今日も皆さんと一緒に発達障害等に関する学びや情報交換の場所なることを願って投稿させて頂きます。今日のトピックは「発達障害と理学療法士」についてです。
今回は、発達障害者にとっての理学療法士の役割についてお伝えします。
発達障害とうまくつきあいながら生活をするにあたって、理学療法士はとても重要な存在です。
理学療法士の役割を知り、運動機能についての悩みを解消していきましょう。
目次
発達障害者と理学療法士の関係
発達障害のある方の特徴として、「対人関係が困難であること」が強い印象を受けますが、「運動能力の遅れ」や「不器用さ」が目立つ方も多くみられます。
「姿勢が悪い」「まっすぐに座れない」「転びやすい」など、運動機能が未熟なことにより日常生活に支障をきたす場合に、理学療法士が運動療法を行う場合があります。
この運動療法の場面で、発達障害者にとって理学療法士が心強い存在となります。
理学療法士は具体的に次のような運動療法を行っています。
・おすわりやハイハイなどの基本動作の支援
・歩行や走行、階段ののぼりおりなどの支援
・動きのマネをしてもらう
・ジャングルジムなどの遊具で身体を使った遊びを行う
・キャッチボールを行う
・ボールをキックしあう
・バランスボールで体幹をきたえる
このような運動療法をとおし、理学療法士は発達障害のある方の運動機能の支援を行っています。
下記のツイートのように、理学療法士の支援を受けて、発達障害の気になる症状が改善されたという方もいらっしゃいます。
運動療法を行うにあたり、理学療法士の方が注意すべき点について説明した動画がありますので、ご覧ください。
このように、理学療法士は発達障害のある方に対し、個々の障害の状況を十分に理解した上で支援にあたっています。
個人差の大きい発達障害者にとって、個人の障害の状況を理解してもらうことは、とても重要なことです。
では、運動機能が未熟な発達障害者にとって心強い味方である理学療法士とは、どのような職業なのでしょうか。
理学療法士について、くわしくみていきましょう。
理学療法士とは
理学療法士はPT(Physical Therapist)とも呼ばれ、医学的リハビリテーションを行う国家資格です。
身体に障害のある人などに対し、運動療法や物理療法を用いて、基本的な動作能力の回復や障害の悪化予防などを目的として支援をしています。
具体的には次のような支援を行っています。
・基本動作(寝返りをする、起き上がる、立ち上がる、歩くなど)の改善
・関節・可動域の拡大
・筋力強化
・麻痺の回復
・痛みの軽減
・動作練習
・歩行練習
このように、理学療法士は身体の機能の回復や、悪化を予防する役割を担っています。
では、似たイメージのある作業療法士とはどのように違うのでしょうか。
作業療法士についてくわしくみていきましょう。
理学療法士と作業療法士の違い
作業療法士はOT(Occupational Therapist)とも呼ばれ、作業を通じてその人らしい生活ができるように支援をする国家資格です。
基本的な動作だけでなく、その人の生活に必要とする動作を回復できるよう支援しています。
理学療法士が身体の大きな動きの支援を行うのに対し、作業療法士は日常生活の細かい作業(食事をする・字を書く・顔を洗うなど)の支援を行うことが多く、精神分野でも活躍しています。
【理学療法士】
身体の大きな動き(座る・立つ・歩く)など、基本的な動作能力を支援
【作業療法士】
手先の細かい作業(食べる・書く・洗う)などその人の生活スタイルにあわせた作業を支援
作業療法士についてはくわしくは下の記事をご覧ください。
このように、理学療法士と作業療法士は一見似ているようですが、それぞれ担う役割が違うことがわかりましたね。
では、理学療法士は具体的にどのような役割を担っているのでしょうか。
くわしくみていきましょう。
理学療法士の3つの役割
理学療法士の役割は、おもに「運動療法」「物理療法」「日常生活動作訓練による治療」の3つに分かれます。
それぞれの内容について、具体的にみていきましょう。
運動療法
運動機能の回復をはかりたい部位やその周辺に対し、理学療法士が手を貸しながら動かし、関節の動きや筋力を正常な状態に近づけます。
ストレッチやトレーニング用の器具を使用する場合もあります。
物理療法
マッサージや治療(温熱・電気)などをとおして、運動機能の向上や痛みの緩和を目指します。
日常生活動作訓練による治療
「起床」「食事」「移動」「排泄」など、できる限り自分の力で日常生活を送れるように動作機能の回復を支援します。
理学療法についてくわしく説明した動画がありますので、参考にご覧ください。
このように、理学療法士は3つの役割をとおして、ご本人ができるだけ自分の力で日常生活が送れるように支援しています。
障害や病気により思うように身体が動かせない方や、運動機能の向上を目指す方に対し、気持ちに寄り添いながら運動機能の回復や向上を目指しています。
では、実際に理学療法士はどのような場所で働いているのでしょうか。
理学療法士の活躍している場所について、くわしくみていきましょう。
理学療法士の働く場所
理学療法士の支援はこどもから大人まで幅広く、活躍の場は多岐にわたっています。
