今日も皆さんと一緒に発達障害等に関する学びや情報交換の場所となることを願って投稿させて頂きます。 今日のトピックは「発達障害とスペクトラム」についてです。
人間関係でも仕事でも高いマルチタスクが要求される近年、社会的にも目立って来たことで知られてきた発達障害ですが、まだ一般的には正しく理解している方が少ないので、本人も周りも理不尽に疑ったり恐れたりしています。
発達障害は、ただ一つの障害ではなく、原因も症状も多岐に渡っていて、その中に「スペクトラム」というものがあります。なじみがない単語だと思いますので、この「スペクトラム」を中心に発達障害について調べてみました。
目次
発達障害のスペクトラムとは?
発達障害とは生まれつき脳の発達が通常と違って、アンバランスであったり遅延したりしているために、幼児のうちから症状が現れ、通常の育児ではうまくいかなくなったりすることです。
発達障害はいくつかのタイプに分類されており、自閉症、アスペルガー症候群、注意欠如・多動性障害(ADHD)、学習障害、チック障害、吃音(症)などが含まれます。
その内のスペクトラムとは「自閉症スペクトラム障害」と言い、英名の [Autism Spectrum Disorder] からASDと略される、「発達障害の診断と統計マニュアル」の第5版(DSM-5)において定義された診断名です。
ASDには、DSM-5以前の分類である ICD-10やDSM-IV での広汎性発達障害(PDD)に含まれていた、自閉性障害(自閉症)、アスペルガー症候群、特定不能の広汎性発達障害、小児期崩壊性障害なども含まれることになりました。
また同時に、従来からの典型的な自閉症だけでなく、もっと軽い状態も含まれることになったので、適用範囲が広がったのです。
自閉症スペクトラム(ASD)に分類される障害
DSM-5で自閉症スペクトラム(ASD)に定義された主な障害は、
- 早期幼児自閉症
- 小児自閉症
- カナー型自閉症
- 高機能自閉症
- 非定型自閉症
- アスペルガー障害
- 特定不能の広汎性発達障害 など
これらの障害には明確な境界線がなく、年齢や環境によっても重症度が変化したり、複数の障害が重複したりします。
自閉症スペクトラム(ASD)に併発しやすい障害や病気
社会全体に、余裕がなくなってきている現代では、学校や職場や家庭も多忙で、教育や子育てに経済的、精神的な余裕を持てなくなって来ています。
周囲が発達障害を認識してなかったり、対応できなかったりすることで、できないことをさせたり要求したりすると、過度な負荷をかけて精神を蝕むこととなり、更なる障害や病気を併発する二次障害が起きるので、注意が必要です。
- 知的障害
- 適応障害
- 学習障害(LD)
- 注意欠陥・多動性障害(ADHD)
- 心的外傷後ストレス障害(PTSD)
- 気分障害・うつ病・双極性障害
- 強迫性障害(OCD)
- 統合失調症(SZ)
- 睡眠障害
- てんかん
- 摂食障害 など
自閉症スペクトラム(ASD)の原因
1950~60年代までは、「自閉症は親の育て方が原因で起こる後天的障害である」というのが定説でしたが、現在は、先天的な脳機能の変異とされ、子育てによる要因は関係しないとされています。
ただ、虐待など小児期にトラウマ体験に遭った場合、ADHDやASDに似た症状が出ることも分かっているので、誤解されやすいところです。
遺伝率は90%と非常に高く、男女比は男性が女性の4倍にもなります。
ミラーニューロンの異常
ミラーニューロン[Mirror neuron]とは、霊長類などの高等動物の脳内で、自ら行動する時と、他の個体が行動するのを見ている状態の両方で活動電位を発生させる神経細胞です。
2006年に自閉症スペクトラムは、ミラーニューロンの機能に異常がみられることが確認され、このミラーニューロンの機能障害が、社会性や共感能力、失敗などから学ぶ、学習能力に影響していると考えられています。
自閉症スペクトラム(ASD)の特徴
自閉症スペクトラム(ASD)には主な3つの特徴があります。
コミュニケーションの障害
コミュニケーションの障害とは、スムーズな会話が苦手なために、考えや思いをうまく伝えられないことです。無表情で反応が少なく、自分から話しかけることも多くありません。
話しかけられてもすぐ返答できずにいたり、オウム返しや書き言葉のように話をしたり、変に堅苦しい言い回しをしたり、抑揚がおかしかったり、ジェスチャーが分からなかったりすることなどが、よく見られる特徴です。
社会性の障害
社会性の障害とは、コミュニケーションの障害にも関係しますが、相手の気持ちや状況を察することができないので、人と良好な関係を築くことができず、一方的な人間関係となり、孤立しがちになりますし、一人を好んだりもします。
慣習的なルールや暗黙の了解を理解しながら、周囲の人とかかわる時に適切にふるまうことが難しいのです。
想像力の障害
想像力の障害とは、柔軟性やこだわりの問題と言い換えられますが、些細なことに強い関心やこだわりをもったり、突発的な出来事に上手く対処できなかったり、無意味とも思える行動を何度も繰り返したりすることです。
自分が見たり予想していた以外の出来事や、成り行きを想像したり理解することが難しく、自分の興味があることや心地よいパターンの行動に強いこだわりがあり、想定外の行動を取ることに抵抗を示します。
その他の特徴
以上の3つ以外にも、いくつか見られる特徴があります。
- ちょっとした音や光や出来事に過度に反応し、時にはパニックのようになってしまう過敏性
- 味覚や触覚を適切に知覚できない感覚異常
