今日も皆さんと一緒に発達障害等に関する学びや情報交換の場所になることを願って投稿させて頂きます。
今日のトピックは「発達障害の方は不安が強いのか」についてです。
発達障害をお持ちの方で、特に自閉症の方は、予定の変更や見通しの立たないことに対して不安が強い傾向にあります。
また、特定の感覚への過敏性も不安を強く感じる一つの要因です。
この不安が行き過ぎると、”不安障害”など疾患名がつく場合もあります。
不安障害とは一体どんな障害なのでしょうか。発達障害の方が不安を感じやすい理由と併せて考察、調査してみました。
目次
発達障害の人は不安が強い?
発達障害の中でも自閉症スペクトラム障害の傾向のある人は、社会の中でも自分を異質な存在と認識してしまい、不安を昂じてしまいやすいといわれています。
また、ADHDの方は、脳内報酬系の経路が活性化しにくいという報告があります。
つまり、刺激がたくさんある時は調子がいいのですが、刺激がなくなると途端に不安になる傾向があるということです。
このような傾向からして、発達障害の人は、不安障害になりやすいと言われています。
不安障害とは
不安障害とは、精神疾患の中でも不安を主症状とする疾患群をあつめた名称です。
パニック障害や恐怖症、強迫性障害など、原因が強いストレスや、体の病気や物質によるものなど、様々なものが含まれています。
中でもパニック障害は不安が形になって現れるという点で、典型的な不安障害と言えるでしょう。
どんな症状があるの?
不安障害の症状は、文字通り強い不安です。
はっきりとした理由がないのに強い不安を感じる、または、理由があってもそれに不釣り合いなほどの不安を抱くことを特徴としています。
その不安が継続的に続く、または、繰り返し起きたりします。
うつ病とかなり症状が似ているのですが、正確には異なる疾患になります。
不安障害は、発達障害やうつ病と合併する可能性がとても高いと言われています。
パニック障害・不安障害
○原因・発症の要因不安障害の原因は、まだ十分には解明されていません。どんな病気もそうですが、精神障害の発症には、生物学的(身体的)、心理的、および社会的要因がいろいろな度合いで関わっています。
引用元:厚生労働省 みんなのメンタルヘルス
不安障害になりやすい人の特徴
- 緊張しやすい
- まじめな性格
- 食生活が乱れている
- 睡眠不足
- 運動不足
不安障害になりやすい人の特徴として、緊張しやすい人がなりやすいと言われています。
例えば、電車やバスなどの公共交通機関に乗っているときの人混みや閉鎖空間が苦手で緊張してしまう人はなりやすいようです。
また、食生活も関係しています。暴飲暴食、アルコールやカフェインの取りすぎが不安障害の原因ではないかという研究もあるようです。
暴飲暴食などを繰り返すとメンタルにも影響がありますので、バランスの取れた食事をすることをおすすめします。
また、運動不足になることで、体が不調になってしまい、心まで不調になってしまう可能性もあります。
不安に負けない体づくりをしていきましょう。
下記の動画で、不安障害の一種であるパニック障害になったときに体がどうなっているのか、またパニック障害に対する対処法が詳しく説明されています。
発達障害と不安障害
二次障害として不安障害がでることも
発達障害と不安障害は、非常に区別がつきにくいと言われています。
両方とも、日常的な不安など多様な不安を抱えて生活している点が共通しているからです。
また、発達障害の二次障害として不安障害が現れることがあります。
二次障害とは、発達障害の特徴が引き起こす二次的な障害のことです。二次障害については以下の記事を参考にしてください。
先述したように発達障害がある人は、不安が強い傾向にあるので、不安障害を併発する可能性が高いのです。
不安障害の治療法は?
発達障害は生まれつきの障害なので治療することは難しいですが、不安障害は対症療法や治療法が存在します。
不安障害の治療法は、薬物療法と、精神療法というものがあります。
それぞれどのような治療法なのか見てみましょう。
薬物療法
服薬により過剰な不安を抑える療法です。下記の種類の薬を服薬します。
SSRI
抗うつ薬の一種であるSSRIは不安障害の治療によく使われており、脳内物質セロトニンの濃度を高めることによって、不安を取り除きます。
SSRIは効果が出るまで2週間ほどかかるとされているので、長期的な服用が必要です。
抗不安薬
抗不安剤は脳内の神経物質に作用して、不安や恐怖を取り除くお薬です。
即効性はありますが、長期的な使用をすると依存症が現れるともいわれています。
一時的に症状が現れたときに服用することが勧められています。
精神療法
精神療法は、医師やカウンセラー、臨床心理士と共に、不安の元になっている考え方の傾向を変えていく治療法になります。
発達障害のある方は、不安障害に対する薬物療法の抗不安剤の投与では効果が出にくいという傾向がありますので、精神療法が勧められてるケースが多いようです。
認知行動療法
認知行動療法とは、不安に陥っている認知を客観的なものに変えていく療法です。薬物療法と同等の効果があるということで、最近注目されています。
たとえば、電車に乗ったときにパニック障害が起こってしまった場合、「動悸がひどく、このまま死んでしまうかもしれない」「窒息死してしまう」などの考えが頭に浮かんでくることがあります。
これを、自動思考といい、それによってさらなる不安や体の症状が悪化していく悪循環に入ってしまうのです。
認知行動療法ではこの「自動思考」に対して「そう考えた理由」や「自動思考に対する反証」を立てることによってより現実的でバランスの良い考え方を導き出します。
「動悸がひどく、このまま死んでしまうかもしれない」→「以前医師が動機は危険ではないと言っていた(反証)」→「このまま死んでしまうわけではない」(バランスの良い考え方)
といったイメージで、自動思考を矯正していくイメージです。
不安障害だけでなく、うつ病やそのほかの精神疾患の治療にも導入されています。
森田療法
森田療法は、精神科医であった森田正馬(もりたまさたけ)氏によって開発された神経症に対する精神療法です。
西洋医学に通じている「不安や恐怖を排除して治療する」という考え方とは逆に、森田療法は人々の葛藤や不安を「ありのまま」に受け入れるという考え方を基本としています。
森田療法は心療内科や精神科などで受けることができます。
ただし、森田療法を行っている医療機関は少ないので、事前に確認をとることをおすすめします。
患者さんが症状へのとらわれから脱して「あるがまま」の心の姿勢を獲得できるよう援助します。「あるがまま」の姿勢とは、不安や症状を排除しようとする行動や心のやりくり(「はからい」と呼ばれます)をやめ、そのままにしておく態度を養うことです。さらには、不安の裏にある、よりよく生きていきたいという欲望(生の欲望)を建設的な行動として発揮していくことをも意味しています。
引用元:東京慈恵会医科大学 森田療法センター
まとめ
今回は発達障害のある方で、不安が強い場合について、不安障害の可能性があることを調べてみました。
発達障害のある方は、不安障害を合併する可能性が高いことが報告されています。
不安障害になった場合は、一人で我慢をせずに心療内科や精神科に相談することをおすすめします。
薬物療法や精神療法を試してみて、自分に合う治療方法を探してみましょう。