理学療法士は次のような領域で活躍しています。
【介護保険サービス】
通所・訪問リハビリテーション、住宅改修・福祉用具のアドバイス
【医療サービス】
病院、診療所
【保健サービス】
健康教育、介護予防
【行政サービス】
市・区役所、特別支援学級
【福祉サービス】
障害者福祉センター、障害児(者)通所・入園施設
【トータルヘルスプラン事業】
健康管理、スポーツ
このように、理学療法士は福祉や健康にかかわるさまざまな場面で活躍しています。
発達障害のある方が理学療法士とかかわる場所は、上記の中で主に【医療サービス】【行政サービス】【福祉サービス】が当てはまります。
それぞれの方の状況により出会う場面は異なりますが、運動機能の支援を受ける際、とても頼りになる存在となるでしょう。
では、理学療法士は、その資格を得るためにどのような過程を経ているのでしょうか。
理学療法士になる方法についてくわしくみていきましょう。
理学療法士になるには
理学療法士の資格を得るためには、次のような理学療法士の養成校を卒業した上で、国家試験に合格する必要があります。
・4年制大学
・短期大学(3年制)
・専門学校(3年制、4年制)
・特別支援学校(視覚障害者が対象)
これ以外に、すでに作業療法士の資格を持っている方や、外国で養成校を卒業した方などには例外がありますので、こちらをご覧ください。
理学療法士の国家試験の合格率は70%〜90%のあたりで推移しており、その年によりばらつきがあります。
数字だけを見ると低くはない合格率のようにも見えますが、養成校で長い年月をかけて専門的に学んできた方しか受けられない試験であることを考えると、決して高くはない合格率であることがわかります。
このように、理学療法士になるためには、長い時間をかけてじっくりと専門知識を身につける必要があり、とても専門性の高い職業であるといえます。
では、実際に理学療法士が発達障害のある方を支援をする際は、具体的にどのような支援を行なっているのでしょうか。
発達障害のある方が理学療法士による運動療法を受けるにあたって参考になる本をいくつか紹介します。
発達障害者の運動機能に関して参考になる本
子どもの感覚運動機能の発達と支援−発達の科学と理論を支援に活かす
こちらは、感覚機能と運動機能の発達とその支援について丁寧に解説した本です。
発達障害など、リハビリテーションの対象となるお子さんの支援について、イラストや写真を交えながら、わかりやすく解説しています。
科学的根拠に基づいた専門的な内容で、支援者にとって参考になる一冊です。
出版社:メジカルビュー社
著者:大城昌平、儀間裕貴
価格:5,720円(2020年12月現在)
・何回読んでも興味深く、役立つ一冊です
・感覚から認知していく大切さがわかりました
・特別支援教育を行う上で必要な、値段以上の価値ある一冊です
・とても専門的で、一度では頭に入りませんでした
発達障害の子の感覚遊び・運動遊び 感覚統合をいかし、適応力を育てよう1
こちらは、感覚面や運動面に悩みのある発達障害のこどもに対し、遊びをとおして悩みを解決しようという本です。
こどもの生活適応能力を向上させるための遊びを15個紹介しています。
家庭でも実践できる内容なので、支援者だけでなく親御さんにも参考になる一冊です。
出版社:講談社
著者:木村 順
価格:1,540円(2020年12月現在)
・イラストがたくさんあり、読みやすくてわかりやすいです
・タイプ別にトレーニング方法が書いてあり、実践しやすいです
・この本を見て毎日トレーニングをしたら、こどもの笑顔が増え、情緒の発達を感じました
・内容の割に値段が高いです
PT・OTのための発達障害ガイド―知りたかった!
こちらは、理学療法士と作業療法士が、発達障害者への支援を行う上で必要な情報がまとめられた本です。
幅広く発達障害について解説し、臨床現場での実践に活かせる内容です。
発達障害者への支援を行う理学療法士と作業療法士にとって必読の一冊です。
出版社:金原出版
著者:新田收、笹田哲
価格:5,060円(2020年12月現在)
・専門書としてわかりやすいです
・概要が把握できてよかったです
・基本的な内容なので、発達障害の勉強のスタートに良い本です
・介入についての情報が物足りなかったです
このように、発達障害のある方が理学療法士の運動療法を受ける際は、個々の状況に応じてさまざまな方法が実践されます。
理学療法士の運動療法に興味はあるけど行動に移せていないという方は、まずはこのような本を手にとってみてはいかがでしょうか。
まとめ
今回は、発達障害のある方と理学療法士の関係についてお伝えしました。
運動機能に遅れが生じやすい発達障害のある方にとって、理学療法士に運動機能を支援してもらうことは、生活をする上で大きな助けになります。
運動機能を向上させることで、日常生活が送りやすくなり、情緒の面でも良い影響がある場合もあります。
もしも、発達障害の影響で運動機能に悩みを抱えている場合は、運動療法のプロである理学療法士にぜひ相談してみてください。
信頼できる理学療法士と出会うことが、解決への一歩となるかもしれません。