今日も皆さんと一緒に発達障害等に関する学びや情報交換の場所なることを願って投稿させて頂きます。
今日のトピックは「発達障害と臨床心理士」についてです。
今回は発達障害のある方にとって心強い味方である臨床心理士について紹介します。
さまざまな場面で能力を発揮する臨床心理士の役割について知り、臨床心理士と関わる今後の機会に十分に活かしていきましょう!
目次
発達障害者と臨床心理士の関わり
発達障害のある方は、臨床心理士とどのような場面で関わりがあるのでしょうか。
臨床心理士の役割に触れながら、くわしくみていきましょう。
臨床心理士の面接療法における発達障害者との関わり
臨床心理士の役割のひとつに「臨床心理面接」があります。
発達障害のある方と臨床心理士が関わる場面は、主にこの面接の場面となります。
臨床心理面接では、臨床心理学をもとにさまざまな専門的な技法を用いて面接を行います。
その対象は発達障害のあるご本人だけではなく、その相談に訪れた保護者の方も含まれます。
まずは保護者の相談内容を受けとめ、具体的に対処方法を説明します。そして、当事者であるご本人に指導を行っていきます。
お子さんに対する指導には、次のようなものがあげられます。
・発達上の遅れや偏りに働きかけるもの
・生活の中での具体的な問題行動の改善をめざすもの
・社会性の問題に焦点をあて、人とのやりとりをうながすもの
参照:一般社団法人日本臨床心理士会
このように、臨床心理士は臨床心理面接をとおして、心に関するさまざまな面からアプローチしていきます。
心理士の方が実際の役割について説明された動画があるので、ぜひ参考にご覧ください。
そして、実際に心理面接を受けた発達障害のある方からこんな声もあります。
臨床心理面接は一度きりで終わるものではなく、1年や2年といった長期にわたることが一般的です。
臨床心理士は長い時間をかけて、発達障害に悩むご家族全体とじっくり向き合っていきます。
では、このように家族全体と長い期間関わりをもつ臨床心理士とは、どのような職業なのでしょうか。
臨床心理士の役割について、くわしくみていきましょう。
臨床心理士の役割
「心の専門家」臨床心理士とは
日本には心の問題にアプローチする職業として、カウンセラーや相談員などさまざまな名称で呼ばれる人々がいます。しかし、それらに明確な資格はなく、専門性を判断することは難しいと言えます。
これに対し、臨床心理士は認定を受けるためには試験に合格する必要があるため、専門性が証明された資格と言えます。
「臨床心理士」は、公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会が実施する試験に合格し、認定を受けることで取得できる“心理専門職の証”となる資格です。
引用元:公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会
臨床心理士は臨床心理学にもとづいて知識や技術を活用し、人の心の問題に取り組む「心の専門家」といわれています。
医師や教師に専門的な役割があるように、臨床心理士にも人の心に専門的に関わるという役割があります。
臨床心理士は相談者自身の固有の価値観を尊重し、その方の自己実現をお手伝いする専門家です。
では、臨床心理士の役割とはどのようなものでしょうか。
具体的にみていきましょう
臨床心理士の4つの役割
臨床心理士には4つの役割があります。
それぞれの役割についてくわしく紹介していきます。
(1)臨床心理査定
臨床心理査定とは、さまざまな心理的なテストや観察面接をとおして、それぞれの独自性や個別性、問題点などを明確にすることをいいます。
また同時に、心の問題で悩む相談者を援助する最適な方法について考え、他の専門家とともに検討を行います。
(2)臨床心理面接
臨床心理面接は臨床心理士の仕事の中でもっとも中心となる専門的な行為です。
臨床心理面接とは臨床心理士が臨床心理学的技法と呼ばれるさまざまな専門的な方法を用いて相談者と面接をすることを言います。
具体的には、精神分析、遊戯療法、クライエント中心療法、行動療法、箱庭療法、認知療法などこの他にもさまざまな療法があり、相談者の心の支援をするために行う専門的な行為です。
この臨床心理面接をとおして、「共感」「納得」「理解」「再生」といった心情が生まれ、臨床心理士と相談者との間に信頼関係が構築されます。
(3)臨床心理的地域援助
臨床心理的地域援助とは、地域住民や学校、職場など、地域の方々の心の健康などを支援する活動のことをいいます。
