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自閉症は遺伝するの?
自閉症とは発達障害のうちの一つで、他者とのコミュニケーションや社会で生活していくのが困難な病気です。
自閉症という名称については、世界保健機関(WHO)が定めた国際疾病分類(ICD)や2013年に刊行されたアメリカ精神医学会の精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM-5)で「自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害」(ASD)の名称に統合されました。
自閉症スペクトラム障害(ASD)の特徴としては下記があげられます。
・対人関係やコミュニケーションの困難さ
・物事に対する強いこだわり
・感覚過敏や鈍感
・環境の変化に対する適応がむずかしい
また、自閉症スペクトラム障害(ASD)に関して詳しく説明している記事がありますので、こちらも合わせてご覧ください。
1.なぜ遺伝が原因だと言われているの?
自閉症については、はっきりとした原因が明らかにされていません。しかし、患者を対象とした研究結果から、一部に遺伝的要因があるのではないかと考えられています。
二卵性双生児は二人とも自閉症である確率は5~10%という結果に対して、ある一卵性双生児の自閉症発症が40~98%と二卵性双生児と比べて高い確率でした。
また、血縁に自閉症を患っている人がいる場合と、いない場合で比較すると、前者の方が自閉症の子供が生まれる可能性が比較的高いという結果も出ています。
2.遺伝子との関係は?
様々な可能性の一つとして挙げられるのは遺伝子です。
しかし、遺伝するのかについては明確に分かっていないのが現状です。現在分かっていることは、遺伝が原因で必ず同じ自閉症の症状が出るわけではないということです。
多くの病気は、ある遺伝子が関係すると、ある決まった病気になります。自閉症に関しては、どんな遺伝子が自閉症を発症させるのか今のところ明確になっていません。
そしてもちろん子供も、生まれつき言葉が遅い、歩くのが遅い、大人しい、などのいろんな性格を持っています。
それらの複数の遺伝子が複雑に絡まり、生まれつき起こる脳機能障害が自閉症です。
遺伝子のみでなく、何らかの外的要因で胎児のときに遺伝子や脳に障害が発生することもあります。
- 親自閉症で子どもも自閉症
- 親が自閉症でも子どもは自閉症ではない
- 親が自閉症でなくても子どもが自閉症
- 兄が自閉症だが、弟は自閉症ではない
- 兄弟が同じ自閉症でも、軽度が違う
などさまざまなパターンが報告されています。
自閉症の遺伝について説明している動画があります。
データなどで分かりやすく解説されているので、こちらも合わせてご覧ください。
遺伝以外にどんな原因が挙げられているの?
もし子供が自閉症になった場合、とても戸惑いますし、何が原因なのかはっきりさせたいという気持ちになってしまうと思います。
ネット上の情報も沢山あり、何が真実なのか更に不安になってしまいますよね。
今まで自閉症の要因として挙げられてきたことのある、「予防接種ワクチン」、「グルテンとカゼイン」について実際はどうなのか、お話ししたいと思います。
1.予防接種ワクチン
現在、子育てママが敏感になっている「ワクチン接種」についてですが、このワクチンが自閉症の原因なのではないかと懸念する人もいます。
生後、予防接種ワクチンを行った時期と、自閉症の症状が分かりやすくなる生後12~18カ月というタイミングが偶然一致したことにより、ワクチンを接種した後から様子がおかしいと考えてしまうようです。
また、ワクチンに含まれる水銀が脳に有害であるという懸念もありますが、脳へ影響する量はワクチンに含まれている水銀の量よりはるかに多い量であることが研究上分かっています。
すでにカナダ、アメリカ、イギリス、デンマーク、で百万人の子供を対象とした調査が行われており、予防接種ワクチンと自閉症への相互関係は無いということが明らかになっているようです。
予防接種ワクチンを打たないことにより、別の病気にかかってしまうという事態も起こり得ます。
2.グルテンとカゼイン
パンなどの小麦製品に含まれる「グルテン」と、乳製品に含まれる、主要な蛋白(たんぱく)質の「カゼイン」の接種によって、分解されたたんぱく質が腸壁から抜け出し、脳へ影響を及ぼしているのではないかという説があります。
しかし、これらも今までに様々な研究が行われてきましたが、自閉症に関係する有力な結果は得られていません。
子供が自閉症かもしれない…まず、どうすればいいの?
まずは、相談できる家族や友人に、不安に思っていることを話してみましょう。
どんなことに困っているか、どんな要素を不安に思うのか、自分が今どんな心境なのか、話をすると気持ちが少し落ち着くかもしれません。
発達障害者との向き合い方を紹介した記事があるので、こちらも合わせてご覧ください。
やはり不安…と思う方は、以下に相談できる場所がありますので一人で抱え込まないでくださいね。
1.医療機関へ相談する
乳幼児健康診査や就学時健康診断で、自閉症スペクトラム障害の可能性を指摘される場合があります。
また、子供の言動などで不安になった場合は小児科や児童精神科を受診することもでき、診断を受けたり別の専門外来を紹介してくれる場合もあります。
お子様の日々の生活ぶりや困っていることなどを観察しておきましょう。
発達障害の診断・治療・指導できる全国の専門医を記載しているサイトがあるので、そちらもご覧ください。
2.公共の施設へ相談する
全国に日本小児神経学会、発達障害者支援センター、療育センター、児童相談所などがあります。
地域の自治体が行っていますので、そちらに相談をしてもいいでしょう。
まとめ
以上、自閉症は遺伝するのか?というテーマについてお話をさせて頂きました。
- 双子や血縁の自閉症発症の確率から、可能性の一つとして遺伝が挙げられる
- 何らかの外的要因で発症する場合もある
- 予防接種ワクチン、グルテン、カゼインと自閉症の関係は今のところ発見されていない
- もし子どもが自閉症かもと不安になったら相談できる場所がある
自閉症は、遺伝などについてもまだまだ未解明な部分が沢山ある病気です。自分だけで抱え込まずに、病院や相談所などいつでも頼れる場所があることや、一緒に子育てができる環境があることを知って、少しずつ病気について理解を深めていけたらいいですね。
参考文書:
ベルトラン・ジョルダン著,林昌宏訳,坪子理美解説 (2013) 『自閉症遺伝子-見つからない遺伝子をめぐって』 中央公論新社