今日も皆さんと一緒に発達障害等に関する学びや情報交換の場所になることを願って投稿させて頂きます。今日のトピックスは「筋肉がつかない」についてです。

「うちの子は他の子と違って上手に身体を使えていない…」

筋肉がつかないのは、本来の動き・自然な動きができていないのが原因かもしれません。

そして、その本来の動きや自然な動きができないのは発達障害が関係しているかもしれません。

この記事を読まなければ、なぜうちの子が筋肉がつかないのか分からないままかもしれませんが、読むことで筋肉がつかない原因の一つの発達性協調性運動障害について分かるだけでなく、

解決方法も分かるきっかけになるかもしれませんので、よかったら参考にしてみてくださいね。

筋肉がつかない原因に発達障害が関係している?

発達障害の子どもたち全員ではありませんが、筋肉がつかないことが発達障害に関係している場合に原因が2つあります。

  • 低緊張
  • 発達性協調運動障害

低緊張

発達障害の子どもたちのなかには低緊張の子どもたちもいます。

低緊張とは、自分の身体を支えるための筋肉のハリが弱い状態のことをいいます。

筋肉のハリが弱いため、身体の動きをコントロールできずに姿勢が悪かったり、身体がぐにゃぐにゃしたような状態になります。

そのため、運動発達に遅れがでてしまうことがあります。

低緊張には2種類あります。

  • 良性筋緊張低下症→生後すぐは、身体がだらんとしているが、発達とともに改善していく
  • 原因疾患がある→ダウン症や筋ジストロフィーなどがあげられる

原因疾患がある場合は、その疾患の治療が必要になってきます。あきらかに発達が遅いなどがある場合は、下記で紹介している保険センターなどに相談をしてみることをオススメします。

発達性協調運動障害

発達性協調運動障害は、簡単にいうと極端に不器用であるため、生活に支障をきたしてしまう障害です。

上手に身体を使うことができないため、どうしても筋肉がつきにくくなってしまいます。

次に筋肉がつかない原因の1つの発達性協調運動障害について解説させていただきます。

発達性協調運動障害とは

ハイハイや歩くことが遅れる、くつひもを結んだりボタンを留めることができない、物を落とす、ボール遊びが苦手など、身体的不器用さがある子どもたちについて、米国精神医学会はDSM-Ⅳ-TRにおいて「発達性協調運動障害」としています。

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静江
協調運動とはなんでしょうか?
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浩二
手と足、目と手など別々に動く運動をまとめてひとつに動かす運動のことですよ。例えば、なわとびやサッカーなどのボール遊びなどですね。

この中には、脳性マヒや筋ジストロフィーといった一般身体疾患によるものや、広汎性発達障害の基準をみたすものは含まれていません。

一般身体疾患に関しては後ほど紹介させていただきます。広汎性発達障害に関してはこちらを参考にしてみてくださいね↓

どのくらいの人がなるのか?

発達性協調運動障害の人は5~11歳の子どもたちの6%と言われています。クラスに30人いたら2人くらいは発達性協調運動障害の可能性があるということになります。

男女比は2対1~4対1と男子の方が多いです。

発症と症状

障害のあらわれ方は年齢によって異なります。

 あらわれ方
年少児おすわり、ハイハイ、歩くこと、ボタンはめ、くつひも結びなどの不器用さと発達指標の遅れ
年長児ボール遊び、模型作り、書字などの特定の運動面での遅れ

また、ADHDや自閉症スペクトラムの方がハサミを上手に使えないことや、走り方が変といったように他の発達障害があって発達性協調運動障害があるというように併発している方が多いのも特徴です。

問題点

身体的不器用さのある子どもたちは、協調運動が苦手で難しいことはもちろん、それによって、自分に対して自信がなく、心理情緒面にも影響を及ぼす可能性があるといわれています。

