今日も皆さんと一緒に発達障害等に関する学びや情報交換の場になることを願って投稿させて頂きます。今日のトピックスは「絵カード」についてです。
「言葉での指示が伝わらない…」「注意しても同じことを繰り返す…」発達障害のお子さんを育てている方でしたら、経験があるかもしれません。ですが、そんな悩みを解決してくれるかもしれないのが絵カードです。
この記事では、そんな絵カードについてやなぜ効果があるかなどを紹介されていただきます。
この記事を読まなければ、指示が伝わらないなどの悩みを解決することが難しいかもしれませんが、読むことで解決のきっかけになるかもしれませんので、よかったら参考にしてみてくださいね。
目次
絵カードとは
絵カードは、コミュニケーションを補助するために使うイラストの書かれたカードのことです。絵カードは、手順を説明するものや、スケジュールを示すものがあります。
手順を説明するものの例として、「歯を磨く」はカードに歯磨きをしているイラストや「トイレにいく」はトイレに座っているイラストが書かれていたりと、パッと見て何をしているか分かるようになっています。
スケジュールを示すものは、時計の絵と一緒に手順を説明するであるようなカードを一緒に掲示することで、何時に何をするかが目でみて分かるようになっています。例えば、7時:起きる、8時:学校へ行くのようになっています。
絵カードが発達障害の子どもたちに効果があるのか
指示が伝わらなかったり、注意をしても同じ事を繰り返す原因
そもそも、なぜ発達障害の子どもたちの中には、指示が伝わらなかったり、何度も注意しても同じことを繰り返す子どもたちがいるのでしょうか?
それは、発達障害の子どもたちは「何を指示されたかがわからない」「今、何をすればいいかわからない」「この先、どうすればいいのかわからない」などの「わからない」「不安」があるからだといわれています。
絵カードが有効な理由その1
発達障害の子どもたちのもつ特徴として、「視覚優位」があります。発達障害の子どもたちの多くは耳から言葉を聞いただけでは、理解できない場合があっても、目でみてわかる情報があることで、意味を理解できる場合があります。
つまり、言葉だけでの説明で「歯を磨く」や「トイレにいく」などがわからなくても、絵カードを見せて指示することで伝わりやすいということになります。
さらに、言葉と絵カードの内容が結びつくことで、やるべきことが理解できるので、言語理解の発達にもつながるといわれています。
視覚優位に関してはこちらの記事を参考にしてみてくださいね↓
絵カードが有効な理由その2
発達障害の子どもたちのなかには、ふつうに言葉によるコミュニケーションをできる子どもたちも多いですが、
ADHAのなかの衝動性が強い子どもはふと思いついて行動してしまったり、自閉症スペクトラム障害の子どもは、思わぬことがおきたりするとパニックになったりします。
このようにとっさの状況判断が苦手な子どもたちも多いのですが、その場になると、頭の中では次に何をすればいいか分かっていても、どうしたらいいのかわからなくなったり、やっていいこと・悪いことが分からなくなってしまう場合があります。
そんな時に、パッとみて分かる絵カードをみることで「あっそうか!次は○○をするんだった」と自分自身で行動をコントロールすることができます。
絵カードが有効な理由その3
発達障害の子どもたちの中には、ワーキングメモリが弱い子どもたちもいます。
ワーキングメモリ (working memory:作業記憶,作動記憶) とは,短い時間に心の中で情報を保持し,同時に処理する能力のことを指します。会話や読み書き,計算などの基礎となる,私たちの日常生活や学習を支える重要な能力です。
引用サイト:児童・生徒のワーキングメモリと学習支援
例えば、ワーキングメモリが弱くない場合は買い物で「卵としょうゆと食パンとトマトを買う」をメモをとらなくても忘れずに買ってくることができると思います。
ですが、ワーキングメモリが弱いとそれを忘れてしまいます。
他には、何かの作業中に「後で掃除と洗濯ものたたんでおいて」と言われても「あれ?何するんだっけ」となってしまいます。
つまり、一度にたくさんのことを覚えたり、同時にいくつかのことをやっているうちになにをすればいいか忘れてしまうといったことがおこります。
そんな時に、絵カードで手順を確認する、スケジュールを示すといったように活用することで、次にやることが分かるようになります。
発達障害の小学生を対象にしたある実験では、絵カードを使って事柄を記憶した場合と言葉だけで記憶した場合では、絵カードを使用したほうが事柄を思い出しやすいことが確認されています。(参考サイト:保育者が行う絵カード作成の誤りおよび不適切な使用方法の分類)
ワーキングメモリと発達障害の関係についてわかりやすく紹介されているのでよかったら参考にしてみてくださいね↓
絵カードの使い方を誤ると効果がない!
