見ることのメカニズムにおいて第1ステップで「入力」された資格情報は脳へ伝わり第2ステップである「情報処理」に引き継がれます。
この情報処理の段階で視空間認知の力が発揮されることとなります。

2.「情報処理」=「視空間認知」

視空間認知は目から入った情報を脳で把握する力のことです。
空間の一部でなく、全体像を把握する働きをしています。

点や線をそのままの情報としてでなく一つの形として具体的にイメージできるのは空間認知能力の働きあってのことです。
空間認知の働きは次の4つに分けて考えられます。

見たい対象と背景を区別するはたらき

目に入る全ての情報から必要な情報だけを選んでものを見ることができるのは、対象物と背景を見分ける力が働いているからです。
街中で道路を渡る際に信号を見たり目の前に飛び込んでくる自転車や歩行者を見て避けたりすることができるのは必要な情報を選びとっているためです。
それが可能なのは、「対象と背景」を区別しているからに他なりません。

形や色を弁別するはたらき

目から取り込んだ情報を分析し、形や色、輪郭などを認識する働きです。
例えば、パズルをする際さまざまな形で違った絵の描かれたピースを識別し、形や絵柄ごとに正しい位置に当てはめることができるのはこの働きによるものです。
絵を描くときや塗り絵をするとき、種類ごとに同じカテゴリのものを仕分けするときや図形問題を解くときにもこの働きが役立ちます。

色や形・位置が異なっても同じもの「同じ」として認識する働き

背景や位置、大きさ、多少の乱れに左右されず同じものを同じものとして認識する働きです。
世の中には筆記体をはじめとして様々な書体がありますが、「A」という文字を全て同じものとして認識できるのはこの働きがあるからです。
また、文字や図形以外に人の髪型や服装、化粧が変わっても同一人物として認識できるのもこの働きあってのことです。

空間的な位置を把握するはたらき

目で見たものを立体的に把握し空間の中で位置関係や向きを認識する力のことです。
対象物と自分の距離感、奥行きの感覚を把握するのに役立ちます。
上下・左右の判別をつける際や、ものを掴んだりするのに必要な能力です。

3.「出力」=「目と体のチームワーク」

第1ステップにおいて目で見た情報を第2ステップにおいて脳で認知し、そこで得た情報をもとに体を動かします。
「入力」「情報処理」の次のステップにあたるのがこの「出力」です。

「目と体のチームワーク」とは視覚の働きと体の動きを連動させることを指します。
例えば、道路標識を見て一時停止する時の動きを思い出してみましょう。

まず道路標識を目で捉え、脳が体に「止まれ」と指示を出します。
その次に脳から送られた命令に従って体が反応し止まります。

この例から分かるように、私たちは資格の情報をもとにして体を動かしています。
普段人はこの一連の動きを意識することなく行っていますが、見ることと動くことの能力のつながりは生まれながらにして備わっているものではありません。
心身が発達するにつれて身につけられるものなのです。

これら「眼球運動」「視空間認知」「目と体のチームワーク」の3つを合わせて「見る力」といいます。