今日も皆さんと一緒に発達障害等に関する学びや情報交換の場所なることを願って投稿させて頂きます。
今日のトピックは発達障害の「クレーン現象」についてです。
子育てをしているとどうしても我が子を周りの同年代の子と比べてしまい、「あの子はもう歩いているのに、話せているのに……」と発達の違いで落ち込んだことが一度はあると思います。
ということで、この記事では「クレーン現象」する子は発達障害を持っているのか、またそのような行動が見られる子への接し方についてお伝えします。
目次
「クレーン現象」=発達障害ではない
まずは、「クレーン現象」とはなんなのか、解説していきます。
「クレーン現象」とは?
「クレーン現象」とは、乳幼児が自分の欲しい物などをとって欲しい時に、親や近くにいる人の手や腕を引っ張ってその目当ての物や場所まで持って行く行動のことです。
玩具屋で、子どもが欲しいおもちゃの場所までお母さんの手を引っ張って連れて行く。
周りの人から見ると微笑ましい光景です。しかしこの行動が発達障害を持つ子どもが示す特徴の一つである「クレーン現象」であるかもしれません。
しかし、健常児においても同様の行動をする場合があります。
見分けるポイントとしては、手や腕を引っ張って目当てに場所まで行く際に下記の行動を伴った時です。
・言葉を発さない
・目を合わさない
・指差しをしない
実際に「クレーン現象」を行なっている際の動画が下記になります。
「ジュースが欲しい時、親の手を引っ張って冷蔵庫に連れていく」といった行動をします。
「クレーン現象」をするとなぜ発達障害が疑われるのか
では、実際に「クレーン現象」はどんな発達障害に当てはまるのでしょうか?見ていきましょう。
どんな発達障害が疑われるの?
「クレーン現象」は自閉症スペクトラム障害(ASD)の子どもによく見られる特徴の一つと言われています。
対人関係が苦手・強いこだわりがあると言った特徴がある先天性の発達障害の一つであり、下記のような特徴があります。
・コミュニケーションが苦手
・強いこだわりがある
・言葉の遅れ、独特な言葉遣いがある
・手先が不器用
自閉症スペクトラム障害(ASD)について、詳しく説明されている記事が下記になります。
「クレーン現象」と「言葉の遅れ」の関係性
ネットで「クレーン現象」について悩んでいる方の相談を見てみると、
「2歳になる子がまだ1単語しか話せません。たまにクレーン現象のようなことをします。」
「1歳7ヶ月の子がクレーン現象します。話せる言葉も多くありません。」
といったように、多くの方が「クレーン現象」と一緒に、自閉症の特徴である言葉の遅れを心配しています。
あなたは目の前にいる相手に自分の要求を伝えるとき、どのような手段を取りますか?私がまず一番に思いつくのは「言葉」です。「〇〇してください。」といったように言葉にして相手に伝えます。
では、言葉が未発達な子どもはどうやって相手に自分の意思や要求を伝えるのでしょうか。
その方法として「指差し」と「クレーン現象」があります。
「指差し」は個人によって異なりますが、大体生後10ヶ月ごろから指差しを始めます。
周りに興味を持ち出し、言葉が出てくるようになるまで自分の意思を伝える手段として使います。
一方、「クレーン現象」は親にあれをして欲しい、これを取ってもらいたいと頭では考えることはできるけど、それをうまく言葉にできないから、親や近くにいる人の手などを使って自分の要求を表現します。
「クレーン現象」が自閉症の特徴と言われる理由
「クレーン現象」が自閉症の特徴であると言われる理由には、この「指差し」が関係してきます。
健常児の子が指差しでコミュニケーションを図ろうとする一方で、コミュニケーションを苦手とする自閉症の子は「指差し」をしないと言われています。
「指差し」の代わりに「クレーン現象」を頻発するため、自閉症の特徴であると言われているのです。
クレーン現象=自閉症とは言い切れない
自閉症と診断するには、「クレーン現象」だけでは判断がつきません。「クレーン現象」をしたからといって必ずしも自閉症であるとは言い切れないのです。
何故なら「クレーン現象」は自閉症の子だけではなく健常児の発達過程でも見られる現象でもあるため、「クレーン現象」をしたからといって一概に自閉症であるとは言えないからです。
上記の“「クレーン現象」とは?”の冒頭で「かもしれません」という語尾にした理由はここにあります。
初めて触る物が怖くて親に先に触ってもらおうと腕を持っていく。使い方のわからないものを親に教えてもらおうと手を引っ張り持たせようとする。
など「クレーン現象」のように見える行動も、実はこれらは健常児の行動なのです。
個人の発達速度は個々によって異なります。健常児でも言葉が遅い子も多くいます。
繰り返しとなりますが「クレーン現象」は、言葉を話せない子どもならし得る意思表示の一つとして考えてもおかしくないため、その現象をしたからといって早急に自閉症であるとは判断できません。
もし自閉症の可能性があれば、その診断は「クレーン現象」と上記で述べた自閉症の特徴を総合的に見て判断されます。
もし不安である方は、ネットで検索すると出てくる自閉症のチェックリストを実施してみてはいかがでしょうか?
