今日も皆さんと一緒に発達障害等に関する学びや情報交換の場となることを願って投稿させて頂きます。今日のトピックスは「IQ」についてです。
「うちの子はなぜもみんなと同じことができないのだろう?」「読み書きだけが全然できないのはなぜ?」と思ったことがありませんか?
同年代の子どもたちと比べて「できない」のには発達障害とIQ(知能指数)が関係しているかもしれません。
この記事を読まなければ、「できない」の原因が分からないかもしれませんが、読むことで解決のきっかけになるかもしれませんので、よかったら参考にしてみてくださいね。
目次
発達障害とIQの関係
発達障害とはなんらかの精神発達のおくれをもち、それが生きにくさをもたらしているものです。そのうえで、どんな精神機能(こころのはたらき)の発達が遅れているか、どの程度遅れているかの違いによって
- 知的障害(精神遅滞)
- 自閉症スペクトラム(広汎性発達障害)
- 特異的発達障害(学習障害)
- 注意欠陥多動性障害(ADHD)
にわけられます。
①~④のなかでも、分類がわけられます↓
知的障害 | 認識(理解)の発達の全般が、平均水準よりも一定以上おくれるもの。 →認識のおくれの程度によって、 軽度・中度・重度・最重度に分ける。 |
自閉症スペクトラム (広汎性発達障害) | 関係(社会性)の発達全般が、平均水準よりも一定以上おくれるもの →認識のおくれはみられないアスペルガー症候群 →認識のおくれは軽度の高機能自閉症 →認識のおくれも大きい自閉症 に分ける |
特異的発達障害 (学習障害) | 全般としてのおくれはないが、ある特定の精神機能の発達だけがピンポイントでおくれるもの →発達性言語障害、発達性読字障害、発達性書字障害、発達性計算障害など |
注意欠陥多動性障害 (ADHD) | 全般としてのおくれはないが、「注意集中困難」「多動」「衝動性」の三つの行動特徴が年齢不相応に目立つもの |
精神発達の基本構想は「認識(理解)の発達」と「関係(社会性)の発達」の2つからなっています。発達の大きな遅れはこの2つの度合いが関係してきます。この2つは「全般的な発達のおくれ」とひとくくりにすることができます。
参照文献:子どものための精神医学
次にIQが関係してくる発達障害について紹介させていただきます
知的障害(精神遅滞)
知的障害は、認識(理解)の発達全般のおくれが前面にでてきます。
知的障害の定義は
- 知的能力(認識の力)が有意に低い(IQ70未満)
- そのために生活上の困難が生じている
- 発達期(18歳以前)に始まっている
です。(アメリカ精神遅滞学会による)
知的な能力は程度により、
- 軽度精神遅滞:IQ50~70
- 中等度精神遅滞:IQ35~49
- 重度精神遅滞:IQ20~34
- 最重度精神遅滞:IQ20以下
にわけられます。
IQ70~50 | 軽度精神遅滞 | 成人期までに小学校高学年程度の知能を身につけることができます。言葉や抽象的な内容の理解に遅れがみられることがあります。身の回りのことはほとんど一人で行うことができます。知的障害の85%を占めます。 |
IQ49~35 | 中等度精神遅滞 | 6~9歳程度の知能を身につけることができます。言葉の遅れ、身辺の自立や運動機能の発達の遅れなどを伴うため、通常3歳時検診までに発見されます。ほとんどが言語を習得し、充分コミュニケーションをとることができるようになります。身の回りのことに支援が必要になってきます。知的障害の10%程度を占めます。 |
IQ34~20 | 重度精神遅滞 | 3~6歳程度の知能に発達します。簡単な会話をすることができます。訓練により、自分の身の回りのことがなんとかできる場合もありますが、支援が必要です。かんしゃく、自己感覚刺激行為(激しい自傷行為を含む)、無目的な常同行為がみられることがあります。知的障害の4%程度を占めます。 |
IQ20以下 | 最重度精神遅滞 | 3歳未満の知能に相当します。言葉によるコミュニケーションは困難ですが、喜怒哀楽の表現はできる場合もあります。運動機能の遅れも認められ、歩行も困難である場合が多いです。てんかん、脳器質性障害の存在が知的障害が重くなるにつれ多くなっていきます。身の回りのことができないため、常に援助が必要となってきます。知的障害のおよそ1~2%程度を占めます。 |
参考文献:こころの医学事典
通常のIQは90~110程度とされており、そのIQが70より低い知的障害が占める比率は、全人口の2~3%と考えられています。知能は「経験によって獲得される、新しい情報を学習し、新しい事態に適応する能力」と考えられています。
このため、知的障害の程度の応じて社会生活上の困難が伴ってきます。ですので、その子に応じた対応が必要となってきます。
