今日も皆さんと一緒に発達障害等に関する学びや情報交換の場所なることを願って投稿させて頂きます。
今日のトピックは「発達障害者の味覚過敏」についてです。
今回は、発達障害の方に多い味覚過敏の実情と、偏食でも食事をおいしく楽しむためのアイディアをいくつか紹介します。参考になるものがありましたら、ぜひ日々の食事にとりいれてみてください。
目次
発達障害者と味覚の関係について
味覚過敏とは
そもそも味覚過敏とはどのような状態でしょうか。
味覚とは
味覚とは人間の五感のひとつで、舌にものが触れた情報が脳に伝達されることにより感じる味の感覚のことをいいます。味の種類は「塩味」「甘味」「酸味」「苦味」「うま味」の5つがあるといわれています。
食べ物のおいしさの決め手となるものは味だけでなく「におい」「歯ざわり」「舌ざわり」「温度」「見た目」「自分の体調」などがあり、それらを総合して味を判断しています。
参照:e-ヘルスネット
味覚過敏とは
味覚過敏とは、味覚の刺激を過剰に感じる状態のことをいいます。
食べ物の味が極端に濃く感じたり、薄く感じたり、嫌な味に感じたりします。また、何も食べていないのに味を感じたり、何かを食べても味を感じなかったりすることもあります。
発達障害者が味覚過敏になりやすいのはなぜ?
脳の影響について
発達障害は、脳の一部の機能が通常と異なるためにおこる障害です。
この脳の機能の障害により、さまざまな感覚が過敏になりやすくなることを感覚過敏といいます。そしてその感覚過敏の中のひとつにあるのが味覚過敏です。
つまり、味覚過敏はあくまで脳の機能の影響によっておこるものであり、育ってきた環境や好き嫌いによるものではないということがわかります。
参照:e-ヘルスネット
味覚以外の感覚について
発達障害のある方は、味覚以外にもさまざまな感覚が過敏であることが多いです。
食べる時に使う「嗅覚」や「触覚」もその対象で、食べ物を食べる際には味だけでなく食感や匂いも過剰に感じることがあります。
「サクサク」は食べられないけど「しっとり」なら食べられるなど、特定の食材の食感が不快に感じたり、少しの味や匂いに過剰に反応することがあります。その結果特定のものしか食べられないというような偏食になりやすくなります。
では、味覚などの感覚が過敏であることにより、どのような苦労をされているのでしょうか。実際に味覚過敏である方たちの声を聞いてみましょう。
味覚過敏のある発達障害者の実際の声
味覚過敏による偏食に困る方の声
このように、味覚や嗅覚などの感覚が過敏であることにより、受けいれられる食事が限られており、偏食になっているという方が多くいます。
特定のものしか食べることができないという方や、ほんの少しの味にも敏感に反応する方、塩味と甘味を交互に食べるという方など、偏食のあらわれ方はさまざまです。
生きるために必要な食事ですので、生きていくためにはとにかく何かを食べる必要があります。しかし、食事内容が偏っていることにより、栄養の偏りなどが心配という方も多いでしょう。
このような偏食に対して、みなさんどのように工夫されているのか、実際の声を聞いてみましょう。
食事をおいしく楽しむための工夫
みなさんそれぞれの方の状況に合わせた方法で偏食に対処していますね。
どの家庭にも共通するのは、好き嫌いと決めつけて無理強いをするのではなく、発達障害の影響であることを受けいれて、ご本人の気持ちに寄り添っているということです。
ご本人にとっても、「食べる」ということが苦痛になってしまうと、毎日の食事の時間が辛い時間になってしまいます。
おいしいと思って食べられるものをいかに増やしていくか、長い時間をかけてじっくりと試行錯誤していく必要がありそうです。
偏食対応の参考になる書籍の紹介
発達障害のある方の偏食に対応するための本も参考になります。
代表的な本を2冊紹介します。
まず1冊目はこちらです。