他には、他の子と上手く仲良くなれないと思ってしまうなどがあります。

原因

原因の詳細は不明ですが、器質的要因(身体のどこかがめにみえて異常がある)と発達的要因(遺伝や環境が与える要因)の両方が仮定されています。

危険因子は、未熟児、低酸素血症、周産期の栄養不良、低体重出生などがあげられます。

他には、神経科学物質(アドレナリンなどの脳の情報伝達物質)の異常や頭頂葉の損傷なども関係していると考えられます。

治療と経過

診察について

病院で医師による診断は運動の直接観察によって得られますが、早期の運動機能歴の聴取も必要になります。

何歳何ヶ月で、歩いたなどの情報を整理してみると診察の時にスムーズですね。

参考までに運動発達の目安を表で掲載させていただきますね↓

 動作
1ヶ月あごをあげる
2ヶ月胸をあげる
3ヶ月ものをつかもうとするができない、首のすわり
4ヶ月支えられて座る
5ヶ月膝の上に座る、ものを握る
6ヶ月高いイスの上に座る、ぶら下がっているものをつかむ
7ヶ月一人で座る
8ヶ月支えられて立つ
9ヶ月家具につかまって立っていられる
10ヶ月ハイハイ(7~8ヶ月というデータもあります)
11ヶ月手を引かれて歩く
12ヶ月家具につかまって立ち上がる
13ヶ月階段にのぼる
14ヶ月ひとりで立つ
15ヶ月ひとりで歩く
運動発達の順序:Shirley,1961 引用サイト:運動機能の発育発達PDF

注意ですが、必ずしも上の表通りに運動ができるようになってくるわけではありません。その子によって違ってきますので、この表に比べてかなり遅れていない限りはあまり心配しなくてもいいかもしれません。

時にはハイハイせずに座ったまま移動するシャフリングベビーもいます。シャフリングベビーは1歳6~9ヶ月には歩き始めて、その後は普通に成長します。

こういった運動の遅れがないかを発見する機会に1歳半健診3歳健診があります。

こういった健診で指摘されて受診するといった場合もあります。

健診についてはこちらの記事を参考にしてみてくださいね↓

診断基準

発達性協調運動障害には、4つの診断基準があります。

  1. その人の年齢や経験から考えられるよりも、協調運動技能の獲得や遂行が明らかに劣っている。
  2. 運動技能の欠如が日常生活に支障をきたす。
  3. 症状の始まりが発達段階早期であること。
  4. 運動機能の欠如が知的能力障害、視覚障害や運動に影響を与える神経疾患(脳性麻痺や筋ジストロフィーなど)によるものではない。

検査

WISC-Ⅳ(IQ検査)や神経学的微細徴候検査、ベンダー視覚運動検査などといった検査を行うことにがあります。

治療

感覚統合療法と、個々に合わせた修正体育過程などがあります。

感覚統合療法は作業療法士が、子どもに寄り添って楽しいと思えるような遊びや運動を通して、感覚機能の苦手な部分を克服したり、得意を伸ばせるように行う療法です。

修正体育過程は、周りの人のことを気にせずに団体競技を楽しめるように援助します。

サッカーボールを蹴ったり、バスケットボールを投げたりするスポーツの動作を取り入れていきます。

経過

平均以上の知的能力をもつ子どもの場合は、欠陥を補うことを学ぶため、好ましい経過をたどります。

ですが、不器用さは大人まで残ることがあります。

未治療の場合では、問題点でもあげたようにスポーツが苦手なため仲間外れになり、皆となにかを行うことが難しいと思うようになります。他には、学業面でも失敗を繰り返すこともあります。

自信喪失して、劣等感が強くなるため、対応が必要となります。

発達性協調運動障害のことを分かりやすく解説している動画がありましたので、よかったら参考にしてみてくださいね↓

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静江
発達性協調運動障害は、人より不器用…というだけでなくて、精神的にもダメージが大きそうですね…。
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浩二
確かに「人より不器用なだけ!」といって何もしないのはよくないかもしれないですね。発達性協調運動障害は、対応次第では良くなりますよ!次にその対応を紹介させていただきますね。

