもの熱が冷めるのを待つのも大切なポイントです。
「~したらダメ」と頭ごなしに注意するだけでなく「~した方が良いよ」と言い方を変えるのも効果的です。
また、ADHDの子どもには視覚的なアプローチも有効な方法だと言われています。言葉で伝えてもすぐに忘れてしまったり、目で見た方が理解しやすいのです。○や×を書いたカードを準備したり、伝えたいことをイラストにして見せるのも良いでしょう。
怒るだけではダメ!きちんと褒めてあげましょう。
何か悪いことをした時に怒るだけではなく最後にきちんと褒めてあげることが大切です。これは怒った後だけでなく、その子が何か約束を守ることができたり良いことをした時にもです。
他の子と比べてADHDの子にとって「できて当たり前」のことはないのかもしれません。どんなに些細なことでも本人は頭や心の中で必死に葛藤しながら、どうしてこれはダメなのか、自分はこれがいけなかったのかを頑張って考えています。
ですのでADHDの子どもには特に褒めたり認めてあげることがとっても重要。ちょっとした小さなことでも褒められるとそれが習慣化し子どもの成長に繋がるのです。
発達障害があるって悪いことばかりではない
発達障害があるとどうしてもマイナスなイメージを持たれたり、悲しいことに、なかには優劣をつけられてしまうこともあるかと思います。我が子を信じたい親でさえ悲嘆したくなることあるはずです。
ですが、発達障害があるからこその特性=個性は必ずあります。将来の仕事にさえ生かせることがあるんです。
そんな先のことまで⁉と思ってしまうかもしれませんが、小さい頃からその子の個性を考えたり没頭できる好きなことを見つけてあげることはとても大切なんです。
ADHDの長所はこんなところ
集中力がないと言われていますが、自分が興味を持つものには抜群の集中力を発揮します。これってもはや一つの才能とも言えます。
新しいものに対するアンテナも高く好奇心旺盛。思い立ったらすぐ行動するアクティブ派です。しかも多動性ということから人よりエネルギーが培われているので疲れにくいのも長所だと考えられます。
また、乱暴者なイメージからがさつだと思われがちですが、本人の心は変化にとっても敏感で繊細。本当はとても優しく正義感も強いのです。発想力豊かでユーモアもあり才能肌だとも言えるかもしれません。
ADHDでも将来はちゃんと適任の仕事がある
先程も述べたようにADHDの人は興味や関心があることに対しての集中力はピカイチ、没頭するように勉強することができます。本人はそれを苦とせずにできるので、興味・関心のあることが見つかればとても強みになります。
エンジニア・研究者のような専門性の高い職業などではその特性が十分に発揮できるのではないでしょうか。
また、その発想力からデザイナーやイラストレーターなどクリエイティブな仕事にも向いています。普通の人では考えつかないようなアイディアをポンポンと生み出し、特性=個性を活かした作品や企画を作ることができるでしょう。
まとめ
発達障害の一つであるADHDはその特徴から落ち着きがない乱暴者なイメージを持たれ、周囲から本人が悪いと思われるだけでなく親のしつけが悪いと勘違いされてしまうこともあります。
普通の子どもを育てるだけでも大変な労力とエネルギーを必要とし、しつけや教育が一筋縄ではいかない発達障害のお子さんの子育てはもっと大変です。そして、障害だからといって何か悪いことや問題行動を起こしたときに、その言動をそのままスルーしてしまうのは本人にとっても周囲の人にとっても良くありません。
大切なのは悪いこと、してほしくないことをどうやって伝えていくかです。また、悲観的になるばかりではなく、障害だからこその特性や個性があると考え、良い部分を伸ばしてあげることも重要であり可能です。
興味・関心のあることにどんどんチャレンジして、その子が生き生きとする場面や時間が増えると素晴らしく明るい将来も考えることができると素敵ですね。
ご拝読ありがとうございました。