ここまで、絵カードの有効性を紹介されていただきましたが、絵カードは使い方を誤ると効果がないばかりか、絵カードをみるのを嫌がることがあるようです。
その原因にカード自体の問題と使うときの問題があります。
カード自体の問題
ノイズが多い
写真を使用した場合にノイズが多くなりがちです。背景や周囲に伝えたいこと以外のものが映りこんでしまっているために、そちらに目がいってしまうのが原因となります。
例えば、箸をつかうの指示カードを写真で撮影した場合、ご飯茶碗を持っていたりすると箸を示しているのかご飯を示しているのか分かりにくいです。
同様に自作のイラストも伝えたいもの以外のものをかいてしまっている場合があります。
例えば、眠るの指示カードに眠っている子どもに吹き出しをかき、そのなかに夢の絵をかいてしまった場合に、吹き出しの絵に注目してしまいます。
ひとつのカードにいくつかの意味を持たせる
ひとつのカードにひとつだけの意味を持たせることで、意味が分かりますが、いくつも意味を持たせてしまうと、何を示されているかわかりません。
例えば、ハサミの指示カードの場合、ハサミで紙を切っている絵だと、ハサミなのか、紙をきるのかわかりにくいです。
実物とカードの色やかたちが違う
実際に使っているかばんは青色なのに、カードのかばんは黄色であったりと実際とは違うもののためにわからないという場合もあります。
他にも、手を合わせるというマナーも文化によっては手をくむというように同じ意味合いでも、動作の違いもあります。そういった時に動作が違うカードを使うと混乱してしまいます。
絵のカードのサイズが大きすぎる
発達障害の子どもたちは、定型発達の子どもたちに比べて注視できる視野が狭いといった特徴を持つ子どももいます。
A4サイズのように大きいと、カードの一部に視線を向けることができないため、内容が伝わらない場合があります。
ですので、写真くらいのサイズまでがいいといわれています。
カードを使うときの問題
指示したあとにホメない
発達障害の子どもたちに限らず、できたことをほめられないと行動は定着しにくいです。
特に、発達障害の子どもたちは、できないことが多くなかなかほめられることが少ないため、自己肯定感が低い場合が多いです。
自己肯定感とは、自己価値に関する感覚であり、自分が自分についてどう考え、どう感じているかによって決まる感覚です。自己肯定感とは「自分の存在そのものを認める」感覚であり、「ありのままの自分をかけがえのない存在として肯定的、好意的に受け止めることができる感覚」のことで、「自分が自分をどう思うか」という自己認識が自己肯定感を決定づけています。
引用サイト:日本セルフエスティ―ム普及協会ホームページ
自己肯定感が高いと感情が安定し、人生で起きるさまざまなことをポジティブにとらえられます。反対に、自己肯定感の低い人は「自分なんてダメだ」という感覚にとらわれ、ネガティブになりがちです。
このネガティブさが「いきにくさ」の要因となりえます。
ですので、できたことを積極的にほめることで自己肯定感のアップにつながるので、できたらホメることを心がけるといいですね。
行動を制限するためのカードをよく使う
子どもに注意するために「兄弟をたたかない」などの「○○をやってはいけない」といった禁止や行動の制限をするためにカードをよく使うと、カード=叱られるものとネガティブなイメージを持ってしまいます。
「トイレにいく」「ご飯をたべる」などできたことをほめられるようなカードをよく使うことで、カードにかいてあることができたらホメられるといったポジティブなイメージをもてるようにすることが大切です。
言葉がけをせずにカードだけをみせる
なんの言葉がけもないと、カードの意味が伝わりにくいです。簡単な言葉がけをしながらカードをみせる必要があります。
カードをよいタイミングでだせない
子どもが好ましくない行動をしているときに、すぐにカードで注意して、それがやってはいけないことであると、目でもわかるようにするためには、タイミングがずれてしまうと効果がなくなってしまいます。
カードの枚数が多いと探してからだす必要があるため、どうしても出すタイミングが遅くなってしまいます。
そんな時は、ファイリングやインデックスをつけるなど探しやすい工夫をする必要があります。
無料の絵カードサイト3選
インターネット上には、無料で絵カードを掲載しているページや、自分で絵カードを簡単に作成できるページがあります。注意点ですが、個人利用目的でお願い致します。
ちびむすドリル
