今日も皆さんと一緒に、発達障害等に関する学びや情報交換の場所となることを願って投稿させて頂きます。 今日のトピックは「発達障害と吃音」についてです。
言葉を噛んでしまうことや、言いよどむことは誰にでもある事ですが、それが癖になったいたり、吃音症という発話障害となるとどうでしょうか?
吃音は発達障害だということを聞いたのですが、本当の所はどうなのだろうかと疑問に思い、調べてみました。
目次
吃音は発達障害に分類されている
診断基準から
答えから言えば、吃音は発達障害に分類されています。
日本で主に使われる、WHO(世界保健機関)が作成した、ICD(国際疾病分類=疾病及び関連保健問題の国際統計分類)でも、アメリカ精神医学会が作成するDSM(精神障害の診断と統計マニュアル)でも、吃音は発達障害に分類されています。
支援法から
また、日本の発達障害者支援法でも支援対象になっているので、吃音症で障害者手帳を取得でき、関連する様々な支援を受けることができるようになっています。つまりは、発達障害扱いになっているということなのです。
参考元:①DSM-5における神経発達障害、②東京吃音改善研究所
吃音とは
吃音のパターン
WHOでは、リズミカルで滑らかな、いわゆる流暢な発話が乱れる症状を吃音と定義されています。
滑らかに話せないと言っても症状には幾つかのパターンがあって、特徴的なものには以下の3つが挙げられます。
- 音を繰り返す(連発):「つ、つ、つ、つまり」
- 音を引き伸ばす(伸発):「つーーーまり」
- 言葉が出ないで間が空く(難発・ブロック):「・・・・つまり」
分類
吃音は、発達性吃音 と 獲得性吃音 の2つに分類されており、全体のの9割は発達性吃音であって、その発達性吃音の特徴とは、以下のようなものです。
【 発達性吃音】
- まれに小学校以降に発症することもあるが、2~5歳の幼児期に発症する場合がほとんど
- 幼児が2語文以上の複雑な発話をし始める時期に起きやすい
- 幼児期の吃音発症率は8%前後
- ある時点で吃音のある人の割合=有病率は、全人口において0.8%前後
- 男性に多く、年齢や調査により変動するものの、2~4:1程度である
- 発症率に国や言語による差はほとんどない
- 体質的要因(遺伝的要因)の占める割合が8割程度
【獲得性吃音】
- 獲得性神経原性吃音:神経学的疾患や脳損傷などにより発症する
- 獲得性心因性吃音:心的なストレスや外傷体験に続いて生じる
*どちらも発症時期は10代後半~の成年以降です。
発症と進展
- 発達性吃音の始まりの多くは、軽い音の繰り返し「あ、あ、あのね」などの症状から
- うまく話せる時期もあり、波がある状態なのが特徴
- 7~8割くらいが自然に治ると言われている
- 残りの2~3割は徐々に症状が固定化して、楽に話せる時期が減って行く
- さらに症状が進むと、話そうとしても最初のことばが出なくなることが多い
心理的側面
子どもは初期に、軽く繰り返すくらいであれば、全く自分の症状に気づかないことが多いものです。ですが、頻繁に繰り返したり言葉が出ない経験をすると、そのこと自体に驚いたり、上手く話せない事実に不安や不満を徐々に感じるようになります。
幼い内なら、その場限りの一時的な感情で終わったりもするものですよね。しかし、成長に連れて吃音が固定化し上手く話せないことが多くなると、周囲から笑われたり指摘が増えたりといったことから、吃音を恥ずかしく感じるようになります。つまり、話す事に強い不安や恐怖を感じるようになるのです。
このような心理は、成長の過程で「うまく話せない」という経験が増えれば増えるほど強くなる「古典的条件付け」と言います。
身体を動かして勢いを付けたり、最初に「あのー」などを付けて、たまたま言葉が上手く出たという経験をしたりすると、出にくいときは常にその方法を使うようになる「道具的学習」という二次的行動も見られるようになるのです。
他の発達障害との比較
発達障害と一言で言っても症状の種類や程度は千差万別で、それを一括りにしてしまうのはどうかと思えるほどです。
吃音を同等に発達障害と呼んでしまって良いものなのか、他の発達障害と比較してみましょう。
発達障害に分類される中には、次のような種類があります。
自閉症スペクトラム(ASD)
社会的コミュニケーションの困難や、パターン化・ルーティン化した反復的な行動、限定的で強い興味・こだわりが見られる障害で、中には知的障害や言語障害を伴う場合もあり、発達段階や年齢、環境によって症状が大きく変化します。