参考:ADHD、アスペルガー、発達障害子育て支援サイトKidshug【キッズハグ】
クレーン現象はいつまで続く?
「クレーン現象」は健常児であれば3歳くらいまでに消失します。
中には、3歳半までクレーン現象を頻繁にしていた子どもも4歳になった現在はほぼしなくなったというご家庭もあります。
現象が消えたきっかけは、言葉を話し始めたことです。
このご家庭のような例を見ても子どもの発達速度は様々ということがわかりますね。
「クレーン現象」する我が子への関わり方
我が子の行動が「クレーン現象」だとわかったら、どのように対処するのが良いのでしょうか。くわしく解説していきます。
無理にでも辞めさせるべき?
我が子の「クレーン現象」、やめさせるべきなのかどう関わるのが正解かと不安になりますよね。
私の知り合いの子どもも「クレーン現象」しており、知り合いが無理にやめさせようと試みたけど全くやめなかったという話を聞いたことがあります。
無理にやめさせるのではなく、子どもの手をとり、一緒に目当ての物を指差ししたり、「◯◯が欲しいの?」と目当ての物の名称を言い、子どもとコミュニケーションを図りながら教えてみてはどうでしょうか。
「クレーン現象」する我が子への効果的な関わり方
続いて、効果的な関わり方を列挙していきます。
・物の名前を教える
子どもが「クレーン現象」をした時、「◯◯が欲しいの?」と子どもとコミュニケーションを図りながら目的物の教えてみてはどうでしょうか。
単語のレパートリーが増えることで「クレーン現象」が減ることに繋がります。
・指差しをする
親が普段から指差しをすることで、子どももそれを見て自然に身についていきます。
普段絵本を読みながら、「ワンワンがいるよ。」「くまさん可愛いね。」などと声かけをしながら指差しをしたり、「あっちの方から電車が来るよ。」「向こうにおもちゃがあるね。」と手の届かない場所にある物に指差しをして、指差しの使い方を教えてみてください。
不安になった時の相談先
・かかりつけ医
・住んでいる市区町村の保健センターや子育て支援センター
・児童発達支援センター
発達障害者支援センター(各都道府県)
都道府県毎に発達障害児に関する相談や支援に対する機関があります。
「教育・医療・福祉」等の関係機関と連携しながら、サポートしてくれます。
【神奈川在住の人】神奈川県の相談窓口
神奈川県では、相談専用電話で発達支援に関する相談を受け付けています。
- 電話:0465−81−3717
- 相談可能日時:平日の月曜日〜金曜日午前8時30分〜午後5時15分
保健師・臨床発達心理士による乳幼児期の発達に関する相談先
乳幼児期の発達に関する専門知識を持っている方に相談できます。
- 電話:0465−81−3717
- 相談時間:午前10時〜午後1時
相談日時について、年間予定表が神奈川県ホームページに記載されています。都合により変更する場合があるため、下記に神奈川県ホームページのサイトを載せています。
まとめ
- 「クレーン現象」はどんな発達障害が当てはまるのか?
- 感情をうまく言葉にできない自閉症
- 「クレーン現象」する我が子への効果的な関わり方
- 物の名前を教える
- 指差しをする
- 不安になった時の相談先
- 国立障害者リハビリテーションセンター
- 【神奈川在住の人】神奈川県発達障害支援センター
「え!?我が子のこれってもしかしてクレーン現象?発達障害かも…」と不安を抱いている方。大丈夫です、神経質になる必要はありません。
もし不安であれば3歳ごろまで様子を見て、こちらの伝える言葉をあまり理解していないようでしたら相談窓口に相談してみるといいでしょう。
発達はその子の個性です。あまり周りの子と比べすぎず、肩の力を抜きながら楽しんで我が子の成長を見守っていきましょう。