絵がジャンルごとに分かれていて、そのままコピーできるようになっていますので、お手軽ですね。
ジャンルは、
- 果物・野菜
- 動物
- 場所・建物
- 水中
- 道具
- 体の部位
- 色と形
- 乗り物
- 気持ち
- 擬声語・擬態語
- 形容詞
- 形容動詞
- 動詞
参照サイト:ちびむすドリルホームページ
発達障害児のための絵カード屋さん
こちらも絵がジャンルごとに分かれています。サイト内にラミネートを用いたカードのつくり方も掲載されています。絵もかわいいです。
ジャンルは、
- 視力検査
- 尿検査/ギョウチュウ検査
- トイレ
- 病院
- 迷子札
- 幼児の日常絵カード
- はみがきじゅんばんポスター
- お風呂 洗う順番
- 耳そうじ 耳鼻科
- 色んな気持ち
- 返事
- 問題行動
- 問題行動 電車の中
- 問題行動 唾を吐く、服を噛む、物を噛む、お股を触る
- 問題行動 花を触る
- 困った行動
- 商品を触る
- 車の中
- 水で遊ぶ
- 他害行動
- お約束(良い行動、悪い行動)
- 学校
- 幼稚園
- 中高生身だしなみ
- 小学生女子 学校の用意(身支度&身だしなみ)
- 小学生男子 学校の用意(身支度&身だしなみ)
- 学校行事 検診
- 発達障害児 無料学習教材
- 時間割
- お金
- 生活
- お買いものプリント
- 料理
- 時計
- 数え方
- かけ算・わり算
- 反対言葉
- 声の大きさ
- 天気・朝・昼・夕・夜
- おでかけ
- みんなと行動する時のお約束絵カード
- ソーシャルスキル
- ソーシャルスキルイラスト
- 状況説明
- 怒りバロメーター
- 表情・気持ちのプリント
- 自己紹介
- 問題集
- スケジュール絵カード
参照サイト:発達障害児のための絵カード屋さん
ザ・プロンプト!絵カードセンター
こちらは、自閉症の方向けの絵カードです。イラストを選んで自分でサイズや方向、好きな文字を入れることができます。他にはないカードを作ることができるのはありがたいですね。
つくり方もサイトに掲載されていたので、参考にしてみてくださいね。
参照サイト:ザ・プロンプト!絵カードセンター
絵カードの作り方はこちらの動画でも紹介されていました↓
マジックテープではりつくように仕上げているため、すぐにカードを取り出せるのは便利ですね。
カードのサイズは、ご自身で調整して、台紙のマジックテープの数もそれに合わせて調節するといいかと思います。
市販の絵カード2選
PriPri発達支援 絵カード6ルール・約束 PriPri発達支援キット
発達障害や、診断のついていない発達に課題のある子向けの絵カードセットです。
こちらの本はシリーズで、こちらはそのなかの6冊目です。
家庭での生活や保育園や学校での生活を円滑にしたり、危険から身を守るために欠かせないのが、ルールや約束です。こちらは、そんな大切だけど難しいルール・約束に焦点をあてています。
ルールや約束を守るのが苦手なのには様々な理由があります。
そもそもルールや約束そのものが分からず説明を聞いても理解できない、理解はできても覚えられない、声をかければ思い出せても何かに夢中になると忘れてしまう、理解も記憶もしているのに守れない…など、様々です。
こうした困難さを補うために絵カードが効果的です。口頭だけでなくイラストを見ながら説明したり、活動の途中でカードを取り出しルールや約束を再確認したり、クラスに掲示して日ごろから子どもたちの目に届くようにしたりすることで、サポートします。
<セット内容>
- 両面カラー絵カード(123×91mm)×60枚・白紙2枚
- カラーポスター(297×420mm)×2枚
- 使い方説明書つき
<絵カードラインナップ>
- 集団規律(あつまる/じゅんばんに ならぶ/ろうかをしずかにあるく)
- クラス活動(てを あげてから はなす/ともだちの はっぴょうを しずかにみる)
- 自由あそび(「かして」と いって かりる/つぎの ひとに かわる/いっしょに つかう)
- ゲーム(まけても なかない/ともだちに パスを する/ともだちに ボールを ゆずる)
- 散歩(てを つないで あるく/あかしんごうでは とまって まつ)
- 食事(すわって たべる/はしや スプーンで たべる/よく かんで たべる)
- トイレ(いわれたら さっと トイレに いく)
- 午睡(しずかに ふとんに はいる/ふとんの なかで たのしいことを かんがえながら ねる)
- 登降園(おかあさんと バイバイする/バスの なかでは しずかに すわってすごす)