特定の個人を対象とするだけではなく、コミュニティ全体を考慮して情報を整理したり環境の調整を行ったりします。
また、健全な生活環境の発展のために、心の問題に関する情報を提供したり提言したりする活動も行います。
(4)上記(1)~(3)に関する調査・研究
臨床心理士は面接や援助活動をより専門的に行うために、日々調査や研究活動を行っています。さまざまな問題の調査や事例研究などを行い、技術的な手法や専門知識の修得に励んでいます。専門的な資質の維持・発展のために、とても重要な専門業務と言えます。
このように、臨床心理士は心の問題にアプローチするために、さまざまな業務を行っています。
では、臨床心理士は実際にどのような場所で働いているのでしょうか。
臨床心理士の活躍する場所についてくわしくみていきましょう。
臨床心理士の活躍する場所
臨床心理士は次のようにさまざまな機関で活躍しています。
国や地方自治体の公的機関
臨床心理士は公的な機関のさまざまな窓口に配置されています。
具体的には次のような場所があります。
- 保健所
- 精神保健福祉センター
- 児童相談所
- 療育センター
- 女性相談所
- 教育相談所
- 家庭裁判所
- 少年鑑別所
- 警察の青少年相談室
- 犯罪被害者相談窓口など
これらの機関は公的な機関であるため、原則無料で相談をすることができます。
発達障害のある方がこの中で対象になるのは、一般的には保健所、精神保健福祉センター、児童相談所、療育センター、教育相談所です。
それぞれの窓口には臨床心理士以外の専門職が配置されていることも多く、さまざまな職種と連携して、総合的に相談を聞いてもらうことができます。
医療機関
臨床心理士は医療機関のさまざまな窓口にも配置されています。
具体的には次のような場所があります。
- 総合病院
- 精神病院
- 診療所
- 精神科
- 心療内科
- 小児科など
病院の中に相談室を設置しているケースもあります。
こうした医療機関では、医療の一環として心理検査やカウンセリングを受けることができます。
あわせて医師の診察も行われるため、医療の対象となる症状のある方には安心できる相談先といえます。
学校や企業内の相談窓口
最近では、学校や企業にも臨床心理士が配置されていることがあります。
具体的には次のような場所があります。
- 学生相談室(スクールカウンセラー)
- 企業内のメンタルヘルス相談室など
このような窓口では、学校や職場での生活に関する相談だけでなく、家庭での問題など幅広く相談をすることができます。
また、医師やそのほかの専門職とも連携して、その方の状況にあわせた総合的な支援を行っています。
その他
この他にも大学附属の相談機関や公共職業安定所、私設心理相談機関など、臨床心理士の活躍の場は多岐にわたっています。
では、このようにたくさんある相談先の中から、発達障害のある方が臨床心理士に相談できる場所を選ぶには、どのようにすればよいのでしょうか。
具体的な方法についてみていきましょう。
発達障害者が臨床心理士に相談するには
お子さんに発達障害の可能性がある場合、自治体の乳幼児健康診査や就学時健康診断などの際にくわしく検査を受けるようすすめられる場合があります。
そのような場合には自治体の保健所などで面接の場が用意されることもあります。
しかし、小学校入学以降は、ご自身で相談する機関を探す必要があります。
相談先を選ぶ際、どの機関を選べばよいかわからないという方は、まずは自治体の総合相談窓口に問い合わせてみましょう。
そのご家族の状況にあわせて、適切な相談先を紹介してもらうことができます。
また、ご自身で相談先を探したいという場合には、一般社団法人日本臨床心理士会のHPから臨床心理士に相談できる場所を探すことができます。
お住まいの地域や年齢にあわせて検索することができるので、ぜひ一度のぞいてみてください。
臨床心理士になるには
これまで臨床心理士の役割や相談できる機関についてお伝えしてきましたが、そもそも臨床心理士の方たちはどのような過程を経て臨床心理士になったのでしょうか。
臨床心理士になる方法についてくわしくお伝えします。
臨床心理士試験の受験資格
臨床心理士の試験を受験するためには、受験資格を満たす必要があります。
主な受験資格は次のとおりです。
・指定大学院(1種・2種)を修了し、その他の条件を満たしている者
・臨床心理士を養成する専門職大学院を修了した者
・医師免許があり、免許取得後に心理臨床経験が2年以上ある者など