発達性協調運動障害の対応

自閉症スペクトラム障害やADHDといった発達障害はかなり認知度が高いですが、発達性協調運動障害はまだまだ認知度が低いのが現状です。

場合によっては、適切な診断を受けることができない可能性があります。

すぐに医療機関に受診するのではなく、まずは専門機関に相談してみることをオススメします。

相談先

  • 保険センター
  • 子育て支援センター
  • 児童相談所
  • 発達障害者支援センター

があります。

保険センター

保険センターは、市町村ごとに設置されていてとても身近な機関で、子育てに必要であったり、役立つサービスが受けることができます。

一歳半健診などだけでなく、健康相談もできるので育児不安を解消できるようになっている心強い施設です。

保険センターには保健師や、看護師、管理栄養士、歯科衛生士、理学療法士などの専門職の方がいるのも特徴です。専門職の方がいるので、安心して相談できそうですね。

地域によってサービス内容が少しずつ異なるため、事前に市町村のホームページなどを確認してみるといいですね。

子育て支援センター

最近では、子育てのことを身近に相談ができる人がいないという人が増えてきています。

そこで、この子育て支援センターは、子ども(乳幼児)と子どもをもつ親の交流を深める場所となっています。

もちろん、交流だけでなく育児相談や育児に関する情報提供もされています。

こちらも利用前に、地域の子育て支援センターのホームページを確認してみるといいですね。

児童相談所

児童相談所といえば、児童虐待で関係してくる機関というイメージがあると思いますが、他にも行っていることがあります。

子どもの発育に関する相談や、障害、非行、不登校などの相談・支援も行っています。

都道府県のホームページに詳細が掲載されていますので、利用前に確認してみまるといいですね。

発達障害者支援センター

発達障害者支援センターは、発達障害の方やその家族を支援してくれます。

もちろん、発達障害の可能性がある方も相談できるので、診断を受けていなくても利用できます。

相談や発達の支援、就労の支援など幅広いサポートを受けることができるため、発達障害の方やその家族にとってとても心強い機関ですね。

発達障害者支援センターに関してはこちらを参考にしてみてくださいね。

支援を受けられる機関

上記で紹介させていただいた機関で相談をしてみて、支援先を紹介してもらえることもあるかと思います。

その紹介先として、医療機関はもちろん療育機関を紹介してもらえる場合もあるでしょう。

療育

療育とは、障害のある子どもたちが困っていることを改善し、自分の長所を伸ばしていくために行う支援のことです。

この療育を行っている機関では、発達性協調運動障害の子どもたちに対しても支援してくれる機関もあります。

ただし、民間の療育機関は保険適用がありませんので料金は様々です。行っている内容も違うので、紹介していもらったら見学などをしてみることをオススメします。

療育に関してはこちらの記事を参考にしてみてくださいね↓

療育に関する動画がありましたので、こちらもよかったら参考にしてみてくださいね↓

自分たちでもできる対応

私たちが何かをできるようになるまでにいきなりそれができることはありませんよね。

例えば、走ることだって最初は、つかまり立ち→伝い歩き→自分で歩く→走るというようにステップを踏んでできるようになりますよね。

そういったことが、発達性協調運動障害でない子どもたちはわりとスムーズにできてきたと思いますが、発達性協調運動障害の子どもたちはそれが簡単にはできません。

ですが、簡単にはできないかもしれませんが、周りの方の支援や本人の頑張り次第では克服できるようになるかもしれません。

その対応を紹介させていただきます。

楽しいと思いながらできるようにする

箸の使い方やくつひも結びなどをただ練習するのでは、なかなかできるようになりません。

ですが、楽しみながらそれらをできるようになる能力が身についたらどうでしょうか?

きっと自分から進んでやってみようと思うはずです。

例えば、ボタンをかけるといった動作ができないとします。

その原因は、

  • 握力がなく、かけることができない
  • 手の筋肉の動きをコントロールできない
  • 手に注意がいかない
  • 手の動きとみえているものとの連携がとれていない

などがあると思います。

それらを身につけられようにするために、

  • 粘土遊びを通して細かい感覚をつかんだり手に注意を向けられるようにする
  • 公園の遊具で遊ぶことで握力を鍛える
  • 好きなキャラクターがプリントされた布を1ヶ所~数か所大きめのボタンやリボンをつけて留めることで、お手製スカートやマントとなるようにしてみる
  • 輪投げをして、力加減や距離感をつかむ