- 道徳(ものを たいせつに あつかう/どうぶつに やさしく する)
- イエローカード(たたく/すなを かける/ともだちが いたがっているよ)
- あと1回(あと いっかい/おしまい)
- 待ってね(まってね/あと すこしだよ/いっぱい まてたね) ほか
その他のシリーズもありますので、紹介されていただきます↓
PriPri発達支援 絵カード1食事・トイレ
言葉を聞いて理解することが苦手な子に、視覚的に行動の意味を伝え、「食事」「トイレ」の自立を促します。
視覚的に「わかる」ことで「できる」ことが増えるため、子どもが自信や達成感を得られたり、ことばの発達が促されるメリットもあります。
言葉を添えながら絵カードを提示して行動を伝えたり、子どもが自分の気持ちを伝えるために提示したりして使います。
複数枚を組み合わせれば支援ツールを作ることも可能です。
PriPri発達支援 絵カード2着替え
視覚的に行動を伝え、「着替え」の自立を促す絵カードです。
この絵カードの特長は、表裏に絵があること!保育者や保護者が言葉を添えながら表面の行動の絵を提示し、子どもがうまくできたら裏返して「できたね!」の絵を見せてほめます。
そうすることで子どもは達成感を味わえ、自信を持ち、行動が定着しやすくなるります。
PriPri発達支援 絵カード3清潔・片付け
清潔では、手洗いであれば「コップをもつ」「コップに水を入れる」「ブクブクうがいをする」「ガラガラうがいをする」「水を口からだす」のように、子どもが迷うことがないように、カードが細かな段階に分けられています。
片付けでは、グッズカードと動作カード2枚を組み合わせて使います。
例えば、「ぬいぐるみ」のグッズカードと「箱に入れる」のカードのように組み合わせます。
PriPri発達支援 絵カード4気持ち
発達に課題のある子の中には、自分の気持ちを言い表すことや、人の気持ちを推し測ることが苦手な子もいます。
こちらはそんな子どもたちが「気持ち(感情)」に少しでも関心を持つことができるようサポートするカードです。
気持ちカードをゲームなどのあそびに取り入れた視覚支援で、「気持ち」への関心が高まると、「今、自分がどういう気持ちなのか」に気づくようになり、自分の感情をコントロールしやすくなります。
さらに、自分の気持ちを伝えることができるようになると、コミュニケーションがスムーズになり、人との信頼関係が深まります。気持ちをわかってくれる人が近くにいれば、安定して日常生活を過ごせるようになります。
PriPri発達支援 絵カード5コミュニケーション
コミュニケーションの方法をラインナップした絵カードです。
がんばってね・じょうずだね・いいよ・おさきにどうぞ・まってるよ・てつだおうか?・ゆずってあげる・こちらにどうぞ・ごめんね・ありがとう・どういたしましてなどの子どもたちが育んでほしい人に言われて嬉しい言葉が収録されています。
その他にも、子どもから大人への意思表示カードや、大人から子どもへ伝えたいことなども絵カードでラインナップされています。
スケジュールポケット3点セット&絵カード(1)(2)セット
こちらは、絵カードと帆布で作られたスケジュールポケットのセットになったものとなっています。絵カードをポケットに差し込むだけでスケジュールの完成です。
特徴は
- 付属のカードリング(4個入り)や、その他S字フックL字金具などでつなげたり、あるいは別々にぶらせげて使用できます。
- 胴体ポケット部分は透明ビニールで、横から入れるタイプ。
- カードを横から入れられるため、横に長いタイプのカードも使えます。
- 2列に分かれているため真ん中からも手が入り、短いカードでも出し入れがしやすくなっています。
- 2列あるので、活動のほか『いつ』や『誰と』など工夫でき、使う方の知りたい情報が入れられます。
絵カード自体も108種類あり、ラミネートいらずの角丸加工がされているので安心ですね。
また、カードホルダーの右側が空いているため、追加情報を入れやすかったり、サイズも名刺より少し小さいサイズで扱いやすく、注視しやすいのもありがたいですね。
まとめ
絵カードは使い方を誤ると、効果がないばかりかカードをみるのも嫌になってしまう場合もあります。
ですが、単純明快なカードを使ってでできたらホメるなどのポイントを意識して使うことで、「伝わらない」の解決になるかもしれません。
市販の絵カードを用いるのももちろんいいですが、無料のものもあるので試してはいかがでしょうか?