発達障害児の偏食改善マニュアルposted with ヨメレバ山根 希代子/藤井 葉子 中央法規出版 2019年09月12日頃 楽天ブックスで探すAmazonで探す
「発達障害児の偏食改善マニュアル」ということで、まさに求めているような題名なのではないでしょうか。
偏食についての基礎知識から、それぞれの場面に応じた具体的な対応方法など、お子さんが楽しんで食事ができるようになるための方法が詳しく解説されています。
専門的な内容なので、親御さんだけでなく発達障害児の食事と関わる支援者の方にも定評があります。
続いて2冊目はこちらです。
気になる子の偏食posted with ヨメレバ西村実穂/水野智美 チャイルド本社 2014年07月 楽天ブックスで探すAmazonで探す
「具体的な対応がわかる気になる子の偏食」ということで、それぞれの子どもの偏食の原因を探り、それに合わせた具体的な対処方法を解説しています。
あきらめずに子どもに寄り添うというスタンスで、時間をかけてじっくりとお子さんと向き合いながら解決していくという内容です。
イラストつきで、わかりやすいレイアウトも人気の理由です。
偏食でも食事をおいしく楽しむための方法
このように、味覚過敏などによる偏食に悩んでいる発達障害の方でもおいしく食事を楽しむために、多くの方が試行錯誤しています。
当事者の方たちが実践している具体的な方法を整理すると、次のようになります。
食材の調理方法からのアプローチ
- 好きな食べ物の中に少しずつ食べて欲しいものをいれ、徐々に量を増やしていく。
- 刻む、おろす、ミキサーにかける、つぶすなどいろいろな方法で食感を変える。
- 食材の茹でかた、煮かた、炒めかたなど、調理の工程を工夫する。
- 本人が好きな調味料を使用する。
- 本人が好きな香りがするように調理する。
- 一度食べて気に入った食材をどんどんとりいれる。
ひとつの方法にとらわれず、ご本人に適した方法が見つかるまでいろいろと試してみましょう!
ひとつでも「これだ!」と思えるものが見つかると、グッと楽になるでしょう。
身体や気持ちの面からのアプローチ
- 食事の時間にお腹が空いている状態にする。
- 一緒に料理をすることで、食事に興味を持てるようにする。
- 一緒に野菜などを育てて食材へ親しみを持てるようにする。
- 絵本や紙芝居をみて、食事は楽しいということを印象づける。
- 楽しい会話の中で、おいしそうに食べる姿を見せる。
毎日の食事の時間を「楽しいもの」だと認識することが大切です。
無理強いはせず、ご本人のペースで行いましょう。
このように、食材の調理方法から食事の際の雰囲気づくりまで、幅広い面からアプローチをして工夫しています。
調理方法については、それぞれの方の好みにより、とりいれられる方法もあれば、まったく効果がない方法もあるかもしれません。
しかし、身体や気持ちの面からのアプローチは、楽しい雰囲気作りという観点から継続的に試してみてはいかがでしょうか。
味覚・嗅覚・触覚など個人により偏食になる原因はさまざまですが、世の中には同じように食事に悩み、試行錯誤している方がたくさんいます。ぜひ、他の方のアイディアをうまくとりいれて、お子さんの毎日の食事を楽しいものにしてください。
まとめ
味覚過敏のある発達障害者にとって、「食べる」ということは簡単なことではありません。口に入れるものが、自分にとって不快なものかもしれないという恐怖と日々たたかっています。
しかし「食べる」ということは、どんな人にとっても人生においてとても重要なことです。365日食べ物を食べることで、私たち人間は生きることができます。
今回は「食事をおいしく楽しむ」という観点で、味覚過敏などに悩む発達障害者の方たちの、実際の食事でのアイディアを紹介しました。
何かひとつでも実践したことがないものがあれば、ぜひとりいれてみてください。そして、毎日の食事の時間を少しでも楽しいものにしていきましょう!