生まれつきの脳機能障害と考えられており、自閉症的な特徴を持つ場合は知的障害の有無に関わらず、この診断名となります。
特徴は次のようなものです。
- 話に全く応じない
- 目を合わせない
- 受身的に多少の返事しかしない
- 話しても自分の話しばかりする
- コミュニケーションが、かみ合わない
- 想像することが苦手
- 融通が利かない
- 上手く対人関係を作れない維持できない など
注意欠如・多動性障害(ADHD)
年齢や発達にそぐわない注意力の欠如、多動性、衝動性が見られる行動の障害で、社会的な活動や学業に支障をきたすものです。
未就学の7歳以前に症状が現れ、かつ継続し、何らかの要因で中枢神経系に機能不全が推定されるというものです。
特徴は次のようなものです。
- 忘れ物が多い
- 整理整頓や時間の管理が苦手
- すぐに気が散りじっとしていられない
- 公共の場で騒ぐ、過度におしゃべり
- 順番待ちができない
- 気に触ると乱暴になる
- 人の邪魔をして自分を優先させようとする
- 約束事や、すべきことを守れない
- 話を聞いていないように見える など
学習障害(LD)
「読む」「書く」「話す」「聞く」「計算する」「推論する」などの特定の能力、またはこの中の複数に著しい困難が見られる障害で、特に学習を始める就学期以降に症状が目立ち始めます。
知的障害とは区別されており、学習障害に知的遅れはありません。
中にはASDやADHD、協調性運動障害や感覚過敏などの他の障害を併発している場合もあって、千差万別です。
知的障害
知能検査によって測られる知能指数(IQ)が、70以下であるものと定義されており、発達期までに生じた知的機能障害によって、認知能力の発達が全般的に遅れている状態のことを指します。
また、日常生活や社会生活の能力、社会的適応性の能力を測る「適応機能」の指数も基準にされ、自分の身の回りのことが、かろうじてできる軽度から、中度、重度を挟み、全く知能の発達が期待できない最重度までの4段階に区分されています。
ASDやADHD、LDなどと共存している場合が多いです。
コミュニケーション障害
対人関係が必要となる場面で、他人と自然かつ十分な対話が上手くできない障害のことで、ネットスラングの「コミュ障」とは別物です。
言語障害、会話音声障害、吃音、小児期発症の流暢性障害、社会性(語用論的)コミュニケーション障害など精神面と脳・神経などの身体的機能面の障害とがあり、ここに吃音も含まれています。
これも、ASDやADHD、LDなどと共存する場合が多いです。
制度か印象か
制度から
日本の制度上では、発達障害者支援法に吃音も定義されているために発達障害となってしまいがちですが、制度に悪意があるわけは無く、生活に支障が出そうな事柄に対してサービスや援助を受けられるようにしてあるだけなのです。
しかし、吃音の中には発達障害に当てはまらないものもあるので、制度として確立していることが弊害を生みだしているという主張もあります。
印象から
吃音の場合は他者との対話の場面での支障のみで、知的にも身体的にも能力に問題は無いので、発達障害と定義されることには、当事者だけでなく違和感を持ち意義を唱える人も多いようです。
吃音を障害と言いたくない当事者のブログを紹介します。
ブログ:100%本気の吃音改善相談室
吃音が出るシチュエーションは次のように条件的に限られています。
- 自分だけの空間では出ない
- 歌っている時は出ない
- 数人での会話だと出ない
- 電話だと出る
- 発表の場面ではダメ
- 対面での会話が苦手 など
精神的にスイッチが入ってしまうパターンがあるようで、条件的には発達障害とは異なるところが、障害と言いたくない原因と考えられます。
専門機関
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まとめ
吃音は診断基準や支援法から発達障害と定義されています。
しかし、吃音は症状が軽微で限定的でもあるので、他の発達障害と比較すると、同じく「障害」とされることに違和感を持ち意義を唱える者も多いのです。
制度や保証は不便の無いように補助やサービスを設定してありますが、当事者としては、印象が悪く聞こえるのは嫌なようです。
吃音は改善したり治せる場合も多く見られるので、専門機関に相談してみるのが解決の早道となるでしょう。