このように、臨床心理士の試験は誰でも受験できるわけではなく、試験を受けるためにも受験資格を満たす必要があります。
臨床心理士試験の受験
臨床心理士になるには、受験資格を満たした後に試験を受ける必要があります。
臨床心理士の試験には一次試験(筆記)と二次試験(面接)があります。
・多肢選択方式試験:100題のマークシート(2時間30分)
・論文記述試験:定められた字数内で論述する(1時間30分)
口述面接試験:一次試験に合格した者のみ受験可能。2名の面接官によって実施。臨床心理士の専門知識だけでなく、姿勢や態度など専門家として備えておくべき人間関係能力なども重視される。
これらの試験の合格率は例年60%~65%前後といわれています。
大学院などで専門的に学んできた人しか受験できない試験であるにもかかわらず、合格率は高いとはいえないので、とても難しい試験であることがわかります。
臨床心理士資格交付・登録
試験に合格したあと、臨床心理士になるには資格認定証の交付手続きをする必要があります。所定の手続きを期日までに完了させると、最終的に臨床心理士に認定されます。
そして、日本臨床心理士名簿一覧に登録をすることで、臨床心理士有資格者として社会的に公開されることになります。
このように、臨床心理士になるにはさまざまな手順や労力が必要であり、とても簡単ではないことがわかります。
臨床心理士になるという強い意思がなければ、資格を取得することは難しいのではないでしょうか。
臨床心理士はそれだけ強い意志や深い専門知識を備えた専門家であるといえます。
臨床心理士についての本
臨床心理面接を実施するにあたって、臨床心理士はどのような準備をしているのでしょうか。
発達障害のあるお子さんとその保護者の方にとっても、臨床心理士とはどのようなものかをあらかじめ知っておくと、面接の際に参考にすることができます。
ここでは、臨床心理士の仕事についてくわしく知ることができる書籍をいくつか紹介します。
子どものこころ・発達を支える親子面接の8ステップ―安全感に根差した関係づくりのコツ
こちらは、面接を具体的にどう進めるかを示したガイドブックのような一冊です。
著者:井上祐紀
出版社:岩崎学術出版社
価格:2,750円(2020年12月現在)
・理論と実践に分かれており、非常に振り返りやすい構成になっています。
・具体例が豊富で非常に実用的な本です。
・キレイゴトではなく、実際にどうするかを示した実用的な内容です。
なし
発達が気になる幼児の親面接 支援者のためのガイドブック
こちらは幼児の親面接を行う全ての専門家が知っておくべき内容を、わかりやすい解説と23の支援事例を通して学ぶことができる一冊です。
著者:井上雅彦、原口英之、石坂美和
出版社:金子書房
価格:2,530円(2020年12月現在)
・具体的な事例が書かれているので、とてもイメージしやすかったです。
・保護者との面接についてとても丁寧に書かれているので、面接前に読んで学んでおくことをオススメします。
・保護者とどう向き合い、どう支援していくか、基本を示してくれる良書です。
なし
先輩に聞いてみよう!臨床心理士の仕事図鑑
こちらは臨床心理士の仕事について、11人の現役臨床心理士がその魅力について実例をまじえて語った本です。
著者/編集:植田健太、山蔦圭輔
出版社:中央経済社
価格:1,650円(2020年12月現在)
・臨床心理士の仕事が具体的によくわかりました。
・どのように相談者をケアしているのか、生の声がわかり、非常に興味深い内容でした。
・さまざまな場面で臨床心理士が活躍していることがわかりました。
なし
このように、臨床心理士が臨床心理面接の際にどのようなことを意識しているのかを、本をとおして知ることもできます。
臨床心理士を目指している人だけでなく、臨床心理面接を受けるにあたって不安に思っている方にとっても、参考になるのではないでしょうか。
まとめ
今回は、発達障害者の心強い味方である臨床心理士についてお伝えしました。
これまで深くは知らなかった臨床心理士の役割について、少しでも理解していただけたら幸いです。
臨床心理士は「心の専門家」といわれているように、相談者の心へあらゆる側面からアプローチをして支援をしてくれます。
それは本人のみならず、家族の心も対象です。
もしも発達障害のあるお子さんのことで、気になることや悩んでいることがある場合は、臨床心理士という「心の専門家」に相談してみると解決に向けて支援をしてもらえるかもしれません。
専門的な心強い味方を増やして、日々の悩みを少しでも軽くしていきましょう!