今日も皆さんと一緒に発達障害等に関する学びや情報交換の場所なることを願って投稿させて頂きます。
今日のトピックは「発達障害と空間認知」の関係性についてです。
最近よく耳にするようになった、「空間認知能力」。
これは読んで字のごとく、「空間」を「認知」する力のことです。空間認知能力によって、人は目の前にないものも脳内でイメージができます。
そして、空間認知能力の中でも「視空間認知能力」は、発達障害と関係があります。
その関係を紐解いていきましょう。
目次
空間認知能力ってなに?
そうは言っても空間認知能力ってよく分からない!という方も多いと思います。
例えば、街を歩いていると、街の風景が目の前に広がっています。
このまっすぐ見ている状態から離れ、それぞれの物体がある場所、向き、大きさ、物体どうしの位置関係などをすばやく正確に認知する力を「空間認知能力」というのです。
車でいえば、バックで駐車する際に、左右の障害物との距離はどれぐらいか、自分の車の幅はどれぐらいか、どのくらいバックしたら後ろの車とぶつかるか、などを把握する力です。
目に見えている部分と、見えない部分をうまくつなぎ合わせて理解する能力と言えますね。
どれぐらい下がればいいのか、いまいちつかめなくて。
車の運転は常に移動しているので、空間認知能力が重要な役割を果たしているのですね。
”視”空間認知能力ってなに?
空間認知能力の中でも、発達障害と関係性があるのが、視空間認知能力です。
視空間認知能力とは、目から入った情報のうち、物の位置や向きを認識する能力のことを言います。
たとえば、文字も目から入った情報だけでは点や、線のままですが、この視空間認知能力があるため、文字と認識されるようになるのです。
見たものの全体像を把握する機能とも言い換えることができるでしょう。
視力の良しあしとは異なるもので、地図を読んだり塗り絵をしたりするときに使われます。
「ただ単にモノを見る能力」というのは生まれたときからほぼ出来上がっているのですが、この視空間認知能力については発達とともに身についていくものです。
視空間認知能力のはたらき
視空間認知能力にはどんな働きがあるのでしょうか?
みてみましょう。
視空間認知のはたらきとは?
見たい対象とそれ以外を区別するはたらきのことです。
私たちは目に見えるすべての情報から必要な情報だけを切り取って見ています。
これは対象物と背景を見分ける、視空間認知の機能の一つです。
たとえば、街の中で信号や標識だけを見つけることができるのは必要な情報を切り取って対象物と背景を見分けているからです。
形や色を明らかにするはたらき
目から入った情報を分析し、形や色、輪郭などを認識します。
たとえば、塗り絵をするときに色が付いている箇所と付いていない箇所を認識するときに視空間認知の機能が使われているのです。
色・形の不揃いに関わりなく同じものと認識するはたらき
これは背景や大きさ、色に関わりなく「同じもの」だと認識する機能のことを言います。
たとえば、Aという文字が大きく書かれていても、小さく書かれていてもどちらも同じAと認識することができるのは視空間認知の機能が使われているからです。
空間的な位置を把握するはたらき
見たものを立体的に把握して空間の中で位置関係を把握する能力があります。
ものと自分の距離感、上下左右の判別やものをつかんだりするときに必要な機能なのです。
視空間認知が低いとどうなるの?
視空間把握能力が低いと、以下のような特徴が現れます。
- 漢字やひらがなの書き間違えが多い
- 漢字やひらがなを思い出すのに時間がかかる
- うまく書けない図形がある
- 右と左をよく間違える
これらの項目に多くあてはまる場合は、視空間認知能力が他の子供よりも低い可能性があります。
視力の問題ではないので、「見えにくさ」の問題は子どもが自ら気付くことはほとんどなく、なかなか周りにも気づかれることが多いのです。
発達障害と視空間認知能力の関係性とは
視空間認知能力と発達障害には関係性があります。
この「見えにくさ」の裏側には発達障害がある可能性があります。
発達障害とはなんらかの要因で脳の機能の一部に機能不全が見られ、発達が遅れたり偏ったりすることです。
発達障害の中でも、 LD(学習障害)やADHD(注意欠陥性多動性障害) の子どもに視空間認知能力の弱さがみられることがあり、文字が上手く書けなかったり覚えることができなかったりなど学習面で困りごとがみえてくることがあります。
特に、LD(学習障害)を持っているお子さんは正常知能発達でも視力の問題ではない視空間認知能力の問題の出現率が高く、それが認知能力や学習達成度の低下の原因になっていることが最近の研究で分かってきています。
視空間認知能力の鍛え方
「見えにくさ」を克服するためによく利用されている、ビジョントレーニングというものがあります。
専門家によって行われるビジョントレーニングは2種類あり、視覚訓練士といわれる専門家が行う場合にはスポーツ選手や大人に行われることが多いです。
また、発達臨床心理士や発達支援員など発達に関する専門家によって行われる場合は発達障害のあるお子さんに施されることもあります。
ビジョントレーニングを行う前にはまず、子どもの視力に問題がないかを確認しましょう。
視力に問題があるのにビジョントレーニングを行っていても適切な効果が出ない場合があります。
気になる場合は、まず眼科で調べてもらいましょう。
眼球運動のトレーニング
眼球運動トレーニングでは、目を上下左右に動かします。
繰り返し行うことで、正確に素早く情報を目でとらえる力が身に着けます。
たとえば、あみだくじのようにスタートを設定し、交差させたりぐるぐるとうずまいた線が描かれている紙を用意して、スタートからゴールまでの線を目で追っていくことで目の追従眼球運動を鍛えることができます。
下記の動画でそのほかの眼球運動について詳しく説明されていますのでご覧ください。
視空間認知のトレーニング
視空間認知能力を鍛えるには、実際にモノを手で触って動かすことが大切になります。
たとえば、大人が作った見本と同じように積み木を重ねたり、見本と同じように塗り絵に色を塗る練習をすることで視空間認知能力を鍛えることができます。
そのほかには、服をコーディネートして写真を撮り、実際に服を何着か持ってきてその写真と同じように服を選んでもらうゲームなども効果的です。
作業療法
視覚機能の能力をトレーニングする手段として、作業療法という方法があります。
「見る力」を鍛えるビジョントレーニングに対して、作業療法とは身辺の自立や学習・社会参加のために必要な能力全般を向上させるトレーニングです。
たとえば、簡単な線画や文字の模写、ペグボードや積木の写しかえやそれを用いた図形の作成、あわせ絵やパズルボックスなどを行います。
視覚機能のほかには、手先の器用さを養うトレーニングをしたり、体を大きく動かしたりなど、基本的な運動能力から集団の中で生活する力まで幅広い能力を養います。
詳しくは下記の記事を参考にしてみてください。
まとめ
視空間認知能力とは、目から入った情報のうち、物の位置や向きを認識する能力のことを言います。
視空間認知能力が弱いと、字が上手く書けなかったり、字を覚えられなかったりなど生活に弊害が出てきてしまうのです。
発達障害の関係性として、LD(学習障害)がある子どもにはこの視空間認知能力の問題の発症率が高く、学習面で困りごとがでてしまうケースがあります。
視空間認知能力を鍛えるものとして、ビジョントレーニングという、眼球運動のトレーニングや、視空間認知のトレーニングなどがあるのです。
今日もここまで読んでくださって、ありがとうございました。