今日も皆さんと一緒に発達障害等に関する学びや情報交換の場所なることを願って投稿させて頂きます。
今日のトピックは「発達障害に作業療法は効果あり?」についてです。
発達障害の症状によっては、毎日心配事や困り事が絶えないですよね。小さなお子さんや就学中のお子さんの発達障害の場合も、このままだと将来どうなるの?と不安に感じることも多いと思います。
そのお困りの症状、もしかしたら”作業療法”を行うことで、日々の生活がしやすくなるかもしれません。
今回は、作業療法って何?どんなことをするの?など発達障害と作業療法の関係について気になる点をまとめてみました。
目次
作業療法って何?
作業療法士(Occupational Therapist 略してOT)は、 日常的に行う”作業”を少しでも快適な生活を送れるようにサポートする人のことです。
”作業”とは、布団から出る、顔を洗う、歯磨きをする、ご飯を食べる、トイレをする、服を着替えるなどの誰もが日常的に行っている動作を指します。
対象者は、身体や精神に障害がある人、年齢と共に身体が動かしにくくなった人、病気や怪我などで身体が不自由になった人などです。
作業療法士は国家資格を保有する者のみ行うことが出来る療法です。国や県が指定した学校や作業療法士養成施設で3年以上作業療法士の知識や技能を学ぶと、国家試験を受験する資格が得られます。主に病院などで活躍するリハビリテーションを行う職種の一つです。
作業療法士はどんなことをするの?
身体や精神に障害がある人、年齢と共に身体が動かしにくくなった人、病気や怪我などで身体が不自由になった人などを対象に、以下の3つの作業能力を基準にサポートを行っています。
基本的作業能力
運動機関、感覚機関、心肺機能、精神状態などの心や身体の機能をサポート。
- 病気で心身ともに落ち込んできた人へ生活作業をサポートしながら勇気づけを行う。
- うつ病、社会不安症、PTSD(心的外傷後ストレス障害)などがある人の生活サポート。
- 心肺機能の強化に向けた、その人に合った運動療法を行う。 など
応用的作業能力
基本的作業能力が安定したら、より具体的な作業が行えるように作業療法士がサポート。
- 自分でトイレに行けるようになる。
- 自分でお風呂に入れるようになる。
- 自分で家の中の掃除ができるようになる。 など
社会的適応能力
日常生活の作業が安定したと判断されたら、社会でその人らしく生活できるように心身共に健やかでいるためのサポート。
- メニューに合わせた買い物をし、調理ができるようになる。
- 趣味や旅行を楽しめるようになる。
- 就労支援を行い、社会に出られるようになる。 など
理学療法士との違い
リハビリテーションと聞くと、”理学療法士”を想像する人も多いかもしれません。理学療法士と作業療法士の違いについてご説明します。
まず、理学療法士は主に動作をサポートするお仕事です。歩く、座る、立ち上がるなどの身体全体の動きの回復や維持・予防が目的です。
作業療法士は更に応用的な生活作業のサポートを行います。服の着脱や食事などの指先まで使った作業や、家の中で移動してトイレをするなどの作業を行えるようにすることが目的です。また、身体のサポートだけでなく作業を通して精神的なサポートも行っています。
例:料理をして食事をする
- 理学療法士:今いるところから台所へ移動ができるようにサポート
- 作業療法士:手先を使って調理し、自分で食事ができるようになるサポート
発達障害に対するサポートとは?
ここでは幼少期~就学中のお子さんに対する作業療法についてお話しします。
まず、発達障害とは脳機能の損傷が発生して起こっていると言われており、その症状は、成長の遅れ、落ち着きがない、癇癪を起すなどです。そのまま成長すると、社会に出た時にも日々の生活が難しくなる場面が増えてしまう可能性もあります。
少しでも日常生活を健やかに送れるように、作業療法士はその子の現在の状況を観察・見立てをして、 ”遊び”を通してその子に合った作業を行ったり、集団の中で過ごす環境をつくって過ごしたりして心と身体の成長のサポートを行います。
具体的にどんなことをやるの?
幼少期~就学中のお子様に関しては、主に”遊び”を中心にした内容で作業療法を行います。
例えば、落ち着きがない子でも、動きの多いボール遊びやトランポリンは夢中になって遊ぶかもしれません。得意なことや関心があることは何かに目を向けることが大切です。
中には、こだわりが強いという発達障害の特徴から、折り紙や色塗りなど同じことをずっとしている方が楽しそうな子供もいれば、走り回って汗をかいている方が心も体も健やかに過ごせる子もいます。
発達障害にも色々な症状や特性があるため、病名やできないことだけに注目せず、総合的かつ客観的に判断を行うことが大切です。
このように、作業療法士は子供一人ひとりの特徴や関心に合わせた遊びを行い、同時に身体機能や日常生活の作業が行えるようになる工夫をしています。
また、個人で行う作業とは別に、発達段階に合わせて他の子供たちと一緒に遊ぶこともあります。「集団の中で過ごす」という経験を積むためです。
他の子を叩いてしまうなどの悪いことをしたら怒られる、悪いことをしてしまったら謝る、人に優しくしてもらったらありがとう言う、というように集団で過ごす中で芽生える感情や気持ちを体感します。
作業療法士と行う遊びや作業については、親や保育園や学校の先生にも共有することもあり、日常にも取り込むことが出来る簡単なものが多いです。
作業療法は発達障害にどんな影響があるの?
作業療法では、発達障害の子供へ遊びを通しさまざまな感情や刺激を体感してもらえるような内容となっています。
体感し、経験を積んで学習していくことや、五感を刺激することで脳の活性化にもつながると考えられるからです。
例えば、長いドミノを作るという遊びは、指先を使って等間隔にドミノを置いていくという作業で、一見地味で単純な作業ですが、指先の器用さ、集中力、観察力、倒れないように周りを確認する注意力、ドミノが完成してきれいに倒れた時の達成感などさまざまな感情や能力が働きます。
また、集団で遊ぶ利点は、かけっこで周りと競う、緊張する、興奮するなどの体験や、チームを組んで遊ぶときは協力する楽しさや悔しさなどの共感を感じる経験もできることです。
作業療法士と過ごすことで、専門家の目線から本人の個性を生かした体験ができ、身体的・精神的・脳機能的に刺激を与えることにもつながります。
このように、子供たちにいろいろな感情を抱いてもらい、体感してもらうことで、集団行動や日常の作業の改善にも繋がっていくのです。
どこで治療できるの?
作業療法士は、国家資格を保有する医療職となりますので、基本的には病院にいることが多いです。もし、発達障害で作業療法について興味があれば、かかりつけ医に相談してみましょう。
また、以下の場所でも作業療法士が関わってくる場合があります。各自治体の福祉課までお問い合わせください。
- 子供の定期健診で、発達障害の可能性がある場合
- 保健所、障害者施設、児童福祉施設
- 発達支援センター、放課後デイサービス、特別支援学校
- 就労支援事業施設、ハローワーク
まとめ
以上、作業療法と発達障害についてお話をさせていただきました。
作業療法士のお仕事や、作業療法が発達障害児へ与える影響について知ることで、発達障害を持つ本人や、一緒に生活をしているご家族を支える環境がまだまだあることを知っていただけたかと思います。
作業療法を行い、お子さんや障害をサポートする方が少しでも過ごしやすい日々を送れることを願っています。