知的障害と発達障害の違いについてよくわからないという方のためにそれについて書かれた記事がありますので、よかったら参考にしてみてくださいね。↓
自閉症スペクトラム
認識の発達全般のおくれが前面にでる知的障害に対して、関係(社会性)の発達全般のおくれが前面にでるのが自閉症スペクトラムです。
そのなかでも、
- 認識のおくれを伴わないアスペルガー症候群(知的障害を伴わない)
- 認識のおくれは軽度の高機能自閉症(知的障害のグレーゾーン~知的障害を伴わない)
- 認識のおくれも大きい自閉症(知的障害を伴う)
とわけられます。
自閉症
自閉症には以下に示す3つの特徴があります。また、こうした特徴のどれかは3歳以前に出現しています。
言葉の発達のおくれとかたより
言葉の発達が遅れたり、言葉がなかったりします。また、言葉がでてきてもオウム返し(意味は理解しておらず、こちらが言ったことをそのまま繰り返す)をしたり、会話が続かない、一方的な会話、奇妙な言葉の使い方をすることもあります。
対人関係の困難さ
人への反応が乏しく、人と視線が合わない、表情や身振りが乏しいことがあります。情緒的な交流(腹が立つことがあっても、心根はいいから一緒にいるというようなこと)ができにくく、人との共感がしにくいです。
相手の気持ちがあまり理解できません。友達と遊ぶことができない人もいます。悪気なく言ってはいけないことを言ってしまったり、やってしまうことがあります。ですので、対人関係が困難であることが多くあります。
行動・興味・活動性が限定される
活動や興味の範囲が限定されています。特定のことにこだわります。広告をちぎり続けるなどの同じような活動を飽きることなく繰り返します。
自分の行動パターンやものにこだわり、周りに人や習慣、行動予定のわずかな変化にも驚いて、苦痛に感じてしまうことがあります。
その他
感覚過敏や、てんかんがあったりします。
高機能自閉症
自閉症と違うところは知的な発達に遅れがないことです。(IQ71以上)
アスペルガー症候群
自閉症の特徴をもちますが、自閉症と違うところは言葉の発達のおくれは伴いません(対人関係の困難さ、行動・興味・活動性が限定される)また、知的な発達に遅れがありません。
新しく改訂されたDSM-5[2013]では、それまでの「広汎性発達障害」の呼称は捨てられ、「自閉症スペクトラム障害」が診断名となり、さらに自閉性障害、アスペルガー障害などの下位分類も消されました。
参考文献:子どものための精神医学
IQと自閉症スペクトラム障害
自閉症スペクトラム障害の人はIQ70以下~130以上と幅広いです。IQが70以下であれば知的障害にも該当してきます。(知的障害でなおかつ自閉症スペクトラム障害)
IQが70台であれば、知的障害には該当しないかもしれませんが、小学校の通常学級の教科の学習課程をこなすことが難しいでしょう。ですので、それに合わせた支援が必要になってきます。
逆にIQが130以上の人でも「自閉症スペクトラム障害」が軽いというわけではなく、社会的(対人)問題が少ないというわけではありません。ですので、どのようなIQであってもその人にあった配慮や支援が必要になります。
特異的発達障害と注意欠陥多動性障害
知的障害や自閉症スペクトラム障害が全般的なおくれになりますが、それに対して特異的発達障害と注意欠陥多動性障害はある発達領域だけが取り残されたようなおくれをみせます。
特異的発達障害(学習障害)
特異的発達障害はある特定の発達だけが特異的/限局的におくれる学習障害です。おくれるのは言葉・読み書き・計算など学習を通して習熟される能力のため、「学習障害」とも呼ばれています。
極端な手先の不器用さや運動神経の鈍さも「発達生協調運動障害」と呼ばれて学習障害に入ります。はさみを使ったり自転車に乗ることも学習を通して身につける能力だからです。
この学習障害は、知的障害と間違いやすいです。ですが、学習障害はIQは一般的には問題ありません。特定の読み書きなどが苦手で成績が悪いなどということが特徴です。
注意欠陥多動性障害
注意欠陥多動性障害は、注意集中や衝動のコントロールの発達だけおくれます。こちらも落ち着きがなかったり集中力がないため、成績が悪いことがありますが、IQは一般的には問題ありません。
それぞれの発達障害とIQの関係はわかりましたか?次に発達障害の診断の参考にもされているIQ検査について紹介させていただきます。
IQについて
IQとは
IQとは、知能指数のことをさします。知能指数は、理解や判断するスピード、記憶力、計算能力など(知能)を数値化したものです。知能指数は偏差値と違って高い=勉強ができるとは限りません。
