今日も皆さんと一緒に発達障害等に関する学びや情報交換の場所なることを願って投稿させて頂きます。
今日のトピックは「認知行動療法は発達障害に有効?」についてです。
治療が難しいと言われている発達障害に対して、それでも何かできることはないかと悩んでいる方も多いと思います。もし、薬物療法以外の治療法をお探しの方は知っておきたい療法のひとつです。発達障害の症状によっては、認知行動療法が有効に活用できる可能性があります。
今回は認知行動療法について詳しくご説明しますので、うまく活用できるか検討してみてください。
目次
認知行動療法は発達障害にも利用できる
認知行動療法は、発達障害に利用できると考えられています。
「認知行動療法」と聞くと、難しそうなことをやりそうだな、と感じるかもしれませんが、カウンセラーと一緒にお話をしながら徐々にステップを踏んでいくものです。
患者さん一人ひとりに合わせた内容とペースで進めていくものなので、安心して行うことができます。
患者さん一人ひとりに合わせた内容とペースで進めていくものなので、安心して行うことができます。
では、どんな症状に対して有効なのか、なぜ認知行動療法が発達障害に利用できると考えられているのか、以下から説明をしていきたいと思います。
社会不安症などの精神障害に有効
認知行動療法は、以下のような不安障害や精神障害に有効だと考えられています。
- 社会不安症
- うつ病
- パニック症
- 強迫症 など
日本では、まだ症例が少ない認知行動療法ですが、イギリスなどの海外では多くのエビデンス(証拠・根拠)のデータがあり、精神障害に認知行動療法が有効であるという研究結果が出ています。
発達障害による病状は様々なのですが、不安症が併発している人や、二次障害でうつ病などの精神障害を発症する場合もあり、それらの障害の改善や予防にも期待されている療法です。
プログラム終了後の感想からは、「自信や勇気が持てるようになった」「色々なことに挑戦できるようになった」という ASD 児の感想や、「とても自己肯定感を持つようになった様子」などという ASD 児保護者の感想なども聞かれました。以上の結果から、CBT に基づく不安予防プログラムは、ASD 児を含む日本の小学校高学年児童の不安予防にとって有効である可能性が示されました。
引用元:認知行動療法による不安対処教育と発達障害への支援(PDF)
認知行動療法とは
まず、認知行動療法(Cognitive behavioral therapy 略してCBT)とは、人がそれぞれに持つ考え方のクセ(認知)と、その認知の上で成り立った行動をカウンセラーと一緒に振り返りながら、より良い解決策を見つけていく療法です。
例えば、「動物園に行く」という出来事に対して、
- Aさん:「可愛い動物に会えるのが嬉しいな」という気持ちになる
- Bさん:「動物の匂いが苦手だからいやだな」とストレスを感じる
という賛否の異なった意見が出る場合があります。
このように、同じ「動物園に行く」という出来事に対して、とっさに抱く考え方や感情は人によってさまざまなのです。
認知行動療法では、患者が抱く考え方のクセ(認知)を把握することによって、その後抱く感情や行動をコントロールできるようにする療法なのです。
具体的にはどんなことをやるの?
発達障害や精神障害の症状もさまざまですが、基本的な流れは以下の通りです。
認知行動療法の専門家(カウンセラー)と患者さんがお話をしながら一緒に進めていきます。ご自身のペースで行える療法なので安心してください。
- 患者さんの主訴(困っていること)や生活歴などを聞きながらカウンセラーとの信頼関係を築いていく。
- 患者さんは認知行動療法について、どのようなものなのか説明を受ける。
- 治療の終盤には、どのような状態になっていたいか、患者さんとカウンセラーの間で一緒に目標を決める。
- 各手法を用いて、患者さんの考え方のクセについて客観的に分析していく。
- では、どのような考え方をすればストレスが軽くなり、問題を解決することが出来るのか、行動しながら考え方のクセの修正を試みる。
認知行動療法の手法ってどんなもの?