など様々な方法で鍛えることができると思います。ポイントは、遊びでもできたらたくさんホメることです。

発達性協調運動障害の子どもたちは、他の子どもたちと比べて極端に不器用で自尊心が損なわれやすいです。

ですので、少しでもできたらホメることで、「私でもできるんだ!」と自信がついてやる気につながるので、是非やってみましょう。

他のかわりの手段を考える

やってみたけど、全然できない…といったこともあると思います。そんな時は、別の方法で対処してみるもの手です。

例えば、

  • ボタンを上手くかけられないならボタンのない服を着るようにする。
  • くつひも結びができないならくつひも結びをしないで済むようなくつに変える

などです。

ですが、諦めずに挑戦し続けることが大切です。できない間は他の手段に頼っても、少しずつトライしていくことでできるようになってくる可能性もあります。

本当に苦労してできたことは、本人にとって大きな自信となるはずです。

道具で解決する

今は、くつひも結びをしなくても、くつひものあるくつをはけるといったように便利グッズがあります。

そんなグッズで、できないを解決できるかもしれません。

ここでは、そんなグッズを3つ紹介させていただきます。

クールノット

くつひもを結ぶことが苦手な方にオススメのグッズです。

こちらのグッズは、くつひものかわりにこのクールノットを通して使います。こぶで占め具合を調整することができます。いちいちくつひもを結ばなくてよいため、くつひものあるくつも簡単にはいたり脱ぐことができます。

お値段も1000円程でお手頃です。

パートナーⅡ

ボタンをかけるのが苦手な方にオススメのグッズです。

金具の部分をボタン穴に通してからボタンにかけて少し引っ張りながらくるっとまわしたり、左右に動かすことでボタンをかけることができます。糸通しみたいなイメージですね。

大きいボタンと小さいボタンの二種類分けて使うこともできます。

お値段は2000円程となっています。

エジソンの箸

こちらは、箸を上手に使えない方にオススメのグッズです。

リングに人差し指と中指を通して親指をフックの上にのせるだけで、正しい箸の持ち方になります。連結部分があるため、箸が交差することなく使うことができます。

3ステップで普通の箸が使えるように設計されています。

箸のサイズのバリエーションも豊富で1.5歳~大人まで対応しているのもありがたいですね。

お値段も1000円程でお手頃です。

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静江
専門機関に相談をしてみることも大切ですが、ご家庭でもできそうなことはいっぱいありますね!
ところで、筋肉がつかない原因は他にもあるのでしょうか?
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浩二
発達性協調運動障害の他にも原因はありますよ。もしかしたらそちらの可能性もあるので、次にそれらを紹介させていただきますね。

筋肉がつかない病気

発達性協調運動障害の他にも筋肉がつかない病気はいくつかあります。ここでは、子どもたちに多い筋肉がつかない病気を紹介させていただきます。

筋ジストロフィー遺伝性の疾患で、骨格筋の変性・壊死と筋力低下をしていきます。デュシェンヌ型は進行が早く、ベッカー型は進行が遅く、20歳でも歩行できるのが特徴です。
先天性ミオパチー遺伝子の異常で発症します。新生児期ないし乳幼児期から筋力、筋緊張低下していきます。発育・発達が遅れがみられます。良性の場合は、成長に伴ってふつうの生活ができます。重症の場合は、呼吸不全や寝たきり状態となります。
ダウン症候群染色体は通常2対です。そのなかの21番目の染色体が1本多い(3本)ため、21トリソミーとも呼ばれます。筋肉の緊張度が低く、知的障害や心疾患、消化管の奇形、白血病も伴う場合があります。心疾患などの治療が順調であれば予後は比較的いいです。
脳性麻痺出生前後に脳のダメージを受けることでおこる運動障害です。姿勢・反射の異常や四肢の運動が少なく、筋緊張がみられます。呼吸障害やてんかんなどの合併症もみられます。早産や低出生体重が関係しています。
参考書籍:健康障害をもつ小児の看護看護師・看護学生のためのレビューブック

発達性協調運動障害以外の筋肉がつかない病気の例を紹介させていただきましたが、この他にもさまざまな病気があります。

先ほどもお伝えしましたが、「あきらかに発達が遅い…」といった心配がある場合は、専門機関に相談をしてみましょう!

まとめ

筋肉がつかない原因に病気がある場合もありますが、発達障害が関わっている場合もあります。

筋肉がつかない原因に発達障害が関係している場合は、低緊張と発達性協調運動障害があります。

発達性協調運動障害は、対応次第では改善していくので専門機関に相談したり、周囲でできるサポートをしてみましょう。

参考書籍:こころの医学事典