勉強はできないけど、頭の回転が早いというような人はIQが高い可能性が高いです。(ただし、東大生の平均IQが120といわれているように、IQが高いから勉強もできるということももちろんあります)
IQの分布
IQの平均値は100です。IQの分布はこちらを参考にしてみてくださいね↓
IQ | 一般的な知能評価の分類 | 人口に占める割合 |
130以上 | 非常に高い | 2.3% |
129~120 | 高い | 6.8% |
119~110 | 平均の上 | 16.1% |
109~90 | 平均 | 49.5% |
89~80 | 平均の下 | 16.1% |
79~70 | 低い(境界線) | 6.8% |
69~50 | 軽度知的障害 | 2.3%(ここから下) |
49~35 | 中度知的障害 | |
34~20 | 重度知的障害 | |
20未満 | 最重度知的障害 |
IQ検査の種類
子どもたちが受けることができるIQ検査は代表的なものとして「田中ビネー式知能検査」と「ウェクスラー小児知能検査(WISC-Ⅳ)」があります。
田中ビネー式知能検査
フランスのビネーが開発し発展させてきた知能検査を日本人向けにつくりかえた検査です。「年齢尺度」が採用されていて、他の同年代の子どもたちと比べてどのくらい発達しているか、遅れているかがわかります。
また、適応年齢も2歳から成人と幅広いです。
ウェクスラー小児知能検査(WISC-Ⅳ)
全15の下位検査(基本検査10、補助検査5)で構成されていて、10の基本検査を実施することで、5つの合計得点(全検査IQ、4つの指標得点)が算出されます。それらの合計得点から、子どもの知能発達の様相をより多面的に把握できます。
言語理解指標(VCI) | 知覚推理指標(PRI) | ワーキングメモリー指標(WMI) | 処理速度(PSI) |
・類似 ・単語 ・理解 (・知識 ・語の推理) | ・積木模様絵の概念 ・行列推理 (・絵の完成) | ・数唱 ・語音整列 (・算数) | ・符号 ・記号探し (・絵の抹消) |
また、5歳~16歳11ヶ月の子どもを対象とした世界でも広く利用されています。
知能検査(WISC-Ⅳ)に関して解説している動画がありましたので、よかったら参考にしてみてくださいね↓
ADHDの診断を受けたある方の全体のIQ(ウェクスラー式で算出)が113でした。これは分布でいったら中の上となりますが、ワーキングメモリーだけが70台とかなり低かったそうです。(ワーキングメモリーが他の項目の足を引っ張っています)
このように、発達障害の方はIQ検査項目で凸凹があるのが特徴になることもあります。
IQ検査にかかる時間
よくテレビのクイズ番組で「この問題が解ければIQ120」なんてやっているのをみたことがあるかもしれませんが、実際は2時間くらいといわれています。
長い時間をかけてじっくりやっているので大変ですが、検査をうけることで自分の得意・不得意が客観的にわかるため、苦手な部分のサポートの仕方がみえてきたりと今後にいかせそうですね。
IQ検査を受けることができる所
「病院なら受けることができるかな?」と思われ方もいらっしゃると思いますが、どこの病院でもできるわけではありません。ですので、発達障害支援センターに知能検査を行っている機関を問い合わせてみることが確実です。
IQ検査に保険は使えるのか
「知能検査を受けるにはお金がかかりそう…」と思いますよね。病院で検査を受ける場合に、保険適用となっていないと1~2万円はかかってきてしまいます。ですが、診療上必要と認められた場合は保険適用となるため、自己負担額に応じて受けることができます。
いくらくらいかかるかに関しては、実施機関によって差がありますので、その機関に確認することが確実です。
IQ検査を受けることによるメリット・デメリット
メリット
- 得意・不得意がわかる
- その子にあった援助、療育方法や進路を考えることができる(見通しがたつ)
- 公的・福祉サービスを受けるのに検査結果が必要になってくる場合がある→例えば、IQ70~75以下ということが療育手帳の交付条件になっている場合があります。
デメリット
- 発達障害の方はその時々でIQの検査結果が変わりやすい(ムラがある)
- 検査に時間がかかる
- 費用が高い場合もある(保険適用されない場合)
- 結果次第では傷つくことになる
IQ検査もあくまで指標ですのでこれが全てではありません。ですが、数値的に自分が分かると周りの支援をしてくれる人も支援がしやすくなります。デメリット以上にメリットが大きそうですね。
まとめ
発達障害の中にはIQが関係してくるものがあります。また、診療や支援にも関わってくるIQは検査によってわかるので、まずは専門機関に相談してみることをオススメします。