認知行動療法には、症状に合わせてさまざまな技法があります。今回は代表的な技法の一部をご紹介します。
支持的精神療法
精神療法の基本でもある、”話を聞く”、”共感する”、”受け入れる”を主とした療法です。現在の不安な状況を言語化して聞いてもらうだけで不安の解消につながり、冷静な判断のきっかけとなることがあります。
ケースフォーミュレーション・コラム法
ケースフォーミュレーションでは、あらかじめ作成された表に、起こった出来事、その時生じた感情や行動などを自分の言葉で書いていきます。
コラム法では別の図表でさらに細かく分析していくことで、自分の考え方のパターンが見つかり、考え方のクセを見出すことが出来るのです。
曝露療法(ばくろりょうほう)
強迫症やパニック症の治療によく使われる手法で、不安の対象にあえて身を置いてみるという方法です。
家の鍵を閉めたか何度も確認するなどの症状がある強迫症の人は、あえて確認をしない状況を体験する「反応妨害(はんのうぼうがい)」も一緒に行うので、曝露反応妨害法ともいわれています。
ロールプレイ
”今困っている私”ではなく、”他の人”だったらどう考えるかな?と、違う人になったつもりで考えを述べていく練習です。自分とは違う考え方があることや、案外誰も気にしていないことなど、新たな価値観を見出すことが出来ます。
考え方のクセについてコラム法を行うなどして段階を踏んで行います。
認知行動療法のメリット・デメリットは?
認知行動療法が、自分のペースで行うことが出来る安心な療法ということが分かっていただけたかと思います。そこで、認知行動療法を行うことによって起こりうるメリットとデメリットをまとめてみました。
以下の内容も理解したうえで、認知行動療法を検討してみてください。
メリット
- 比較的短期間で症状を軽減できる
- ひとりでも行うことが出来る
- 副作用がない(生活をいい方向に向けるヒントは得られる)
- 頭の中、紙と鉛筆で行うことが出来る
- 再発しにくく、心の病になりにくい生活が送れる
デメリット
- 認知行動療法を受診できる施設が少ない
- 摂食障害や不眠症など、公的医療保険が適応されていない症状もある
発達障害であれば誰でも受診できる?
発達障害にも、個人によって症状や特徴はさまざまです。現在発達障害でお困りなことに対して認知行動療法が有効かどうか一度かかりつけ医に相談をしたほうが良いでしょう。
発達障害を患っている場合、ほとんどの方が精神科やメンタルクリニックなど病院に相談に行ったことがあると思います。まずは、通ったことのある信頼できる専門家に、認知行動療法について相談をしてみましょう。
そもそも、認知行動療法を受けるためには、専門家による病気の診断が必要で、さらに認知行動療法に適しているかどうか判断が必要になることもあります。
インターネットでご自身で認知行動療法の施設を探すこともできますが、相性の合う先生かどうか懸念されるため、一度かかりつけ医に認知行動療法を希望する意思を伝えてみましょう。
おうちでできる認知行動療法
認知行動療法は、障害の有無に関わらず、実生活のストレス軽減にも活用できる方法です。頭の中で考えてもいいですし、メモをとれる状態で行ってもいいでしょう。
- 今現在、自分がどんなことで悩んでいるのか考えてみる。
- その出来事に対して、とっさにどんな考えが浮かぶか考る。
- なぜ、2.のような感情が生まれたのか、自分の認知(考えのクセ)を探る。
- 自分の認知を一度受け止め、ではどんな考え方をしたら考え方の悪循環を断ち切れるか考えて、少しずつ行動に移してみる。
上記1~4に当てはめて考えてみると、
- 上司の対応が冷たく感じる。上司は他の同期には笑顔で接しているのに私にはいつも怖い。仕事がやりずらくてストレスが溜まる。
- 私は仕事が出来ないから、上司は私に興味を持たないのだろう。きっと私のいないところで私の悪口や文句を言っているに違いない。
- 仕事ができる人だけが、世の中で必要とされる。と思っている。
- 私は私のやるべきことをちゃんと出来ている。上司の機嫌に振り回されず、仕事に集中しよう。
3.と4.は時間をかけて実行していく項目です。他の人だったらどう考えるかな、この解決策は自分には合っている、合っていないなど想像しながら行動に移してみましょう。
まとめ
以上、認知行動療法について説明をしながら、発達障害に対する認知行動療法の有効性についてお話をさせて頂きました。
認知行動療法について詳しく知ることにより、発達障害によるさまざまな精神障害にも認知行動療法を利用できる可能性があります。発達障害の症状、現在の治療内容、かかりつけ医への相談を考慮して考えてみてください。