- 落ち着きのなさや、立ち歩きなどの多動症 など
成人後の発症
子どものころは問題がなかったのに、社会人になって就職した後に支障が起き、自閉スペクトラムと診断される場合があります。
これは、成人後に発症したということではなく、そうした特性はあったものの比較的軽度だったので、目立たなかっただけのことで、社会人となり様々なストレスや柔軟性が求められるようになることで、健在化したということです。
自閉症スペクトラム(ASD)への対処法
治療
自閉症スペクトラム(ASD)を診断できるのは医師だけで、精神科や心療内科が受診窓口しなりますが、完治する治療法は見つかっておらず、治療よりも療育や支援、環境調整に重点が置かれます。
早期に行動療法を行うことが最も予後が良いとされ、英国国立医療技術評価機構(NICE)は、薬物は中核的症状では使用してはいけないとしています。
周辺症状の管理として睡眠障害には、メラトニン、行動介入、親の教育が、他の薬物療法や他の方法(ビタミン、アロマテラピー、マッサージ)よりも効果的であったとの結果でした。
対処療法
自閉症スペクトラム(ASD)は患者ごとに症状が異なるため、オーダーメイドのように様々な療法を組み合わせ対処することになります。
- カウンセリング・・・ストレス軽減、精神症状の安定
- ソーシャルスキルトレーニング・・・生活習慣の改善
- 認知行動療法(CBT)、対人関係療法・・・問題行動の抑制、固執・癇癪の軽減
- 薬物療法や精神療法・・・二次障害や問題となる思考・行動に対して
- トラウマ治療・・・PTSDを原因とする発達性トラウマの場合
- ニューロフィードバック・・・運動や音楽の能力向上、恐怖記憶の軽減
- ペアレント・トレーニング・・・家庭の環境改善 など
子育てのコツ
障害の有無に係わらず、子育ての基本は変わりません!
親が絶対に諦めないこと...ですよね⁉
発達障害の子は、ネガティブな考えを持ちやすく自信を失いやすい傾向にありますので、自分を肯定できる暖かい環境を与えてあげましょう。
最近は、発達障害を公表している有名人の話題も多く耳にしますから、決して悲観することではないと、証明されているようなものです。
教育の専門機関が、学習支援プログラムなどを提供しています。
同じ悩みを持つ親御さんたちと、つながることも良いかも知れません。
自閉症スペクトラム(ASD)を活かせる仕事
不都合になる特徴も、逆に長所となることが少なくありません。「社会性の弱さ」は、周囲の視線や暗黙の了解にとらわれず、いい意味で周りを気にせずに仕事に集中できるでしょう。
「こだわり」は、きっちりルールを守り、継続して同じ作業を続けられる強みになり得ます。他の人なら見逃しがちな細かい部分に気付いたり、面倒に思われる繰り返しの工程も、抜けや漏れ無く正確に行うことに苦痛を待ちません。
愚直に仕事に取り組む姿勢は、プラス評価も期待できるでしょう。
まずは相談してみよう
「働きたい!」気持ちはあっても、「どんな仕事が向いているの?」と悩んでしまう人は多くいます。
下記に発達障害を抱えた人、または家族を対象に生活や就業に関する相談や支援を行なっている専門機関をご紹介します。
全国に展開していますので、上記リンクからお近くの機関をご利用下さい。ただ、機関によって支援内容が異なる場合があります。事前に確認しておくと良いでしょう。
ルールやマニュアルがしっかりしている仕事
決められたものがあれば、その通りにできることが ASD の強みの一つです。
- 「経理・財務」
- 「法務・情報管理」
- 「コールセンター」
- 「テクニカルサポート」 など
数字・論理や豊富な専門分野の知識を活かせる仕事
知識や論理が重要な一方で、やることが予想できるような仕事も ASD には向いているでしょう。
- 「プログラマー・テスター」
- 「ネットワークエンジニア」
- 「電化製品等の販売員」
- 「塾での問題作成」 など
視覚情報が重要で強みが活かせる仕事
感覚ではなく、機能を操る作業でかつ画像や映像など視覚情報のこだわりが生かせる職種は ASD にはフィットする職種といえます。
- 「CADオペレーター」
- 「工業系デザイナー」
- 「設計士」
- 「資格を要する技師」 など
自閉症スペクトラムに関する書籍は多数出版されています。知見を深める為にも参考にしてみてはいかがでしょうか。
放課後デイサービス アレッタの紹介
放課後デイサービス アレッタは横浜市を拠点とし、子どもたちの自立や健全な育成のために、障害児と保護者をサポートしています。
「自分の意思で行動する子」を育てようと、指導員はキッカケを与える助け手として接しながら、子供たち自らが選択し、学べる環境を提供しています。
「自分でできる」という自信を持たせ、将来に安心して暮らすことができるようになるための、創意工夫を込めたお手伝いをしていますので、是非上記リンクよりご覧ください。
まとめ
発達障害でのスペクトラムとは、「自閉症スペクトラム」(ASD)のことです。
様々に分類される発達障害の中、いくつかの障害名を内包する一つのグループとしての名称であり、症状や程度も個人差が激しく、障害に入るか変わった人程度に収まるかの線引きも、紙一重で難しい範囲の広い障害と言えます。
主に、コミュニケーションと社会性と思考の柔軟性に難がある症状なので、煩雑で余裕の少ない現代社会では、人との関係や生活に支障を生じ、孤立しがちになるでしょう。
完治させる治療法は無いですが、早期に於いての成長や学習・改善は可能であり、特徴の長所を活かしたり周囲の理解と協力が有れば尚良く、問題なく社会生活を送れる程度の患者も多い障害であるのです。